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5☆s 講師ブログ

地震発生確率は大ウソ?(1)

2024年元日、正月気分を一瞬で吹き飛ばす大災害が起きました。
能登地方で発生した震度7の地震は、200人を超える犠牲者を出す大惨事となりました。
今さらながら、日本が「地震大国」であることを思い知らされる出来事でした。

でも、今最も心配されているのは南海トラフ地震の方。

2018年2月、文部科学大臣を本部長とする地震調査研究推進本部の「地震調査委員会」は、今後30年以内の南海トラフ地震の発生確率を、それまでの「70%程度」から「70~80%」に引き上げました。
南海トラフ地震は切羽詰まった状況にあると、改めて世間に喧伝したわけです。
ところが、この地震調査委員会のメンバーで地殻変動学者の名古屋大学教授・鷺谷威は、この数値に異論を唱えます。

鷺谷は、南海トラフ地震の確率だけ“えこひいき”されていると言います。
実は、南海トラフ地震の予測数値の算出方法は他と全く違います。
この問題を粘り強く追い続けた東京新聞記者の小沢慧一が、その著書『南海トラフ地震の真実』の中で、地震発生確率を算出する方法のいい加減さを暴いてしまいました。

一般に、地震の発生確率というのは「単純平均モデル」を使って求めるのですが、なぜか南海トラフ地震だけは「時間予測モデル」という特殊なモデルを使っています。
だから、高い確率が出るのです。

では、他の地域と同様に「単純平均モデル」を適用するとどうなるでしょう。
なんと南海トラフ地震の確率は、他の地域と同じ「20%程度」になってしまいます。
鷺谷らは早速この事実を上層部に伝え、見直しするよう検討を迫りました。
ところが、他の委員たちからの猛反対に遭います。

その詳細な経緯は後述するとして、「時間予測モデル」とは一体どんなものかおさらいしておきましょう。
深い海溝では、太平洋プレートが一定の速度で地中に沈み込んでいます。
すると陸地側のプレートも、それに引き摺り込まれる形で沈み込みます。
その境目の部分に歪みが蓄積していくのですが、歪みが限界に達した時点で陸地側のプレートが一気に跳ね上がります。

これが「海溝型地震」です。
このメカニズムは東日本大震災の時にテレビや新聞で何回も報道されましたので、知らない人はいないといってもいいほど有名です。
海溝型地震が発生すると陸地は一旦隆起しますが、その後陸地側プレートは再び太平洋プレートに引き摺り込まれていくため、地震により隆起した陸地も再び沈み込み始めます。

この時の沈み込み量を毎年一定と仮定すれば、過去の地震で隆起した量を計測することにより、次の地震の発生時期と大まかなマグニチュードの大きさが予測できるはず。
これが「時間予測モデル」です。

高知県の室津港のデータがあるので見てみましょう。
1707年の宝永地震の隆起量は1.8メートル。
それから約150年後の1854年の安政地震では1.2メートル。
そのまた約90年後の1946年の昭和南海地震では1.15メートル。
横軸に時間、縦軸に隆起の高さを取ると、階段状のグラフができ上がります。

そして、地震が発生した点を線で結ぶと、右肩上がりの綺麗な直線が描けます。
このグラフから、次の大地震が2034年頃に発生することがわかります。
これを見る限り、「時間予測モデル」は完璧なように思えます。

ところが、このモデルには致命的な問題がありました。
過去の隆起量のデータは、室津港の他にも千葉の南房総と鹿児島の喜界島のものが残っていますが、困ったことにどちらも地震のサイクルが一直線にならないのです。
つまり、室津港以外のデータには全く法則性が見出だせないのです。

「時間予測モデル」は、室津港のデータを大前提にしています。
もし、そのモデルが間違っているとなると、南海トラフ地震の予測自体がデタラメということになってしまいます。
地震調査委員会は窮地に陥りました。

そこで委員会は、急遽「室津港説」を補強するデータをかき集めます。
結論を変えたくないので、なりふり構わずモデルの正当化に走ったわけです。
ただ、委員会は明らかにやり過ぎました。

なんと、無理やり「時間予測モデル」を全国に当てはめて、「全国地震動予測地図」なるものを発表してしまったのです。
この地図はスマホで検索すれば簡単に見られますが、南海トラフ沿いの地域は、危険度が極めて高いことを強調するために真っ赤に塗り潰されています。

しかし一方で、このモデルに疑問を抱く学者たちも黙っていません。
東京大学名誉教授のロバート・ゲラーが、驚愕の事実を発表します。
1979年以降、実際に10人以上の死者を出した地震の震源地を調べたところ、全ての地震がリスクが低いとされる地域で起こっていると指摘したのです。

2016年に起こった熊本地震は、「海溝型地震」ではなく「活断層地震」ですが、布田川断層帯の30年発生確率はなんと「ほぼ0~0.9%」でした。
この矛盾を追及された地震本部は、苦し紛れにこんな言い訳をします。
「『やや高い』に分類される活断層である」

どういうことでしょう?
発生確率が「ほぼ0~0.9%」と言われて、「やや高い」と感じる人が一体何人いるでしょう?
ましてや、60%とか70%という数字を見せられた後での「ほぼ0~0.9%」ですよ。
「ほとんど起きない」と思うのが、普通ではないでしょうか。

現に熊本県は、「ほぼ0~0.9%」という数値を大々的にアピールして企業を誘致することに成功していました。
2018年の北海道胆振東部地震で被災した札幌市や、苫小牧市も事情は同じです。
今回の能登半島地震の確率はそれより少し高くなっていますが、それでも「1~3%未満」です。
この「全国地震動予測地図」を見る限り、南海トラフ地震に比べて非常に発生確率の低い地域でばかり、立て続けに大地震が起こっているように見えます。

「時間予測モデル」に対する、世界的な評価はどうなっているのでしょう?
実は、アメリカのカリフォルニア州サンアンドレアス断層の研究で、「時間予測モデル」は完全に否定されていました。
要するに世界の地震学会において、このモデルは室津港のケース以外全て大ハズレの、「使えないモデル」という認識が一般的なのです。

ところが、調査委員会に対して鷺谷らがハズれたケースをいくら提示しても、委員会は「当てはまらない事例」のワンノブゼムに過ぎないとして一蹴するのでした。
おかしいですよね。
だって、「当てはまらない事例」がヤマほどあるのに、「当てはまる事例」は世界でたったひとつしかないのですよ。

当然、学者たちも黙っていません。
特にプレート型地震の専門家が集まる「海溝型分科会」では、「時間予測モデル」に関する懐疑論が沸き起こります。
分科会の問題提起を受け、ついに上部組織に当たる合同部会でも議論されることが決まりました。
いよいよ、南海トラフ地震の発生確率が見直される時が来たのです。

小沢は情報公開請求制度を利用して、2012年12月の合同部会の資料を入手しました。
するとそこには、文科省の驚くべき提案が記されていました。

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