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5☆s 講師ブログ

赤色の研究

今回のテーマは、赤という色が持つ不思議なパワーについてです。
天井や壁が赤く塗られた部屋にいると、血圧が上がったり脈拍が速くなったりします。
これは交感神経が興奮するためです。

この反応は目隠ししていても現れますが、おそらく皮膚が赤い色の波長を感知するからだろうと言われています。
ちなみにワーグナーは、そのような赤い部屋でしか作曲しなかったそうです。

でも、なぜ赤を見ると交感神経が活性化するのでしょうか。
自然界では多くの動物に見られる傾向ですが、赤は生物にとって「危険信号」を意味します。
トゲウオのオスは、繁殖期になると婚姻色といってお腹が赤くなります。
キンカチョウのオスは嘴が赤くなるし、サルのオスはお尻が赤くなります。

これらはすべて、テストステロンという男性ホルモンの分泌量が増えるために起きる現象です。
テストステロンは攻撃性に関わるホルモンですので、赤みの強いオスほど狂暴であることを示しています。
そのため、赤い相手を見たら全力で戦うか、あるいは逃げるかの選択をしなければなりません。
だから、交感神経が興奮するというわけです。

1929年に生物学の大御所、ウォルター・キャノンが提唱した「闘争・逃走(fight or flight)理論」によれば、戦う場合はノルアドレナリンが、逃げる場合はアドレナリンが分泌されます。
最近は、「固まる(freeze)」という第3の反応もあることがわかったので、統合して「3つのF」と言われるようになりました。
とにかく動物は赤い色を見ると、とんでもないパワーが出るのです。

2011年にアメリカのロチェスター大学のA・J・エリオットらが発表した論文は、それが人間にも当てはまることを証明しました。
実験に参加した女子32人を含む46人の学生たちは、15~16人の赤、青、グレーの3つのグループにランダムに分けられました。
そして、パソコンの前に座ると握力計を渡され、画面に“Squeeze(握れ)”という色付きの文字が出たら、握力計を思いっきり握るよう指示されます。
赤、青、グレーというのは、画面に表示される文字の色のことでした。

結果は、予想通り赤グループが最大の力を発揮しました。
力を表す単位のニュートン(N)で示すと、赤の平均は289Nと青の221N、グレーの217Nを大きく引き離しています。
また最大限の力に達するまでの時間についても、赤が圧倒的に速いことがわかりました。

最近、この赤色の持つ心理効果について、盛んに研究が進められている分野があります。
それは、「スポーツ心理学」です。
2004年のアテネ・オリンピックの際、イギリスのダラム大学のR・ヒルらはボクシング、レスリング、テコンドーの各種目に目を付けました。
どの競技も、赤か青のユニフォームや防具を身に着けて戦いますが、色によって勝率が違うかどうかを調べたのです。

実力差が大きい場合は、当然のことながら、ユニフォームの色は勝敗に関係ありませんでした。
しかし、実力伯仲の試合となると、赤の勝率は62%にまで跳ね上がりました。
赤色を身につけた選手は自分が強くなった気分になり、自信満々で試合に臨んでいたのかもしれません。
あるいは、相手の赤色を目にした青の選手の方がビビりまくってしまったのかも。

事実、サッカーの研究では、赤いユニフォームのチームと対戦すると、普段よりミスが多くなるという報告があります。
そう言えば、マンチェスター・ユナイテッドの愛称は「赤い悪魔」。
団体競技でも、サッカーやバスケットといった接触プレーの多いスポーツの場合は、赤のユニフォームのチームが束になって攻めてくると、守る方はたしかに恐怖を感じてしまいますよね。

ところが、ドイツのヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学のN・ハーゲマンらのグループが発表した論文は、もっと深刻な問題を提起しました。
それは審判の公平性に関する問題です。

この実験で集められたのは、テコンドーのベテラン審判42人。
テコンドーという競技は、グローブとヘッドギアの他に、お腹周りの防具がそれぞれ赤と青に色分けされていますが、彼らが見せられたのは実力がかなり伯仲した男性の試合。
やはり、赤の効果でしょうか、判定結果は赤の選手が優勢と出ました。

次に、これまた実力伯仲の試合を見せられるのですが、種明かしをすると、実はこの映像は先ほどの試合を画像処理して赤と青を入れ替えただけのもの。
つまり、色だけをそっくり入れ替えた同じ試合を見せられたわけです。
従って、注意深く見ていれば、繰り出される技や試合展開が先ほどの映像と全く同じことに気づくはず。
ところが、あろうことか今度は入れ替えられた方の赤の選手、つまり最初の試合の青の選手の方が優勢と判定されてしまったのです。

なんと、熟練の審判であっても、赤いユニフォームの選手の攻撃は有効打に見えてしまうということです。
色によって審判の目が惑わされてしまうとは・・・。
恐るべし、赤の効果!

ちなみにサッカーでは、黒ずくめのユニフォームは反則を取られやすくなることがわかっています。
ユニフォームの色によって公平なジャッジができなくなるというのは困りものですが、色の効果を考えながらスポーツ観戦するのも新しい楽しみ方のひとつなのかもしれません。

ところで、そんな赤には別の効果もあります。
それは食欲増進効果です。
黄色やオレンジにも、この効果があることがわかっています。
なぜかは解明されていませんが、私はサルの時代の名残ではないかと思っています。
サルはヒトとほぼ同等の色彩判別能力を有していますが、エサとなる果実が実をつけた時に、それが食べ頃かどうかを知る手がかりが色だったのではないでしょうか。

一度、スーパーのお菓子売場を覗いてみてください。
商品の陳列棚は赤、黄色、オレンジの洪水になっていますよね。
1980年、その陳列棚に革命を起こした商品がありました。

ポカリスエットです。
青一色のパッケージは、最高のキャッチ・アイ効果をもたらしたのです。
これを境に、スーパーの棚はどんどん色彩豊かになっていきました。

でも、飲食店の看板などは今でも赤、黄色、オレンジをベースにしていて、寒色系の看板はほとんど見かけません。
私たちの行動は、無意識のうちに色に左右されていることがお分かりいただけましたでしょうか。
だから、夕方になると「赤ちょうちん」に誘われてついフラフラと暖簾をくぐってしまうのも、すべて赤色の魔術のなせる技。
決して私の意志が弱いせいではないのです。

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