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5☆s 講師ブログ

世界有数の不平等国(3)

日本の所得再分配には2つの問題があります。

1つ目は所得再分配の中身についてです。
所得再分配は「税」と「社会保障」(年金と医療保険)から構成されていますが、格差抑制にもっとも貢献しているのはどちらの方でしょうか?

実は、「税」ではなく「社会保障」の方です。
「社会保障」の効果は2017年では30.8%でした。

一方、「税」の方はというとわずか6%。
つまり日本の税制は、格差是正にはほとんど貢献していないのです。
理由はわかりますよね。

累進課税の勾配が緩やかであることと、資本所得への課税が優遇されていること、要するに金持ちが優遇されているからです。
日本は、高額所得者の所得税率と法人税率を段階的に引き下げてきました。
当然、税収は大きく目減りしました。
その目減り分の埋め合わせをしたのが、消費税です。

高額所得者の税率が引き下げられる度に、消費税率は引き上げられました。
それにより、税制が改正される度に格差は拡大したのです。
消費税は逆進性の強い税制ですので、格差拡大をさらに後押しする結果となりました。
もし、消費税を廃止して高額所得者への税率を高いものに戻し、同時に高額な資本所得を得ている人への課税を厳しくしたら日本の格差はかなり是正できます。

2つ目の問題に移りましょう。
それは、年代別に見た時の分配がかなり不公平なことです。

ジニ係数の改善で平等化されるのは60歳以上、特に65歳以上の高齢者です。
社会保障制度(年金と医療保険)は高齢者層を平等化してくれますが、若年層は格差が広がったまま放置されている状況です。

「相対的貧困率」が日本より高い国はアメリカと韓国だけですが、驚くのは韓国の66歳以上層の貧困率が40%以上と世界の中でも突出していることです。
でもこれは、もしかしたら将来の日本の姿かもしれません。

国民年金保険料を納めていない人の割合を見ると、2002年からずっと30%を超えたままです。
特に深刻なのが非正規雇用者の存在です。
非正規雇用の問題に関しては、多くの人が誤解していることがあります。

小泉純一郎政権(01年4月~06年9月)が採用した、「新自由主義」に基づく労働者派遣の規制緩和が非正規雇用者が増加した原因だと指摘する向きがありますが、これは明らかに間違いです。
84年に15.3%だった非正規社員比率が、20%台に上昇したのは1990年代のことです。

つまり小泉政権が発足する前から非正規社員は急増していたのです。
その後、97年の消費増税でデフレになったことによりさらに増加し、19年には38.3%に達してしまいます。

雇用の二極化の原因は小泉政権の政策ではなく、日銀が金融緩和を怠ったことによるデフレの長期化です。

ただ、非正規雇用者が増えても、政府にとって大きな問題にはなりません。
なぜなら、高齢者に優しい政策をとってさえいれば選挙の票は稼げるからです。

しかし、日本の成長力はどうなるでしょう。
世界を相手に熾烈なビジネス競争を戦うことなど到底できません。

日本が今やらなければならないことは、規制をどんどん緩和して国内の競争を激化させることです。
稼ぐ人にはガッポリ稼いでもらう仕組みを作ることです。

できるだけ競争しない世界を作るのではなく、どんどん競争して世界に負けないように成長力を伸ばすことです。
と同時に、その競争に敗れた人や非正規雇用の人に対しては、強力な所得再分配政策を実施して、稼いだ人からガッポリ税金を取って救済に充てればいいのです。
それをしない限り、国民の大多数が「貧しい点ではみんな平等」な国になってしまいます。

総務省の「家計調査」によると、2人以上世帯で年収が1,500万円以上の割合は2000年には5%近くありましたが、ここ10年を見るとほとんど3%を割り込んでいます。
一方、年収200万円未満の世帯は、2003年には2%を割り込んでいましたが最近はずっと3%を超えています。

また、厚生労働省の発表では、バブル崩壊直後の1992年の日本の平均給与は472万円。
ところが、26年後の2018年は433万円と約40万円も下がっています。
四半世紀で平均給与が8%も下がった国なんて、世界中探しても日本だけです。

これこそ、近代経済史において人類が初めて経験する「長期デフレ」がもたらした”成果”です。
日本はまさに、「みんな仲良く、みんな貧しく」の国になりつつあるのです。

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