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5☆s 講師ブログ

情けは人の為ならず

最近、芸能人が出演するクイズ番組がよく放送されています。

俗に“高学歴”と呼ばれるタレントやお笑い芸人が、様々なクイズに答えて、その意外な博識ぶりを披露しています。
でも、本来の職業がタレントやお笑い芸人なら、なぜ本業で名を成そうとしないのでしょうか。

プロのほうでは食えないので、セミプロの方で荒稼ぎしているというのは、私にはなかなか理解しにくい話です。

さて、そんなクイズ番組に出てきそうな問題です。
諺の「情けは人の為ならず」の意味は何でしょう?
たいした難問ではありませんよね。
他人に情けをかけることは、「その人の為にならない」という意味ではありません。
情けをかけると、「やがて良い報いとなって自分に返ってくる」というのが正解です。
わかりやすく言うと、「将来の自分の利益の為に他人を助ける」ということです。
「常識だろ!」というお叱りの声が聞こえそうなので、早速本題に入ります。
今回は、諺の話ではなく「脳」の話です。
脳科学のことを連載していた2009年8月に、心理学の『アイオワ・ギャンブリング課題』のことを書きました。
今あなたの前には、裏返しにされたカードの山が四つあります。
あなたは、好きな山から一枚ずつカードを引いてきます。
引いたカードによって報酬がもらえたり、反対に罰を受けたりしますが、以下の四つのパターンがあります。
①大儲け、②巨額の大損、③小さな儲け、④小さな損失 
このゲームの目指すところは、手持ちの残高をできるだけ増やすことです。
ただし四つの山には、有利な山と不利な山があることが伝えられます。
実はこの山には仕掛けが施されていて、二つの山は大儲けカードが10枚くらい続いた後、
必ず巨額の大損カードが定期的に現れるように仕組まれています。
ですので、大儲けが続く山からばかり引いていると、巨額の大損カードが出るために
すべてを失うどころかマイナスになって借金を背負うのです。
一方、残りの二つの山は、小さな儲けが10枚くらい続いた後に小さな損失カードが現れますが、
全財産を失うほどではありません。
つまり、コツコツ地道に稼ぐことが結果的に財産を残すという、まるで人生訓のようなゲームです。
ただし、この実験で調べたいのは、この人生訓をどう思うかの検証ではありません。
何枚くらいカードを引いたらこの法則に気づいて、コツコツと小さな儲けに徹するようになるかということです。
平均すると、だいたい50枚くらいで予感が働き出し、この法則に完全に気づくのは80枚前後だそうです。
ちなみに、アントニオ・ダマシオらの研究によれば、法則には全く気づいていない20枚くらいの段階であっても、
危険な山からカードを引くときには、手のひらの電位に変化が見られました。
人間の体は、脳より先に何らかの危険を察知しているらしいのです。
いずれにせよ、この課題にちゃんと対応できる人は、長期的な損得勘定ができる人ということになります。
ところが、何のためらいもなく、延々と危険な山にチャレンジし続ける人もいます。
事故で脳の一部に損傷を負ったり、脳腫瘍の手術で一部を摘出してしまった人の中に時々見られるそうです。
また、ごく稀にではありますが、そのような特別な事情がないにも関わらず、そうする人もいます。
生まれついてのギャンブラーということでしょうか。
さて、最近の心理学は、脳科学と切っても切れない関係になりつつあります。
科学技術の進歩により、この実験の最中、脳のどの部分が活性化しているのかがわかるようになりました。
すなわち、脳のどの部位が、長期的な損得勘定を司っているかが解明されたわけです。
その部位は、「腹内側前頭前皮質」というところでした。
額の数センチ奥のあたりです。
もしもこの部位の活性化が弱いと、その人は破滅的な一生を送ることになる危険性が高いのです。
素晴らしい研究ですよね。
そのうち、結婚前にこの部位の活性化の検査を受けることが、義務化されるかもしれません。
一方で、もっと面白いこともわかってきました。
寄付行為についてです。

寄付とは自己犠牲の行動ですので、損得勘定とは関係がないと思われてきました。

しかし、アメリカ国立衛生研究所のJ.モルの研究によると、寄付行為のときも全く同じ部位が活性化していたのです。
一体どういうことでしょう。
これは、以下のように解釈するしかありません。
「寄付という行為は純粋な自己犠牲ではなく、長期的に何らかの見返りを期待している行為である」
いや、もしかしたら、自己犠牲自体が将来の何らかの見返りを期待しての行為なのかも知れません。
なんと、諺の「情けは人の為ならず」は本当だったのです。
でも、昔の人は一体どうやってこの脳の活動を見抜いていたのでしょう。
先人の鋭い洞察力には、ただただ驚くばかりです。
ところで、以前『瞬間湯沸器』(15年7月)のブログで怒りのコントロール方法について触れましたが、
実はこの部位が怒りという感情にも関係していることがわかりました。
交通事故で脳を強打してしまった後、性格が一変したケースがあるのです。
それまでは明るく温厚、多趣味で冗談好きだった人が事故後は引きこもりがちになり、
少しでも自分の思い通りにならないことがあるとすぐに激怒するようになったそうです。
運転中に前の車が少しでももたもたしようものなら、窓を開けて大声で怒鳴り散らすなど日常茶飯事。
それでいて、知能や記憶は全く問題ありません。
怒りだけがコントロールできなくなったのです。
この人の脳を調べると、なんとこの「腹内側前頭前皮質」が損傷していたのです。
『瞬間湯沸器』で紹介した、怒った時の行動のコントロール法がどうしてもできないという人は、
もしかしたら脳に深刻な傷があるかもしれません。
でも、大丈夫!
あなたが現在ギャンブル依存症で、借金まみれの生活を送っているのでなければ脳に問題はないはず。
と言うことは、怒った時に行動のコントロールができないのは、あなたの“意志”でコントロールしていないだけなのです。
ですので、ぜひ行動のコントロールにチャレンジしてみましょう。
でないと、“脳に傷のある人”という陰口を叩かれるかもしれませんよ。

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