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5☆s 講師ブログ

地震発生確率は大ウソ?(2)

2012年12月の合同部会の資料には、文科省からの驚くべき提案が記されていました。
会議の冒頭、文科省の担当者が以下の5案を提示します。

①確率は表示しない
②20%
③20%~60%
④60%を主表示として、20%を*印で表示
⑤20%を主表示として、60%を*印で表示

これを見る限り、明らかに文科省は「20%表示」を中心に議論しようとしていたことがわかります。
ところが、防災部門から猛烈な反対論が出され、会議は迷走し始めます。

防災部門の反対理由は、「低い数字が出ると市民の防災意識に悪影響が出る」というもの。
「ものすごい混乱を引き起こす」とか、「私たちはもう時間予測モデルで洗脳されている。そういう人が世の中にはすごく多いはず」という意見が続出します。
中には「科学的に正しいからと言って、不用意に何でも出してはいけない」というものまでありました。
こうなると、もう科学の出る幕はありません。

でも、反対派も黙ってはいませんでした。
ある委員は、東日本大震災により現在の地震学では予測が不可能であることが明白になったことを指摘し、「わかっていないことはわからない」と言うべきだと提案します。
筋の通った発言ですよね。

ところが、賛成派の委員から集中攻撃を浴びて、最終的に謝罪させられる羽目に。
どうやら地震学者にとって、「わからない」という言葉は禁句のようです。
東日本大震災の予測もできなかったくせに、学者としてのプライドだけは異常に高いのです。
会議の流れは、次第に「時間予測モデルを覆す根拠がないなら今まで通りの方が国民にわかりやすい」という流れに傾いていきます。

決定的だったのは、反対派の中から脱落者が出たことでした。
まさに、科学が「空気」に負けた瞬間です。

翌13年2月に開催された第二回合同部会では、状況はさらに悪化します。
検討材料として提示された4つの案は、かなり後退したものになっていました。

①高い確率と低い確率の併記
②高い確率が主で、低い確率は参考値
③高い確率のみ
④高い確率のみ参考値として記す

ここに至り、当初の「低い確率のみ」という案は完全に抹殺されていました。
これほど譲歩したのに、会議では「③以外なら拒否権を行使する」という強硬意見まで出る始末。
「拒否権」という言葉が使われること自体、もはや科学の範疇を逸脱しています。

でも、決定的だったのはある委員のこの一言でした。
「われわれは防災行政をあずかっている」

つまり、行政上の理由から③の「高い確率のみ」でなければならないということです。
これは明らかに科学や地震学の議論ではありません。
防災行政の議論です。

こんな会議なら地震学者の出席は必要ないはず。
学者が、行政と一緒になって「オオカミ少年」にならなければならない理由はどこにもありません。
でも、実はこの議論には、学者にとっても“おいしい”部分が含まれていました。

行政側はこう主張します。
「何かを動かすというときにはまずお金を取らないと動かないんです。これを今、必死でやっているところに、こんな(確率を下げる)ことを言われちゃったら根底から覆ると思います」
要するに、高い確率を出さないと大きな予算を獲得できないというのです。

なぜ大きな予算が必要かというと、防災用として様々な公的支出が増えれば、行政側が業者に貸しを作れるからです。
上手く行けば天下り先を確保できるかもしれません。
だから、どうしても高い発生確率が必要なのです。

南海トラフ地震関連で、近畿地方のある県で大規模な道路工事が行われたのは、もしかしたら当時「国土強靭化計画」の旗振り役だった与党の幹事長が、この県の出身であったことと関係あるのかもしれません。
この元幹事長は、政治資金パーティーの裏金疑惑で捜査当局から事情聴取を受けていましたが、地震対策費として支出された国の予算が、巡り巡ってこの政治家に還流していた可能性だって考えられます。

実は、この巨額の予算というのは学者にとっても好都合でした。
なぜなら、簡単に研究予算を引っ張ってこれるからです。
行政が重要と考える問題の学術研究には、簡単に予算がつくことが多いのです。
最近の例では、地球温暖化の研究などがそうです。

ところが、この時会議に出席していた地震学者たちは”サムライ”でした。
ほとんどの地震学者が、「時間予測モデル」を支持しないと表明したのです。
結果、「③高い確率のみ」に賛成した学者はたったひとり。

しかし問題は、そのたったひとりが“ボス”だったことです。
学術の世界におけるヒエラルキーは、往々にして真実よりも優先します。
国家運営に関わる重要な会議でも、最終的には会社の会議と似たような形で結論が出るのですね。
学者の世界も、サラリーマンの世界と大して変わりないようです。

ところが、小沢が取材を進めていくと、世界でただひとつ「時間予測モデル」の根拠となっていた高知県の室津港のデータそのものが怪しくなってきました。

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