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5☆s 講師ブログ

GAFAの税逃れ(2)

今回は、アマゾンの税逃れ対策です。

日本でも多くの人がアマゾンを利用していますが、アマゾンは日本に法人税を全く払っていません。

かつて日本には、「アマゾン・ジャパン」と、「アマゾン・ロジスティクス」という2つの組織がありましたが、現在は合併して決算を発表しなくてもいい「合同会社」になっています。
アマゾン本社の見解によると、この会社はアマゾンの子会社ではないので、日本の法人税は払わなくてよいというのです。

どういうことでしょうか?
アマゾンの主張はこうです。

この合同会社はアマゾン本社から商品の取次業務を委託されているだけで、アマゾンの日本子会社(事業所)ではない。

日本の人がネットでアマゾンのサイトにアクセスして品物を注文すると、その注文を受け付けるのはアメリカ本社である。
そのアメリカ本社から、日本の合同会社に「発送せよ」という指示が飛ぶ。
日本の合同会社は単に取次をやっているだけ。

その取次会社は利益を出していないので、法人税は支払わなくてもよい。
これがアマゾンの理屈です。

実際、アマゾンが日本で上げた利益のほとんどは、アメリカ本社に吸い上げられています。
そのため、アマゾンはアメリカ国内で納税をしています。
アメリカで法人税を払っているのに、日本でも法人税を払ってしまうと二重払いになります。
だから、「文句があるならアメリカ政府に言え」というのが、アマゾンのスタンスなのです。

でも、日本国内で配送をする時には、当然日本の道路を使います。

その道路は日本の国民から徴収した税金で作られています。
様々な日本のインフラ・サービスを利用しているのに、日本に1円も税金を払わないというのは筋が通らないようにも思えます。

本当に税法上の問題はないのでしょうか。
実はここはグレーゾーンです。

外国での収入は、原則として租税条約に基づき課税されるのですが、実際のところ条約の細部は両国間の協議により決定されています。
ですので、2国間の力関係が微妙に影響してきます。

例えば、プロ野球の助っ人として来日したアメリカ人選手は、日本の所得税は払っていません。
アメリカで納税しています。
でも、大谷選手など渡米した日本人のメジャーリーガーはアメリカで所得税を払っています。

なぜそんなことになるのかというと、2国間協議で日本が敗北したからです。
そういう意味では、租税条約は実質的には「不平等条約」です。
アマゾンはこの盲点を突いたわけです。

しかもアマゾンは、子会社をタックスヘイブンに置いて、グループの利益をそこに集中させています。
アイルランドのダブリンに置いた子会社にクレジット決済機能を持たせ、ヨーロッパの利益はルクセンブルクの子会社に集中させています。
ルクセンブルクという国は金融で食べている国なので、アマゾンという“太客”に逃げられないように、個別の税優遇措置も取っているようです。

でも、アマゾンはあらゆる節税対策を駆使して、納税額を限りなくゼロに近づけたのかと言うとそうではありません。
グループ全体の納税額の2/3にあたる200億円は、ちゃんとアメリカに納税しています。

なぜそんなことをするのでしょう?
それは、アメリカの税務当局の心証を良くして、2国間交渉を有利に導くためです。
アメリカの税務当局がバックについているからこそ、アメリカ以外の国で堂々と税逃れができるわけです。
何ともズル賢い戦略ですよね。

しかし、これに果敢に挑んだのが日本の税務当局。
アマゾンに対して粘り強く交渉を続けた結果、アマゾン本社は日本に法人税を払う方向で検討を開始しました。
頑張って風穴を開けた日本の税務当局に、盛大な拍手を贈りたいところです。
ただし、当時この事実を報道した新聞によると、支払う税額は僅かなものになるだろうとのことでした。
事実上のアマゾン勝利かと思いきや、思わぬところで逆転劇が起こります。

今回のG7やOECDの決定です。
税率は15%と決定されました。
それでも随分低い税率なのですが、課税の仕組みを作ったことは大きな一歩と言えましょう。
前アメリカ大統領のトランプは、アマゾンがアメリカに税金を納めているにも関わらず、「アマゾンは税金を払っていない」と非難しました。

トランプが言いたかったのは、全世界での年間売上高が10兆円を超えている超巨大企業にしては、あまりに納税額が少ないではないかということです。
言い分はごもっとも。

トランプだけではありません。

EUはルクセンブルク政府の対応を問題視し、追徴課税するよう指示していました。
イギリスはアメリカ系グローバル企業に対する「税逃れ防止法案」を、G20はネット通販企業の「税逃れ防止策」を検討していました。
まさに、機は熟していたのです。

今回のG7やOECDの決定は、この動きの延長線上にあります。
世界はようやく、グローバル企業の狡猾な税逃れ対策にメスを入れる気になったのです。

次回はグーグルと、最近「メタ」に社名を変更したフェイスブック、そして巧妙極まりないスターバックスの3社の税逃れ対策を解説します。

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