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5☆s 講師ブログ

タワマンと貧民窟(1)

元国税庁の調査官だった大村大次郎が、消費税について面白い分析をしています。
消費税が導入されたのは1989年ですが、その直後に法人税と所得税が引き下げられています。
また、消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年の直後にも、法人税と所得税が相次いで下げられています。

この時、法人税減税の恩恵を受けたのは大企業であり、所得税減税の恩恵を受けたのは高額所得者、いわゆる富裕層でした。
どのくらい恩恵を受けたのでしょう?
それは、法人税と所得税の税収がどのくらい減ったかを見ればわかります。
では、30年前と現在を比較してみましょう。

法人税収は1989年には19兆円でしたが、2018年には12兆円まで落ち込みます。
差額は▲7兆円。

所得税はどうでしょう。
所得税収は1991年には26.7兆円ありましたが、2018年には19兆円しかありません。
差額は▲7.7兆円。

両方合わせると約▲15兆円ですので、法人税と所得税の税収合計が15兆円減少したことがわかります。

この▲15兆円というのは、あくまで30年前と現在という2つの時点の税収を単純比較した差額ですので、30年間の累計で見たら大企業と富裕層はかなりの金額を手元に残すことができたはずです。

それについては後で触れるとして、一方の消費税を見てみましょう。
2018年の消費税の税収は17.6兆円です。

法人税と所得税の減少は▲15兆円ですので、差し引きのプラスはたったの2.6兆円にすぎません。
つまり、消費税導入によって税収全体が増えた訳ではなく、ただ単に中身が入れ替わったということです。

分かりやすく言うと、15兆円の税金を負担する層が、大企業や富裕層から一般庶民に肩代わりしただけということです。
もっと分かりやすく言うと、大企業と富裕層がボロ儲けした分、一般庶民が負担を押し付けられたということです。

そこまでして消費税を導入しなければならなかった理由とは、一体何だったのでしょう?
実は、その理由はかなり曖昧です。

最初は「直間比率の改善」でした。
直間比率とは、税収に占める直接税と間接税の比率のことです。
日本はヨーロッパに比べると消費税などの間接税の税収割合が低すぎるという主張でした。
しかし、もともと直間比率については、望ましい比率など存在しないことがバレてしまうと、今度は「福祉税」なる概念が登場します。

次が「財政健全化」。
二転三転した結果、現在の財務省のHPには「社会保障財源の確保」というお題目が掲載されています。

社会保障というのは、国民の生活を保障する制度のことです。
富裕層ならば国が保障してくれなくても、自分で保障できるだけのお金を持っているはず。
ですので、社会保障とは富裕層以外の人々の生活、つまり一般庶民の生活を守りましょうということになります。

でもそうだとすると、一般庶民の生活を守るために、一般庶民から税金を搾り取るというのはおかしな話ではありませんか。
本来ならば、大企業や富裕層から財源を集めて、一般庶民の保障に充てるのが筋ではないでしょうか。

現在は「子育て支援」などの対策でかなり改善が図られつつありますが、元日銀副総裁の岩田規久男は、スタート当初のアベノミクスに欠けていたのは低所得者への所得再分配政策だったと、『日銀日記』の中でズバリ指摘しています。
全く的外れな税制を30年も続けた結果、富裕層と一般庶民との格差はどんどん広がってしまいました。

次回は、大企業と富裕層が減税によってどれだけの富を蓄えているかを見てみますが、これがとんでもないことになっているのです。

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