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村上 徹

学問の存在理由

以前、酒の席のことでしたが、友人と口論になったことがあります。それは『インフレターゲット政策』の正当性について私が話したときでした。彼の意見は「インフレなんて絶対にイヤだ」の一点張りでした。平行線を辿る議論の中で、私は別のことを考えていました。それは、「もし、これが『量子力学』の話だったら、彼はこんなにも意見を言えないだろう」ということです。(もちろん、私もほとんど意見を言えませんが・・・)どういうことかと言うと、量子力学という学問の場合、あまりに専門的なためその学問を学んでいない人はほとんど発言できないはずです。しかし、経済学の場合は全く異なります。たとえその学問を学んでいなくても、今生活し…

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日銀総裁(2)

それでは、日銀総裁としては一体だれが相応しかったのでしょうか?最近の日銀の審議委員の中で、もっとも見識が高かったのはまちがいなく中原伸之氏でしょう。彼の提案は、いつもいつも反対多数で否決されていました。しかし、その3カ月後、6カ月後には、ほとんどすべて可決に変わっていたのです。これは、彼に先見の明があったというより、むしろ他の委員の不明を指摘するべきでしょう。私はいつも、『正しいか正しくないかは歴史が判定をくだす』と言ってきましたが、3カ月や6カ月は歴史とは言いません。ただ単に、他の委員の見識が低すぎただけです。中原氏の著書をみても、時折植田和男氏が賛成票を投じるだけで、あとはほとんど孤立無援…

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日銀総裁(1)

今回の日銀総裁の人事については、ずいぶんと政治的な駆け引きがありました。その中で、私が問題視していることが2点あります。まず、政党があまりに関与しすぎたため、日銀の独立性が大きく揺らいだということです。法律上、日銀は政治から独立した判断ができるよう保障されています。とは言っても、現実問題はいろいろな軋轢があるのは事実です。しかし、今回の人事問題はあまりに露骨でした。もし、今後民主党が政権をとった場合に、日銀が自主的な政策判断が可能なのか、とても心配させられる出来事でした。次に問題なのは、関わった政治家があまりに経済に無知だったということです。国会で、候補者の所信に関して議員が質問していましたが…

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彗星の衝突

今、サブプライムロームという彗星が世界中に脅威を与えています。ドルは大幅に急落しました。まるで、新ブレトンウッズ体制だとか、アメリカ新帝国主義といわれる体制に終わりを告げる鐘の音のようにも思えます。しかし、私は、かつてレスター・C・サローが『知的資本主義』の中で言った言葉を思い出します。いかなる国も永遠に貿易赤字を続けることはできない。いずれドルは急落する。しかし、ドルの急落は、彗星の衝突に酷似している。衝突するのはアメリカだが、経済的打撃は他の国の方が大きい。アメリカは貿易赤字がなくなるだけだが、世界は突如4500億ドルの需要を失う。それはすなわち、900万人の雇用を失うことに他ならない。そ…

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世界はアメリカ中心にまわる

アメリカが、その異常なまでの消費意欲で、世界の景気を引っ張ったことは事実です。しかし、まるでキリギリスのようなあまりに楽天的な生活がいつまでも続くわけがありません。特に、経常収支赤字に加えて、財政赤字という双子の赤字の国です。どこかで綻びがくるはずです。経済学のテキストでは、このような破局が来ると教えていました。大赤字の国の国債はあまり信用できないので、まず誰もアメリカ国債を買わなくなります。それどころか、持っているアメリカ国債を早いうちに売ってしまおうと考えます。するとドルが売られます。つまりドル急落です。ところが、奇妙なことにここ数年ドルが急落することはありませんでした。なぜでしょう?それ…

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消費大国アメリカのおかげ

ここ10年ほど、アメリカの消費は世界のトップでした。以前、貯蓄性向の話をしました。貯蓄性向とは、収入のうちの何割を貯蓄にまわすかということでしたね。アメリカの場合は、ほぽ100%消費にまわしていますので、貯蓄性向はゼロということになります。ところが、実際は100%以上を消費にまわしている人も多いのです。どういうことかというと、借金をしてまで消費しているからです。その借金の担保になっているのが住宅です。つまり、自宅を担保にいれて借金し、そのお金でモノを買いまくっているのです。あまりに楽天的なその姿勢に、唖然としてしまいますね。でも、この異常なまでに旺盛な消費意欲が、世界の景気を引っ張ってくれてい…

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海外で売っている国は先細り

水野和夫氏の「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」(日本経済新聞出版社)の中に大変興味深いデータが載っていました。日本のように経常収支が黒字の国はおしなべて低成長だということです。具体的にはスイス、ドイツ、オランダなどです。一方、アメリカ、スペイン、ニュージーランド、オーストラリア、英国などの経常収支が赤字の国は成長率が高いのです。赤字ということは、他国から製品をどんどん輸入してでも消費したいということです。人々の消費意欲が旺盛なので、たぶん国内で製造された製品もバンバン売れているのでしょう。ということは、企業も新工場を建てたりと、設備投資意欲が旺盛のはずです。このように、消費や設備投…

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国内で売れないから海外で売っている

経常収支黒字とは、簡単に言うと貿易黒字ということです。つまり、商品を海外で売りまくって儲けたということです。これだけ聞くと「いいこと」のように思いますが、実は国内で売れないから海外で売っているという側面もあるのです。もし、国内で商品がバンバン売れていたらどうなるでしょう。まず、人々は消費に遣うお金が多くなるので、貯蓄にはそれほど回せません。一方、企業にとっては、商品がバンバン売れるので新たに工場を建てようとします。つまり、設備投資の資金ニーズが生まれます。こうなると、「貯蓄超過」などという事態は起こりようもないはずです。おわかりいただけましたでしょうか?「貯蓄超過」によるISバランスの崩れとい…

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国の借金が増える原因は・・・・

前回、貯蓄超過という、ISバランスが崩れたケースをお話しました。経済学の公式によれば、「民間貯蓄超過」の額は、「財政赤字」と「経常収支黒字」を足したものになります。どういうことか解説しますね。まず、「財政赤字」からです。国としては、企業が設備投資をしないのであればますます景気は悪くなりますから、設備投資の動きを国が創らざるを得ません。つまり、公共事業などの財政出動に踏み切らざるを得なくなるのです。簡単に言うと、「投資」という資金需要を企業が担うか、それとも国が担うかということです。ただ、国としても公共事業を起す財源がなければ、国債を発行して資金を集めざるを得ません。一方銀行にとっては、貯蓄がダ…

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ISバランス

前回の、「貿易黒字は喜ばしいことか?」 という問いかけを少し検討してみましょう。マクロ経済学のテキストの最初の1ページに書いてあることですが、「ISバランス」について解説しますね。一般に、私たちが銀行に預けた預金には、利息がついて戻ってきます。銀行では、預かったお金を金庫にしまっておくだけでは利息が生まれませんから、それを運用しようとします。その運用とは、今までは企業に貸し付けることが中心でした。企業は、借りたお金に利子をつけて返済してくれるので、それで預金者への利息の支払いができるのです。ところが、バブル崩壊後ちょっと困ったことが起こりました。企業の借金があまりに膨らんでしまったため、なんと…

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