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5☆s 講師ブログ

メディアの闇(4)

放送利権の恩恵に預かっていたのは政治家だけではありませんでした。
官僚もまた然り。

田中の右腕として活躍した郵政官僚の浅野賢澄は、その功績が買われて事務次官に出世します。
67年からの3年間で35のテレビ局に予備免許を与えるという、UHF局の第二次大量免許交付を担当したのが浅野でした。

でも、予備免許の争奪戦はあまりに露骨な接待合戦になることが予想されたため、批判を恐れた在京の民放局は表だった政治工作をすることができませんでした。
そこで、裏工作を担ったのが系列の新聞社。
結果、郵政記者クラブにはブロック紙も含めて50名以上の記者が登録されることになります。

世に言う「波取り記者」の誕生です。

彼らの肩書きは一応「記者」にはなっていますが、記事は一切書きません。
なぜなら、彼らの仕事は政治家や官僚を接待することだからです。
記事は書かなくても、裏工作のためには「記者」という肩書きが必要でした。
それは「取材費」という名目で接待費を落とせるからです。

「取材」である限り、明らかな「接待」であっても警察や検察は手を出せません。
「取材」とは、接待を覆い隠すために新聞業界が編み出した「魔法の杖」であり、波取り記者はその杖を駆使する「魔法使い」でした。

このような裏接待が合法的に認められている業界は、新聞社だけです。
残念ながら、これも間違いなく日本の“ガラパゴス”ジャーナリズムの一面です。

新聞各社が熾烈な接待合戦を繰り広げた結果、とんでもない異常事態が発生します。
UHF局の免許交付を受けた35局のうち、フジテレビの番組供給率が50%以上という局が14局を占めました。

なんと、フジが一瞬にして全国ネットを構築したのです。
この功績により、浅野は退官後にフジテレビの副社長に天下りします。
実に分かりやすい構図ですよね。
まさに電波利権恐るべし。

このようにして、U波解放第一ラウンドはフジの圧勝に終わったわけですが、これに対し猛烈な巻き返しを図った会社がありました。
テレビ朝日の前身のNET(日本教育テレビ)です。
この時NETが取った戦略は、地方の「政商」とタッグを組むという、およそジャーナリズムとはかけ離れた手法でした。

札幌トヨペットなど、北海道有数の企業グループの総帥である岩澤靖と手を結んだのは、当時NETの技術局長の職にあった高橋義治。
高橋はU波を変換できるコンバータの特許を持っていたことから、岩澤と組んで専用機器の製造・販売を開始します。
これがとてつもない儲けを生みました。

一方の岩澤は、北海道テレビ放送(HTB)の社長に収まり巨額の資産を築きます。
後に、高橋の次男は岩澤の次女と結婚するのですが、日本航空の一平社員に過ぎない若者の結婚式に、岩澤と縁の深い福田赳夫、三木武夫、石田博英といった大物政治家がズラリと顔を揃えます。

この若者こそ、誰あろう後にイ・アイ・イ・インターナショナルの社長として全国に名を轟かせる高橋治則。

テレビ業界に参入したことで大金を手にした岩澤の方は、株の仕手戦にグループ企業の金を湯水の如く注ぎ込みます。
この時岩澤の指南役を務めたのが、誠備グループの加藤暠。

バブル期に新聞を賑わせた超大物たちの名前が次々に登場します。
しかし、不動産投資が失敗したため、札幌トヨペットは81年に簿外債務の総額が400億円あることを公表します。
そのうちの140億円はHTBのもの。

バブルに関しては、政府の政策が失敗した結果だとメディアは批判しますが、実際のところバブルで暗躍した闇の紳士たちの多くは、メディア関係者の“お友達”でした。
テレビ局と政治家の腐れ縁が、あの狂乱バブルのルーツの一つを形成していたとは実に興味深い話です。

メディアが、太平洋戦争に関する自らの報道を総括できない理由は、自分たちが戦争を煽る立場にいたからですが、この構図はバブル報道に関しても同じと言えるかもしれません。
メディア業界が抱える闇は、私たちが想像する以上に深いようです。

「ジャーナリズム」とは、一体何をいうのでしょう?
私たちが今まで「ジャーナリズム」だと思っていたのは「正義のペン」ではなく、利害関係者に忖度しまくるメディア業界特有の「ムラの論理」でした。

2023年に明るみに出た、芸能事務所の元社長による少年への性加害事件により、この身勝手な「ムラの論理」は全国民が知るところとなりましたが、驚くべきことにメディア業界はまだその事実に気づいていません。

元社長の事件がようやく報道され始めた頃、テレビ局に所属する社員コメンテーターが、ワイドショーで「この問題に関して、我々に石を投げる資格はあるのか?」という発言をしました。

これはとんでもない間違いです。
なぜなら、メディアはもはや石を投げる側ではなく、共犯者として石を投げられる側にいるからです。

第三者委員会を設置して過去の対応状況を全て検証し、釈明記者会見を開かなければならないのは、芸能事務所ではなくメディアの方なのです。

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