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5☆s 講師ブログ

マグロ漁船は学びがいっぱい(1)

齊藤正明はバイオ系企業の研究所で、冷蔵マグロの「鮮度保持剤」の開発を担当するサラリーマンでした。

現在はマグロの冷凍技術が進歩したため、冷蔵ものと比べてもほとんど遜色はなくなりましたが、かつては雲泥の差があったそうです。
片道9日間もかけて遥々赤道直下まで出掛けて行くマグロ漁船にしてみれば、30日間という冷蔵保存の限界が少しでも伸びれてくれれば、その分長く漁場に留まることができます。
しかし、鮮度保持剤の開発はなかなか進まず、暗中模索の日々が続いていました。

ある日の研究報告会議の席上、突然上司から齊藤に命令が下ります。
「マグロの全てを知るために、一度マグロ漁船に乗ってこい」
その場にいた全員が、発言の趣旨を理解できずキョトンとする中、上司は構わずこう続けます。
「船は手配したから頑張ってこい」
随分と無茶な話ですが、気弱な齊藤には断ることができませんでした。

その頃この小心者のサラリーマンは、仕事や職場の人間関係で様々な悩みを抱えていました。
ところが、1カ月以上に及ぶ地獄の船旅で、マグロ漁師の様々な人生観に接することによって目から鱗が落ちます。
その様子をまとめたのが、『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』。

でも乗船当初は、担当する鮮度保持剤の開発のことで頭がいっぱいでした。
せっかく船に乗せてもらったのに、うまく開発できなかったらどうしよう。
ところが、船長は「そんなつまらんこと気にしちょるのか」と鼻で笑います。
船長にとってはつまらないことでも、本人にとってはサラリーマン人生を左右しかねない一大事。
不満げな顔をする齊藤に船長はこう続けました。

「おいどーらも、いつも漁に出るときは、マグロがたくさん捕れるんかと不安にはなる」
やっぱり漁師も、仕事の結果についてはサラリーマン同様不安を感じるようです。
「人間だから結果を気にするのは仕方がねぇ。でも、結果に気を取られすぎるともったいねーんじゃねーか?」

マグロ漁も鮮度保持剤の開発も、共にビジネスですから結果が問われるのは当たり前のこと。
しかし、結果を求めるプロセスの中に、様々な楽しみや学びが潜んでいるのだと船長は言いたいようです。

そこで齊藤は、鮮度保持剤のことはひとまず脇に置いておき、漁師たちのストレスの受け止め方や、コミュニケーションの取り方に注目してみることにしました。
するとそこには、現代の悩める職場が見習うべき様々なお手本があったのです。

船がようやく赤道直下の漁場に着き、いよいよマグロ漁が始まった時のことでした。
延縄(はえなわ)漁というのは2,000本もの釣り針がついた、長さ100Kmにも及ぶ縄を5時間かけて海に流し入れます。
そして、3時間後に縄を引き上げるのですが、ワクワクして見つめる齊藤の期待とは裏腹に、一向にマグロが揚がってくる気配がありません。

巻き取りの様子を2時間も見続けてすっかり退屈した齊藤は、近くにいた漁師に声をかけます。
「こんなにヒマだと嫌になってきません?」
その漁師は「別に」と答え、嫌になるのは陸(おか)の人の考え方だと言いました。

この答えが腑に落ちない齊藤は食い下がります。
「自分のやったことが結果で返ってこないと嫌になると思うのですが」
ビジネスマンなら誰でもそう思いますよね。
しかし、漁師から返ってきた言葉は意外なものでした。

「おいどーらは、事前に縄に傷がないか調べたど。針も磨いたど。エサを針につけたど。縄を海に入れてから3時間待ったど」
事前の準備も見ていたのでそれは齊藤も知っています。

「つまりの、おいどーらにできることはすべてやったんど」
それも知っています。

「それから後のマグロが捕れるかどうかなんて、海が決めることど」
なるほど、言われてみれば確かにその通り。

縄とか針の点検整備や手順通りの作業というのは、漁師が自分でコントロールできる仕事です。
だから、手抜きをせずに一生懸命やりました。
しかし、それから先の結果というのは、漁師がいくら頑張ってもコントロールできることではありません。

「陸の人たちは、人間ではどうもならんことまで、なんとかしようとしちょる。それが疲るる原因よ」

そう言われて、齊藤は日頃の自分を振り返ってみました。
商談の時には、なんとかして相手から色よい返事をもらおうと食い下がりました。
仕事で上司に認めてもらおうと必死で頑張りもしました。

でも考えてみると、結果はすべて他人が決めることです。
自分でコントロールできることではありません。
そもそも世の中なんて、自分ではコントロールできないことばかりではありませんか。
だから、結果を気にするよりも、まずは自分のやるべき仕事に集中することが大切だと、漁師はそう言いたいのです。

ともすれば私たちは、結果を気にするあまり不安に苛まれることがあります。
心が翻弄されたりもします。
でもその前に、やるべきことはすべてやったでしょうか。
やるべきことに集中して、本当にベストを尽くしたでしょうか。
そのことを、今一度自分の胸に問いかけてみませんか。

やるべきことを徹底してやり尽くせば、「こうすればよかったのかも」などと後悔することはないはずです。
結果を気にするよりも、今やるべきことに集中する。
それは、陸の仕事も同じはずです。
だって、「人事を尽くして天命を待つ」という故事成語は、漁師が作ったものではないのですから。

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