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5☆s 講師ブログ

俺を懲戒処分にしろ!(3)

サラリーマンが仕事で実績を挙げようと懸命になるのは、実績が出世に直結するからです。
よほどの変わり者でなければ、サラリーマンのほとんどは出世を重要なことと考えます。
そのため、何らかの理由で出世の道が閉ざされたりすると、仕事に対するモチベーションは著しく下がってしまいます。

ところが、数は決して多くないのですが、出世を最優先に考えないサラリーマンも存在します。
そういう人は、出世とは別に仕事上の「やりたいこと」を持っていて、それが働くモチベーションになっています。

そのような人にとっては、出世はあくまで「やりたいこと」を達成する過程での「副産物」に過ぎません。
こうなると、人は簡単に妥協しなくなります。

一方、出世を最優先に考えるサラリーマンは、とにかく敵を作らないことを第一に心がけます。
そのため、誰かと対立する場面になるとすぐに妥協点を探します。
でもそれは、ビジネスマンとしての「軸」がないことを公表しているようなものです。

そんな人が運良く会社のトップに立ったりすると、何をすべきなのかわからなくなります。
そもそも、出世だけを目的としてきたので、この会社にこうなってほしいとか、この会社をこうしたいというヴィジョンがないからです。
薄っぺらな数値目標を掲げる経営者は、大体このタイプに属します。
信念がないから、数値目標を掲げるしかないのです。

話を元に戻しましょう。
アサヒの『スーパードライ』が快進撃を続ける中、キリンが89年にリリースした4つの新商品は全て惨敗を喫します。
その結果、『ラガー』に頼りきっていたキリンのシェアは、22年ぶりに50%を割り込みました。
これは非常事態。
大至急、『ラガー』に代わる大型定番商品を作らなければなりません。

ついに、前田率いる「マーケティング部第6チーム」に命が下ります。
ところが、この時キリンは実に奇妙な開発体制を敷きました。
新商品の開発は通常マーケティング部の仕事なのに、前田のチームとは別に、企画部と社外コンサルの合同チームも開発に取り組むというのです。

つまり、2つのチームに開発を競わせ、どちらかよい方を採用しようというのです。
こんな荒唐無稽な試みが実現した背景には、企画部の最高幹部の思惑が影響していたと言います。
社内政治を重要視する人間にとって、社運を賭けた新商品の開発など、所詮は出世のための手段のワン・ノブ・ゼムに過ぎないのです。

89年の年末、いよいよどちらのプロジェクトを採用するかを決める運命の社内コンペが開催されました。
複数回実施した消費者調査と社内テストの結果は、前田チームのぶっちぎりの勝利に終わります。
ほとんどの人が『一番搾り』に軍配を上げたのです。
出世を狙ったドス黒い陰謀は、脆くも破れ去りました。

この判断が正しかったことは、なにより『一番搾り』が空前の快進撃を続けたことで証明されます。
開発部門には取材が殺到しました。
メディアに露出することは、出世にとって大きな後押しになります。

しかし、取材に対応したのは前田ではなく、彼の部下でした。
時々、部下の手柄を横取りする上司を見かけますが、前田は自分の企画がヒットしても絶対にカメラの前には立ちませんでした。
表舞台に立つのは決まって部下。
これが、出世を「軸」に考えないサラリーマンのやり方です。

もっとも『一番搾り』の場合、前田が取材に応じることが物理的に不可能だったことも事実です。
なぜなら、前田はすでにワイン部門に左遷されていたからです。

社内政治を甘く見てはいけません。
社内コンペの圧勝は、対抗勢力の深い恨みを買っていました。
出世を「軸」に考える人はここまでやるのですね。

ところが、前田は左遷されても全く腐りませんでした。
それどころか、嬉々としてワインの勉強を始めます。
出世を「軸」に考えないサラリーマンにとって、未知の分野を学ぶことはとても楽しい作業です。
そしてついに、キリン直営のレストランを渋谷にオープンさせるところまで漕ぎ着けます。

しかし、会社はまたしても前田に試練を与えます。
なんと今度は、グループ傘下の洋酒メーカー、キリン・シーグラムへの出向が命じられたのです。
ついに、マーケティング部どころか本社からも追われてしまった前田。
社内政治の闇の深さを侮ってはいけません。

ところが、です。
前田はウィスキーの勉強を心から楽しんでいるではありませんか。
スコットランドの『グレンリベット』蒸留所を背景に、満面の笑みを浮かべた前田の写真が残されています。
前田は、どんな状況でも決して笑顔を忘れない男でした。

なぜ、私たちは彼のように仕事を楽しむことができないのでしょうか?
それは、「人事評価」が気になってしまうからです。
「出世」の呪縛から解放されたら、どんな仕事にも楽しみを見出だせるのかもしれません。

ただ、誤解してはいけないのは、前田は決して出世そのものを否定していたわけではないということです。
そうではなく、出世以上に「やりたいこと」があったのです。
そのタネ明かしは後でするとして、キリンという会社が、再び前田を必要とする時代がやってきます。
きっかけは、94年にビール業界に走った大激震でした。

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