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5☆s 講師ブログ

管理職は必要か?(2)

ペンシルベニア大学ウォートンスクール教授のアダム・グラントは、『1兆ドルコーチ』の序文で本質を突いた鋭い疑問を投げかけています。
「書店には自助本のコーナーがあるのに、なぜ人助け本のコーナーがないのだろう」

確かに「自己啓発本」はズラリと並んでいるのに、部下を「指導育成する本」は驚くほど少数。
そのため、管理職が部下を指導育成する時は、どうしても自分の体験をベースに考えざるを得ません。

アダム・グラントは、人のよいところを最大限引き出して励ましたり、意欲を掻き立てたりすることは「ピープル・ファースト」だと言います。

ふと思ったのですが、管理職は普段「何ファースト」で仕事をしているのでしょう?
かつての私のように、日々の仕事を回すことをファーストに考えているのではないでしょうか。

ビル・キャンベルは、「人がすべて」という信条の中でこんなことを言っています。
「どんな会社の成功を支えるのも、人だ。

マネージャーの一番大切な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだ」

ビルはこの信条の中で、管理職は「支援」・「敬意」・「信頼」を通じてその環境を作るべきだと主張していますが、この中で一番難しいのは「信頼」ではないでしょうか。

彼は「信頼」をこう定義しています。
「彼らに自由に仕事に取り組ませ、決定を下させること」

どうです?
管理職が「ピープル・ファースト」を実践するのは、口で言うほど簡単じゃないでしょ。
でも不思議に思うのは、なぜビル・キャンベルがこの難題をいとも簡単に実践できたかということです。

実は彼はビジネス界に入る前、大学のアメフト部のコーチを10年ほど務めていました。
彼と親交のあるNFL殿堂入り選手のロニー・ロットは、コーチという職業についてこんなことを言っています。

「普通の人は他人をよくする方法を考えるのに時間をかけたりしない。

だが、コーチはそれをやる。

それが、ビル・キャンベルのやったことだ」

確かに、ビルは他人をよくすることを最優先に考える人でした。
しかも、異常なほど真剣に。

後にビルは、秋の火曜日と木曜日の午後、毎週カリフォルニア州アサートンにあるセイクリッド・ハート校で、中学生たちのフラッグ・フットボールのコーチを務めていました。
フラッグ・フットボールとは、タックルなどの身体的接触を避け、腰に着けたフラッグを取り合うという、競技者の安全性に配慮したアメリカン・フットボールの派生版。

ビルが指導している時間帯は、絶対に電話を架けてはいけないというルールを皆忠実に守っていたのですが、一人だけ例外がいました。
しかし、ビルはその男からの着信があっても、スマホの画面を確認し子どもたちにちらっと見せただけで、電話には出ずにそのままポケットにしまってしまうのでした。

自分たちの指導を最優先に考えてくれるビルの姿勢に、子どもたちは心を鷲掴みにされます。
スマホの画面に表示されていた文字は「スティーヴ・ジョブズ」でした。

あなたはどうですか?
部下を指導している最中に社長から電話が架かってきたら、それを無視して部下の指導を優先する勇気がありますか。
あなたの部下が伸びないのは、あなたにその覚悟がないからかもしれませんよ。
ねっ、「ピープル・ファースト」って、本当に簡単じゃないでしょ。

時には汚い言葉で叱咤することもあったビルですが、それをパワハラと受け取る人は一人もいませんでした。
指導に懸ける彼の真剣さを皆知っていたからです。

ビルは、コーチの仕事に関する報酬はほとんど受け取らず、グーグルでも報酬の申し出をことごとく断っていました。
最後に、どうしても株式を受け取らざるを得なくなると、その全てを慈善団体に寄付してしまいます。
なぜ報酬を断るのかと聞かれたビルは、自分の影響力を測る別の「モノサシ」があるからだと答えています。

自分のために働いてくれた人や、自分が何らかの形で助けた人のうち、すぐれたリーダーになった人はどれくらいいるか。
それがビルにとっての「モノサシ」でした。

自分の育てた人間がリーダーとして活躍すること。
それだけが彼の喜びだったのです。

ほとんど表舞台に出ることのなかったこの伝説のコーチを、人々がようやく目にすることができたのは2011年のスティーヴ・ジョブズの追悼式。
アップルCEOのティム・クックが、生前のジョブズが無二の親友かつメンターとして慕い、アドバイスを求めて毎週会っていた人物という触れ込みで、「ザ・コーチ」という肩書のもと真っ先に紹介した初老の男こそ、ビル・キャンベルその人でした。

企業幹部への定番の質問に、「夜眠れなくなるほど気にかけていることは何ですか?」というのがあります。
ビルの答えはいつも同じ。
「部下の幸せと成功」

でも、現実には、そんな管理職はどれくらいいるでしょうか。
部下のことより、むしろ自分を引き上げてくれるであろう、上司の出世が気になるという管理職の方が多いのでは?

絶対に間違えてはいけませんよ。
管理職はあくまで部下の「コーチ」です。
コーチがいなくても試合は回りますが、選手を成長させることはコーチにしかできません。

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