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5☆s 講師ブログ

二番じゃダメなワケ(2)

「工業化」と「情報化」では、なぜ異なる結果になるかというと両者の性質が異なるからです。

性質のどこが異なるかというと、コピーするための費用です。
工業革命の時代は、例えば自動車を大量生産するにはそれなりに費用がかかりました。

ところが、情報革命の場合はデジタル化さえできれば、コストをかけずにコピーすることができます。
しかも、一瞬で。

これを経済学的に言うと、「限界費用がゼロである」と言います。
これが第四次産業革命になると、もっと厄介なことになります。
第三次では、情報を加工する主体はあくまで人間でした。

例えば、メールの文章はあくまで人間が書いていたし、音楽もまずは人間が作曲し、その上でコンピューターを使って配信していました。
でも、第四次になると、文章を書くのも音楽を作るのも半ばコンピューター任せになります。

その上、それを加工する仕事もほとんどAIが担うでしょう。
簡単に言うと「頭脳労働のAI化」です。
そうなると、デジタル財を生み出す仕事ばかりが儲かり、一部の成功者にだけ富が集まるようになります。

生成AIは、スキルの低い人の底上げをするので格差は縮小の方向に向かうと言う人もいますが、井上はこれに対しても異論を唱えます。
彼は、資本主義におけるゲームの形態が、それまでの「スキルの競い合い」から「ディレクション力の競い合い」にシフトすると見ているからです。

「ディレクション力」とは、アイデアを形にする力のこと。
つまり、アイデアを形にすることができた者が、富を独占するだろうというのです。
しかもさらに深刻なことは、失業者を吸収するだけの新しい産業の出現が期待できないことです。

さて、この肝心要の「ディレクション力」ですが、日本はどうなのでしょう?
実は、かなり出遅れています。

日本初のAI・人工知能専門メディアである「AINOW」が公開した、「2020年のAI研究ランキングトップ100機関の国籍シェア」によると、各国のシェアは以下の通りです。

アメリカ50%、次いで中国13%、カナダ6%、イギリス5%、日本は理化学研究所と東京大学の二つの機関しかないのでたったの2%。
研究機関の数では大きく負けています。

でも、そのレヴェルはどうでしょう?
日本の研究機関が発表した、言語生成AIのパラメータ数は100億程度です。
パラメータ数というのは、確率計算を行うための係数の集合体のことで人間の脳のシナプス数のようなもの。
GPT-3の場合は1750億、これがGPT-3.5では3550億に増え、GPT-4では約1兆個のパラメータが利用されています。
ちなみに、アメリカの司法試験の問題を解かせてみたところ、GPT-3.5では下位10%程度の点数だったものが、GPT-4では上位10%に入り余裕で合格することがわかりました。

なぜ、日本はこれほどまでに遅れをとってしまったのでしょう?
ウィンドウズ95が発売された1995年、日本はバブル崩壊の真っ只中にありました。
その上、日銀が「バブル退治」とばかりに極端な金融引き締めに舵を切ったため、世の中は緊縮ムード一色になります。

そんな時に、人工知能に投資しようなどというアニマル・スピリッツを持った企業が出てくるはずありません。
もし、日銀が誤った金融政策を取っていなければ、日本がAI研究でビリになることはなかったでしょう。
まさに、中央銀行は一国の産業の将来の「生殺与奪権」を握っているのです。

一方で、「二番でもいい」という考えを持つ人もいます。
AI研究でトップに立たなくても、それをうまく利用できれば問題ないという考えです。
たとえChatGPTの開発に遅れを取ったとしても、それを利用してアメリカ以上に生産性を上げればいいではないか、ということです。

これは経済学の知識がゼロの人の考え方です。
なぜこれが間違いなのかについて、日本の「経常収支」から解き明かしていきましょう。

マスメディアには日本のことを未だに「貿易立国」だとか、「輸出大国」だと思っている記者が大勢います。
そのため、日本の貿易赤字が発表される度に新聞やテレビのニュースは大騒ぎになります。

貿易赤字というのは輸出より輸入が上回っている状態を言いますが、それは必ずしも日本の経済にとってマイナスなことではありません。
というのは、輸出が少ないのは世界経済が良くないことが原因であり、輸入が多いのはそれだけ日本の需要が旺盛である、つまり景気がいいということだからです。

世界的に見れば、長年貿易赤字なのに全く問題のない先進国はたくさんあります。
貿易赤字を「悪」と考える人は、終戦直後の発展途上国・日本が世界に追いつこうと輸出産業に力を入れ、「貿易立国」・「輸出大国」への道を駆け上がった頃の栄光を忘れられない人たちです。

日本はすでに「貿易立国」でも「輸出大国」でもありません。
2022年の「貿易収支」を見てみましょう。
モノの貿易に関する収支は15兆円の赤字、サービスの貿易に関する収支も5.2兆円の赤字です。
合計するとなんと20兆円の大赤字。

でも、「経常収支」の中には、「貿易収支」の他に「貿易外収支」という項目があります。
厳密に言うと「移転収支」(外国への無償援助)という項目もありますが、かなり少額なのでここでは無視します。

「貿易外収支」とは、所謂「資本取引」による収支のことで、外国への投資から得られる利子や配当などを指します。
こちらは35.3兆円の黒字。

つまり、日本は「貿易立国」ではなく、完全なる「投資立国」なのです。
なぜ、こんな状況になったのでしょう?

 

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