株式会社ファイブスターズ アカデミー

まずはお気軽に
お問い合わせください。

03-6812-9618

5☆s 講師ブログ

シロクマのことだけは(2)

準備万端な態勢で臨んだのに、当日の異様な雰囲気に飲まれてしまい、緊張して「あがる」ことがあります。
この時、多くの人が間違った対処法をとっています。

それは、「大丈夫!大丈夫!」とか、「落ち着け!落ち着け!」と心に念じることです。
いくら念じたところで、それでパニックが治まった試しはありません。
この対処法は「回避的コントロール」と言って、有効なのはあくまで予防的段階までです。
つまり、「なんだかパニクりそうだな」と感じた時点なら有効ということです。

でも、一度パニックが始まってしまうと、もうダメです。
人は、シロクマを忘れようとするとすればするほど、シロクマを思い出してしまうのでしたよね。
だから、落ち着こうと自分に言い聞かせればするほど、緊張している自分の姿が浮かび上がってきてしまうのです。

では、どうしたらいいのでしょう。
自身も長年パニック発作に悩まされてきた植木は、この対処法についても教えてくれています。
それは「諦めてその苦しみに身を委ねる」ことだそうです。
なんだか無責任なようにも聞こえますが、具体的には自分の様子を「ひとり実況中継する」ことだと言います。

例えば、手が冷たくなってきたと思ったら、「今、手が冷たくなってきました」と小さく呟いてみるのです。
状況を改善しようとするのではなく、状況を客観的に見つめて、まずはそのまま受け入れてみるのです。

この話を聞いた時、私は森田正馬の「森田療法」のことを思い出しました。
森田は「あるがまま」が大事だと言います。
「こんな自分ではダメだ」、「こうならなくちゃいけない」と思うから人は悩み苦しむのです。

そうではなく、「あるがまま」でいいのです。
悩みや不安を解消しようとするのではなく、悩みや不安に囚われている自分を、ありのままにまずは認めて受け入れて、その上で今やるべきことをやりなさいと教えます。
私たちは緊張してあがってしまうと、「これはいつもの私ではない」、「早く本来の自分に戻らなくちゃ」と思ってしまいます。

でも森田の考えでは、平常心の「私」も、あがってパニクっている「私」も、同じ「私」なのです。
あがっている「私」を否定することは、自分自身を否定することに他なりません。
だから、まずはあがっている「私」を、あるがままに受け入れてみることです。
そのためには、自分の様子を冷静に観察しなさいと森田も言います。

実は、私もこの方法で平常心を取り戻した経験があります。
サラリーマン時代に、役員が列席するレセプションの司会を勤めたことがありますが、こんな私でもお歴々の前で失敗しちゃいけないというプレッシャーから、柄にもなくあがってしまいました。
すぐに森田療法のことを思い出し、自分の体の様子を客観的に観察することにしました。

最初に気づいたのは、心臓の鼓動が速くなっていることでした。
「ああ、オレはあがると脈が速くなるのだな」
そう心の中で呟きます。

次に、膝が少しガクガクしているのがわかりました。
「へー、オレって緊張すると膝が震えるんだ」と思ったその瞬間でした。
不思議なことに、膝の震えがピタリと収まったのです。
気がつくと、完全に平常心に戻っている私がそこにいました。

あがってパニクっている「私」も「私」です。
否定してはいけません。
「社会」という複雑な人間関係の中で生きている私たちは、どうしても「人から評価されたい」とか、「人からよく思われたい」という心理に囚われがちです。

それは仕方のないこと。
否定しても始まりません。
心の中にそんなシロクマがいることは素直に認めましょう。

問題は、そのシロクマがあまりに大きくなりすぎて、あなたを苦しめているのではないかということです。
あなたの心の中のシロクマを完全に追い出すことはできません。
でも、シロクマのことは一旦横に置いておき、「あるがまま」の自分を受け入れた上で、今なすべきことを淡々とやることはできます。
そうすることで、シロクマ君をちょっとばかりサイズダウンすることはできますよ。

初めての方へ研修を探す講師紹介よくある質問会社案内お知らせお問い合わせサイトのご利用について個人情報保護方針

© FiveStars Academy Co., Ltd. All right reserved.