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5☆s 講師ブログ

間違いだらけの少子化対策(2)

②の「結婚する女性が少なくなっている」説を検証してみたら、とんでもない事実が判明しました。

内閣府の『令和4年版 少子化社会白書』によれば、「生涯未婚率」(50歳になった時点で一度も結婚したことがない人の割合)は、男性が28.3%で、女性は17.8%。
これは、2020年の国勢調査の時のデータですが、おおよそ男性では4人に1人、女性では5人に1人が生涯独身ということです。

1970年は男性1.7%、女性3.3%だったので、ここ50年で男性は26.6ポイント、女性は14.5ポイントも急上昇したことになります。
驚くべき勢いとしか言いようがありません。

特に、男性の増加が著しいのが目につきます。
一体なぜでしょう?

男性の生涯未婚率が急上昇し始めたのは、バブル崩壊後のデフレが始まった90年代。
その後リーマンショックを経て、高止まり状態は完全に定着しました。
デフレの影響で大きく変化したものといえば、間違いなく「雇用環境」です。

多くの企業でリストラが断行され、正社員に代わって非正規雇用の従業員が急増しました。
もしかしたら、生涯未婚率の急上昇は、非正規雇用の増加と関係があるのではないでしょうか。

そこで、正社員と非正規雇用の生涯未婚率を比較してみました。
すると、男性正社員は19.6%と男性全体の28.3%よりも低い一方、非正規雇用の男性は60.4%ととんでもなく高い数値になっていました。

このことから、男性の生涯未婚率の急上昇は、どうやら非正規雇用者の急増が原因のようです。
これは、低所得の男性ほど生涯未婚率が高くなるというデータとも一致しています。
考えてみれば、安定した雇用環境でそれなりの収入を得ているサラリーマンなら、未婚率が低くなるのは当然のこと。

ということは、652万人と男性雇用者の2割も占める非正規雇用者をどんどん正社員に登用していけば、結婚する男性は増えるはずです。
結婚する男性が増えれば、当然結婚する女性も増えるので、女性の生涯未婚率も下がります。
結婚した夫婦がもうける子どもの数はほぼ2に近いので、結婚するカップルが増えれば「合計特殊出生率」は当然上昇します。
これで少子化には歯止めがかかるはず。

なんと、あっさり解決策が見つかったではありませんか。
めでたし、めでたし。

でも、問題はどうやって正社員を増やすかです。
法律で非正規雇用を禁止するのは難しいです。
そうなるととにかく景気をよくして、企業が安定した雇用を確保するために、積極的に非正規雇用の従業員を正社員に登用するよう仕向けていくしかありません。

つまり、政府がとるべき少子化対策はただひとつ、「景気をよくすること」です。
実際これを裏付けるように、先述した経済財政諮問会議の資料の中で、もっとも効果的な政策として記載されていたのは、若年層への分配強化と2%程度の継続的な賃上げとの合わせ技でした。

そうです。
政府もわかっているのです。

もし、マスメディアが報道しているような増税や社会保障費の負担増という政策を採用すれば、景気は確実に悪化し少子化にますます拍車がかかってしまいます。
ですので、政府にはくれぐれも間違えないでほしいものです。

さて、結論は出てしまいましたが、ついでに女性正社員の未婚率も見てみましょう。
女性全体の生涯未婚率は17.8%でしたが、女性正社員の未婚率は24.8%と、男性より5%も高くなっています。
ちなみに、非正規雇用の女性はわずか10.3%。

なぜ、女性正社員の生涯未婚率はこんなにも高いのでしょう?
もしかしたら、映画やテレビドラマに描かれるように、所謂「キャリア・ウーマン」として、結婚より出世を選ぶ人が多いのかもしれません。

そこで、とりわけ未婚率が高い女性正社員の職業を見てみました。
管理的職業、専門的・技術的職業、事務職、販売職などとなっています。
もっと詳しい分類ではどうでしょう。
著述家、記者、編集者、続いて美術家、デザイナー、写真家、映像撮影者。

なんと、全てメディア関係者ではありませんか!

これを見る限り、政府の少子化対策の遅れを批判しているはずのマスメディアの人間が、その片棒を担いでいる側面があることは否めません。
なんという皮肉。

日々のテレビや新聞の報道を鵜呑みにしていると、完全に騙されてしまいます。
マスメディアは、もっと少子化問題の本質を深く掘り下げて、詳細なデータを分析した上で国民に真実を知らせるべきです。

自分たちのことには目を瞑り、増税や社会保障費の負担増のための世論作りに加担するようなことは、決してすべきではありません。
これではまるで、どこかの省庁の手先ではありませんか。

自然の法則では、生物の個体数は「フェルフルスト=パール方程式」に従って変動するといいます。
これは、別名「ロジスティック方程式」と呼ばれるものですが、その意味するところは「環境にまだ余裕があれば個体数は増加し、逆に増えすぎれば減少する」という極めてシンプルなもの。

実は、合計特殊出生率が2を切るという現象は、世界中の先進国で起こっています。
アメリカ1.63、イギリス1.56、ドイツ1.53、カナダ1.40、イタリア1.24、韓国に至っては0.83です。

これらの国の多くは、現在日本政府が検討しているような保育所の増設や、子育てに関する諸手当の増額といった対策はすでに実施済みです。
それでもこの有り様なのです。

フランスは1.83と比較的高い数値が出ていますが、これは大量の移民を受け入れた結果です。
今のところ、有効な対策はこの移民くらいしか見当たりません。
首相も令和臨調で移民政策を検討する旨発言しましたが、これは社会問題とセットで考えなければならない重大問題であり、軽々に判断すべきことではありません。

日本で進行している少子化が、果たしてこのロジスティック方程式で説明できるものなのか、あるいは単に景気による雇用環境の変化が原因なのか、本当のところはよくわかりません。
でも、マスメディアの報道を信用してはいけないことだけは確かです。

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