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5☆s 講師ブログ

「元社長」という名刺

もう10年以上前のことですが、定年間近の先輩が老後準備の一環で、地域の写真サークルに入りました。
そして、休日に参加した撮影会で、驚くべき名刺を受け取ったというのです。

メンバーのほとんどは現役をリタイアした人たちですので、当然名刺など持っていません。
しかし、新規にサークルに加入した参加者の中に、ひとりだけ自分の名刺を配りまくっている人がいました。

驚いたのはその肩書きです。
「○○株式会社 元社長」

皆さんどう思いますか?
私は大笑いしてしまいましたが、せっかくの機会なのでいま少し掘り下げてみましょう。

現役サラリーマンにとって、名刺は自分の存在証明のようなものです。
なかでもその肩書きは、“仕事人間”にとっては二つの重要な意味をもっています。

一つ目は、ビジネスにおけるランクづけそのものを示すものだということです。
もしそれが大企業のものなら、社会的ランクさえも証明してくれます。

そして二つ目の意味は、自身のプライドを満たしてくれるアイテムだということです。

しかし悲しいかな、リタイアしたとたんにビジネスランクはゼロクリアされます。
一方、プライドの方はなかなか簡単にはゼロクリアできません。
そこに葛藤が生じます。

この葛藤は、会社での最終到達点がピラミッドの頂点に近い人ほど大きくなります。
頂点まで登り詰めたこの元社長にとっては、地域の趣味サークルの集まりと言えども、
自分が“一般人”扱いされることは耐えられないことだったのでしょう。

しかし、だからといって「元社長」の名刺を配ったのは逆効果でした。
もしかしたら、リスペクトよりも哀れみの方をもたらしてしまったかもしれません。

リタイアした人間にとっては、相手の過去のビジネスランクなどあまり重要ではありません。
重要なのは、今現在の人間としてのランクです。

でも、その人の人間としてのランクを証明する名刺的なツールは存在しません。
ナマの本人そのもので証明するしかないのです。

このとき気をつけなければならないのは、自分では長所だと思っていた要素が、
リタイア後の人たちにとっては全くそうではないケースがあるということです。

例えば「必ずやり遂げる」という性格を表す要素などは、ビジネス上は確かにプラス要素ですが、
リタイア後の場合は周りから煙たがられるだけかもしれません。

「元社長」という要素はどうでしょう。
それ自体がマイナス要素というわけではありません。

まず最初に人望を集めるような言動が先行し、その後から補足情報として滲み出てくる分にはきわめて有効です。
しかし、自己紹介の冒頭を飾る一言として登場した場合は、大きなマイナス要素となる可能性があります。

では、リタイア後の人間にとって好ましい要素とはどのようなものでしょう。
おそらくそれは、人づき合いをする上でプラスに働くものです。
例えば、他人に対して温かいとか、思いやりがあるとかというようなことです。
これを世間では、「人間性」と呼びます。

ところが、そう考えるとちょっと困ったことが起こります。
リタイア後は人間性が問われるというのは納得できますが、
それでは現役の間は一体何が問われていたのでしょうか。

「ビジネス遂行能力」でしょうか。
そうだとしても、問われていたのはそれだけで、「人間性」は一切問われていなかったのでしょうか。

『部下と話すとき』(2015年5月)で、定年退職後の「囲む会」に、かつての部下全員が参加するという事例を紹介しました。

また、『発達障害マネージャー』(2015年10月)の回では、
トヨタの管理職の人事考課表に「人望」という項目があることを書きました。
さらには、『決断しない上司』(2016年5月)で、上司への不満の第一位はダントツで「人間的に尊敬できない」だったことも伝えました。

ということは、現役の間も「人間性」は問われていることになります。

もしかしたら、管理職がこの問いかけに気づいていないということが、
日本中の職場が閉塞感に満ち溢れている原因のひとつなのかもしれません。

人間的に尊敬できない上司が、定年後孤独な余生を送るのはその人個人の問題ですが、
今現在、大勢の部下がその下で働いているというのは職場の問題です。

では、現役の管理職は、一体どうやって人間性を高めればよいのでしょうか。
何か宗教的な修行でもしたらよいのでしょうか。

これが答えになるかどうかはよくわかりませんが、ヒントとなる事例を紹介しましょう。
研修で、過去に上司に助けてもらったり、支えてもらった経験を話し合ってもらうと、
実務的なことよりも精神的なことを上げる人がとても多いのです。

つらい時に一言声をかけてもらったとか、
なかなか成果が出ない時でも取組姿勢を認めてくれたとか、
もうそのことだけでリスペクトが生まれるのです。

どうです?
人間として尊敬できるというのは、そんな大層な話ではなく、
案外ちょっとした心がけで実現できることではないでしょうか。

私が今もっとも知りたいのは、「元社長」の名刺を配っていた人の社長在任中、
その会社の業績は一体どうだったのかということです。

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