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5☆s 講師ブログ

GAFAの税逃れ(1)

GAFAなどの巨大グローバル企業は、世界中の国でビジネスを行っていますが、実はその国にはほとんど税金を払っていません。

これを問題視したG7(先進7ヵ国)の財務相会合は、2021年6月に法人税の最低税率を15%とすることなどを柱とした、巨大IT企業に対する「デジタル課税」の導入に合意しました。
これを受けて同年10月、OECDは課税対象を売上高2兆6千億円以上で、税引前利益率10%以上の企業とすることなどを決定しました。

2023年から導入される予定で、実施されると世界中の約100社が対象となります。
税収が潤う一方で、景気の足を引っ張るのではと心配する声も上がっているようですが、GAFAなどの巨大グローバル企業の節税対策とは一体どのようなものなのでしょうか。

今回は、大村大二郎著『脱税の世界史』をもとに、「節税」というよりも限りなくグレーな「税逃れ」対策の数々について見ていきたいと思います。

まず、アップル社です。
アメリカには、「コストシェアリング制度」というものがあります。
これは、アメリカの会社と外国の会社が共同で無形資産を開発した場合、アメリカでの権利はアメリカの会社が使用でき、アメリカ以外の国での権利は外国の会社が使用できるという制度です。

アップルの場合、研究開発はすべてアメリカで行っていますが、アイルランドの子会社に研究開発費を負担させることで、この制度の適用を受けています。
各国におけるアップルの使用料は、全てアイルランドの子会社に支払われるのですが、アイルランドの法人税率はたったの12.5%。
アメリカの法人税率は35%なので、税負担は約1/3で済みます。
えげつない節税策ですよね。

しかも、アップルはアイルランドに子会社を2つ保有しているのですが、そのうち1社の本籍はタックスヘイブンであるヴァージン諸島に置かれています。
アイルランドの税法では、居住地が外国ならばその国で課税される決まりですので、本社がアイルランドにあったとしても、アイルランド国内でビジネスをしていない限り無税です。
アップルは、この会社にグループの利益の大半を集中させることにより、グループ全体の税負担率を9.8%まで下げることに成功しました。

その上、2つのアイルランド子会社の間に、オランダの子会社を挟ませるという手法で更に節税をしています。
この手法は、2つのアイルランドでオランダを挟むことから、俗に「ダブルアイリッシュ・ウィズ・ダッチサンドウィッチ」と呼ばれ、世界中のグローバルIT企業の税逃れのお手本になっています。
アップルが節税できた金額は、総額で年間24億ドル(約2,600億円)と言われていますが、いくら合法的な経理処理だといっても、真面目に税金を払っている人にとっては到底納得できるものではありません。

でも、本当の問題は「税逃れ」ではありません。
アップルが2012年9月末までの1年間に海外で納めた法人税を率に換算すると、平均1.93%と言われています。
また、2013年~17年までに上げた利益のうち、25兆円が自社株買いや配当金として株主に還元されています。
この期間にアップルが支払った法人税の合計額は9兆円。
他に人件費が9兆円で、設備投資は6兆円です。

つまり、アップルが稼いだ利益のうち、実体経済や社会全体に回ったお金は15兆円しかないのに、それより遥かに多い25兆円が、株式を保有している富裕層に流れ込んだことになります。
まさに、貧富の差を拡大している原因のひとつがここにあったのです。

巨大グローバル企業が、何のために必死で節税しているかというと、浮かせたお金を株主に還元するためです。
富裕層をますます豊かにするためです。
極論すれば、アップルは富裕層を豊かにするために稼いでいるようなものです。

巨大グローバル企業の税逃れの本質的な問題はここにあります。
次回はアマゾン社の税逃れ対策を解説します。

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