株式会社ファイブスターズ アカデミー

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スタッフ

メディアの闇(2)

二階から田中のダミ声が飛んできます。「朝日の言いなりになってたまるかあー」 永井も負けじと大声で言い返しました。「若い大臣が図に乗ったら承知しないぞ」実は、念のため一芝居打とうと、両者は事前に打ち合わせをしていたのでした。 そんな事情を知る由もない記者たちが、大慌てで飛んできます。要するに、その場にいた全員が騙されたわけです。靴底を磨り減らして現場で走り回っている政治記者は、自分の会社の上層部が政治家とズブズブの関係にあることを、一体どこまで知っているのでしょう。知っていたら、やりきれない商売ではあります。 直後にテレビ局の割り当てが発表されましたが、免許交付を渋る郵政官僚に田中が発破をかけ…

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メディアの闇(1)

フジサンケイグループと鹿内家との凄まじい権力闘争を描いた『メディアの支配者』で、講談社ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞したフリー・ジャーナリストの中川一徳が、今度は『二重らせん欲望と喧噪のメディア』の中で権力者とメディアの癒着を暴いています。 戦前は陸軍が出版社に対して言論統制を行っていたため、自由な発言ができなかったと多くの出版人が言い訳していますが、これは真っ赤なウソです。 責任逃れのためにデッチ上げた、明らかなデマです。言論統制をしていた極悪人として登場するのは、陸軍情報館の鈴木庫三少佐。 ところが、本当のところ鈴木と出版社は蜜月の関係にありました。その証拠に、日中戦…

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醤油とトリチウム(4)

多田は、今回のALPS処理水放出を非難している国に対して、強い憤りを感じると言います。というのは、1950年代から60年代初頭にかけて、国連の安全保障理事会の常任理事国が、大気圏内での核実験を繰り返し実施していたからです。 この実験により、大気中にはとてつもない量のトリチウムが放出され、地球上のトリチウムの総量は飛躍的に増加しました。計算したら、なんと24✕(10の19乗)ベクレル。24の後に0が19個もつきます。もう、何の位だかわかりません。 福島原発が1年間に放出するトリチウム量は22兆ベクレルですから、その1千万年分に相当します。加えて、核実験ではトリチウムよりもずっと危険な放射性同位…

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醤油とトリチウム(3)

ALPS処理水の放出に関して、驚天動地とも言うべき論説がありました。 「科学を隠れ蓑に使うな」という記事が掲載されたというのです。なんと、科学は真実を覆い隠す「紛い物」にされてしまったのです。 おそらく、オカルト雑誌の類いだろうと思っていたら、大手新聞社の、しかも社説だというではありませんか!新聞は何を書いても許されるのでしょうか。 その後、別の大手新聞社のWEBサイトには、「エビデンスがないと駄目ですか?」という記事が掲載されました。ダメに決まっているではありませんか! エビデンスのない論説は、「社会科学」ではなく「文学」です。およそ新聞記者が書く記事ではありません。そもそも、マスメディア…

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醤油とトリチウム(2)

「α崩壊」を説明するために、ある殺人事件を紹介します。 2006年イギリスで、KGBの後継組織であるFSB(ロシア連邦保安庁)の職員だったリトヴィネンコという男が、「ポロニウム」という放射性物質によって暗殺されました。その後の調査で、イギリスはロシアの元KGB職員を犯人と断定し、身柄の引き渡しを求めました。しかし、ロシア側が拒否し続けて現在に至っています。 リトヴィネンコは、FSBの一部の幹部が組織を政治的脅迫や殺し屋などの犯罪に利用していると、長官に直訴した人物です。ところが、長官に無視されたため記者会見を開いて暴露してしまいました。 そのため当局に一時拘束されてしまいますが、後にイギリス…

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醤油とトリチウム(1)

2023年9月、政府は福島第一原発のALPS処理水の放出を開始しました。中国や日本の野党の一部が、処理水のことを「汚染水」と呼んで非難しましたが、実際のところ処理水に含まれる「トリチウム」とはどのような物質なのでしょう?私は典型的な“ド文系”人間ですが、それでも取り敢えず勉強だけはしてみました。 「放射線」と聞くとどうしても怖い印象を持ってしまいますが、そもそも放射線とは何なのでしょう?勉強はそこから始まりました。参考にしたのは、物理学者で高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所の准教授、多田将が書いた『放射線について考えよう』という本。 まずは、「原子」についてのお勉強から。原子の中…

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不遜な態度のミュージシャン

かつて、これほどまでに不遜な態度のミュージシャンがいたでしょうか。北国の街にしては暑過ぎる真夏の昼下がり。ふらりと入った馴染みのジャズ喫茶で、壁いっぱいに映し出される8ミリフィルムに目が釘付けになりました。マスターが撮影してきたという、モントルー・ジャズフェスティバル。 まず、ニールス・ヘニング・オルステッド・ペデルセンの指運に度肝を抜かれます。生まれて初めて、ギターよりも速くウッドベースを弾く光景を目にしました。ジャズって本当に凄い! 画面が切り替わると、今度はサングラスをかけた一癖も二癖もありそうな黒人が登場します。次の瞬間でした。彼のテナーが火を吹くや否や、会場は水を打ったように静まり…

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チンパンジーには「今」しかない(2)

松沢が紹介したのは、レオという男性チンパンジーの話です。 レオは脊髄の重い病気に罹り、寝たきり状態になっていました。研究者や獣医がボランティアとして24時間のケア体制を敷きます。その甲斐あって半年でかなり回復したそうですが、不思議なことにその間レオは絶望することが全くありませんでした。 口に水を含んでは、ケアしてくれる人に吹きかけるといういたずらをよくしたそうです。なぜ、彼はこんな思い病気に罹っても絶望しなかったのでしょうか。 松沢の分析はこうです。「チンパンジーには『今』しかないから」 つまり、将来のことを全く考えないから絶望しないというのです。でも、チンパンジーに「過去」や「未来」という…

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チンパンジーには「今」しかない(1)

思いこみというのはよくありますが、今回ばかりはとても驚きました。京都大学霊長類研究所の元所長、松沢哲郎の話を聞いていて目から鱗が落ちる思いをしたからです。 ヒトは、生物学上「サル目(霊長目)」に分類されます。 サル目は、さらに10以上の「科」に分かれますが、ヒトは「ヒト科」の動物です。当たり前ですよね。驚くのはこの後。 ヒト科は、さらに「属」に分けられるのですが、その属が四つもあるのです。ヒト属、チンパンジー属、ゴリラ属、オラウータン属。 これらの総称が「類人猿」なので、ヒトに近い動物であろうとは思っていましたが、まさかチンパンジーなどが「ヒト科」に属しているとは。 そう言えば動物行動学の本…

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世界一裏表が激しい国民

コロナ禍が明け、インバウンド客が増加し始めました。日本の魅力は、何と言っても豊かな自然と歴史的建造物などの観光名所。最近では、それに加えて体験型の観光も流行っているそうですが、決定的なのは治安の良さでしょう。 でも、実際のところ、訪日した外国人の目には日本人はどのように映っているのでしょう? 首相官邸の調査によれば、概ね「親切で礼儀正しい」という評価だそうです。よかったですね。 でも、日本人は本当にそんなに「いい人」なのでしょうか。ジャーナリストの窪田順正が、ネットのビジネスサイトに投稿した記事を読んでいて、もしかしたら日本人は世界一裏表の激しい国民かもしれないという感想を抱きました。それは…

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