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5☆s 講師ブログ

強いAI、弱いAI(2)

AIに関する新しい考え方とは以下のようなものです。
最終的なアウトプットが満足いくものであるならば、判断理由などどうでもいい。
確かに、この考え方も一理ありますよね。

これは「強化学習」と呼ばれるもので、「目的」を設定してやればAI自身が試行錯誤しながら判断を重ねていき、結果として自ら成長していくシステムです。
まさに、将棋のAIがこのタイプです。

人間の行動の根本にあるのは、長い進化の過程で獲得した「生存意欲」です。
人間の好奇心も競争心も、学習欲も支配欲も、さらには後天的に獲得した道徳や倫理も全て生存意欲に繋がっています。
ということは、どうやったら生存できるかという人類の「目的」さえ達成できれば、必ずしも脳内の判断プロセスの全容を解明する必要はありません。

このようにAI自身が、目標に向かって試行錯誤しながら成長していくことを「自律」と言います。
「自律」(Autonomy)は「自動」(Automation)とは違います。

「自動」は答えが一つである目標に向かって動くことで、「自律」は答えが一つではない状況でも最適な判断が下せることをいいます。
分かりやすくいうと、学校への道順を教え込めば、それに従って一人で進んでいくことができるロボットは「自動」です。
一方、途中で大きな地震が起こった時に、このまま学校に行った方がいいのか、それとも引き返した方がいいのか、あるいは近くの安全な場所を見つけて避難した方がいいのかといった判断ができるのが「自律」です。
「自律」と「自動」は天と地ほども違います。

現在の研究では、「自律的AI」を作るためには生存価値の代わりとなる「目的関数」と、それに付属する「報酬関数」や「価値関数」を与えてやればよいことがわかっています。
重要なのは、これらの「関数」は全て人間が与えていることです。

このシステムをブラッシュ・アップしていけば、「強いAI=汎用型AI」に近い自動運転や自律ロボット、自律ドローンなどを作ることは可能です。
現に、危険を察知して安全な飛行ルートを選択する、自律型ドローンの開発はかなり進んでいるといいます。
なぜドローンかというと、もともと攻撃用の軍事兵器として開発されたものだからです。

軍事用の開発はダメだという人がいますが、それは全くの間違いです。
インターネットやGPSなど先進的なイノベーションと言われるもののほとんどは、最初は軍事用として開発されたものです。
他にも、ロボット掃除機は地雷撤去技術の応用から生まれました。
エアバッグの大幅なコストダウンに成功したアメリカの会社は、もともとは手榴弾のメーカーでした。
いざという時に必ず作動し、そうでない時は絶対に作動しないという独自の技術を転用したのです。

第一次世界大戦中、ドイツ軍の毒ガスに対する防毒マスクのフィルターとして使われていた紙製品は、戦後にティシュペーパーとして売り出されました。

一般に、民生用の製品開発というのは採算がとれるかどうかがカギになるため、無尽蔵に開発費を注ぎ込むことはできませんが、軍事用の開発はそれほど採算に縛られないため画期的なイノベーションに結びつくことが多いのです。
動機は何であれ、使い方さえ誤らなければいいということです。
要するに、ここでも「目的関数」を誤って設定しないことが重要なのです。

でも、AIの進化によって新たに誕生した「自律した知」は、人類が800万年に渡り生き延びてきた「知恵」とは全く別の物です。
原始からのヒトとしての生存の経験値も、また人類が実際に経験することで学んできた戦争に関する歴史的認識も持ち合わせていません。
さらにAIの場合は、生身の人間としての身体性さえ伴っていません。

もっとも昨今の世界情勢を見ていると、大国の指導者でさえ戦争に関する歴史的認識は持ち合わせていないように見えますが。

この実に不思議な「知」が、今リアルな世界を動かそうとしています。
すでに、チェスや将棋、囲碁の世界では、AIは人間を遥かに凌ぐ知力を持つようになりました。
まさに世界は変わったのです。

考えてみるとAIの出現以前は、人間と機械を区別することは比較的簡単でした。
しかし、AIという「超頭脳」が誕生した途端に、「人間でなくてもAIでもできる」ことが次々と出現しました。
その仕事をこなす主役が、人間でなければならない理由がなくなったのです。

太田裕朗は、「これだけは人間にしかできないものとは何か」が問われているのだと言います。

AIが人間に問いかけているのは、まさに「人間とは何か」ということなのです。
それを明示することなく、シンギュラリティがいつ来るかを議論することは無意味な行為です。

アメリカの著述家ケヴィン・ケリーは、自律性を持ち始めたAIのメリットは、人間とは違う形で創造的なことだと述べています。
私たちは、人間のように創造的なAIが欲しいわけではありません。

なぜなら、人間ならもういるからです。
人間と同じような存在をもう一つ作っても意味はありません。

AIに期待されるのは、機械固有の論理と創造性の発揮です。
目指すべきは人間を超えるAIではなく、人間とよきタッグを組めるAIです。
例えば、日本で実証実験が進んでいるタクシーの乗降客を予測するAIは、2016年のデータですが東京23区内ならすでに92.9%の精度に達しているといいます。
1台あたりの売上アップ額は、年間約28万円。

いずれAIが人間に取って代わる時が来るでしょう。
でも、それまでは「弱いAI」が人間をアシストする時代が続くはずです。
そして、その経験値を蓄積していくことは、将来AIが人間の仕事の大半を代替する時代が訪れた時に必ず役立つはずです。

いたずらにシンギュラリティを恐れるのではなく、AIを人間のためにどう使いこなすかを考えるべきです。
AIに関数を教え込むのは人間です。
もし、AIにリスクが潜んでいるとしたら、関数を教え込む人間の方にあるはずです。

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