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5☆s 講師ブログ

ノブレス・オブリージュ(1)

竹内久美子の本でアラビアヤブチドリの生態を知った時、シベリア抑留者の「列」のことを思い出してしまいました。
詩人の石原吉郎によれば、抑留者たちは毎日の作業地域への行き帰りの際、5列縦隊となって移動していたそうです。
いざ「整列!」の号令がかかると、みんな我先にと内側の3列に並ぼうとしました。
なぜなら、両端の列にいると、凍りついた雪道でうっかり足を滑らした拍子に、脱走と見做されてロシア兵に銃殺されてしまうからです。

ですので、整列する時は血眼になって近くにいる弱い者を見つけては、力ずくで外側の列に追いやろうとしました。
石原はこの様子を、「短い時間のうちに、被害者と加害者が激しく入れ替わる」と表現しています。
極限状態では、人間の本性が剥き出しになってしまうのですね。

さて、竹内久美子が紹介するのは、動物の世界における序列の厳しさです。
サルの社会に序列があることは知られていますが、群れを作るほとんどの動物で、この序列化が観察されるそうです。
人間もその例外でないことは、みなさんよくご存知ですよね。

アラビアヤブチドリは、アラビア半島やイスラエルの死海地方の半砂漠地帯に生息する、スズメの3倍くらいの大きさの鳥です。
この鳥たちにも、厳格な序列の掟がありました。
上位のオスは様々な優先権を持つ見返りに、劣位のオスに対してエサを分け与えるという「施し」を行います。
しかもご丁寧に、トゥルトゥルという特別な鳴き声を発して、「施し」であることをアピールしながらするのです。
随分と嫌味なヤツですよね。

この鳥は、夜になると灌木の枝に横1列に並んで休むのですが、寝ている間にタカやハヤブサなどの天敵をはじめ、様々な動物に襲われる危険性が高まります。
特に危険なのが左右の両端です。

どうです?
抑留者の移動と似ていると思いませんか。
ところが、ここからが人間とはちょっと違うのです。

なんと序列の最上位の鳥と2番目の鳥が、わざわざ両端に位置取りするのです。
あえて危険な場所を受け持つのが、上に立つ者の責任ということなのでしょう。
まさに「ノブレス・オブリージュ」ではありませんか!
動物の世界における厳格な序列の規律というのは、いざという時には上位の者が真っ先にそのリスクを担うという約束によって成立しているのです。

ちなみに第一次世界大戦の時、イギリスの貴族はより危険な前線の部隊に配属されることが多かったそうです。
その証拠に、オックスフォードやケンブリッジといった有名大学を卒業した貴族の士官の死亡率は、なんと19%。
全将兵の平均である8~9%の倍以上もありました。
そう言えばフォークランド紛争の時も、アンドルー王子は最も危険な最前線に配属されていましたよね。

でも、そもそも「ノブレス・オブリージュ」はフランス語。
なぜ、イギリス軍の話が多いのでしょう。
NHKのキャスターを勤めていた磯村尚徳によれば、一般に犬猿の仲と思われているイギリスとフランスは、実は「敵ながら天晴れ」と互いに一目置く間柄とのこと。
イギリスの上流階級はフランス語も堪能なので、敬意を表する意味でこのフランス語を使ったようです。

ちなみに、「エリート」というフランス語も同じくイギリス人が広めました。
そうです。
この2つの言葉は表裏一体なのです。

欧米では、命懸けの危険な最前線に立つ覚悟のあるリーダーのことを「エリート」と呼ぶのです。
一方、日本ではどうでしょう。

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