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5☆s 講師ブログ

醤油とトリチウム(3)

ALPS処理水の放出に関して、驚天動地とも言うべき論説がありました。

「科学を隠れ蓑に使うな」という記事が掲載されたというのです。
なんと、科学は真実を覆い隠す「紛い物」にされてしまったのです。

おそらく、オカルト雑誌の類いだろうと思っていたら、大手新聞社の、しかも社説だというではありませんか!
新聞は何を書いても許されるのでしょうか。

その後、別の大手新聞社のWEBサイトには、「エビデンスがないと駄目ですか?」という記事が掲載されました。
ダメに決まっているではありませんか!

エビデンスのない論説は、「社会科学」ではなく「文学」です。
およそ新聞記者が書く記事ではありません。
そもそも、マスメディアの記者に「理系」の人間は何人いるのでしょう。

記事を書くには多角的視点からの検討が必要だといいながら、科学知識ゼロの“ド文系”記者ばかりが目立っているように見えます。

メディアの問題はさておき、多田将はこの本の中で福島第一原子力発電所の事故と、チェルノブイリ原発の事故との決定的な違いについても説明してくれています。
福島の場合はチェルノブイリと違い、原子炉の核分裂反応の暴走は起こっていません。
核分裂反応そのものは、ちゃんと停止することができたのです。

でも、停止後も核分裂によって生じた放射性物質が原子炉内に残っており、それが放射線を出し続けていました。

放射線の熱量は発電に利用できるほどではありませんでしたが、放っておくと「塵も積もれば」で膨大な熱量になってしまいます。
だから、冷却する必要があります。

ところが、津波で電源を喪失していたため、冷却に失敗してしまったのです。
そのため、「チリツモ」の熱によって原子炉内が加熱され、燃料はじめ炉心部分が溶けてしまい、所謂「メルトダウン」の状態になってしまったというわけです。

つまり、放射線の作用で炉心が溶けたのではなく、融点を超えるほど加熱されたために炉心が溶けたのです。
そういう意味では、放射線の持つ「チリツモ」エネルギーの大きさを改めて知らされる出来事ではありました。

放射線のエネルギーが、「塵も積もれば山となる」という事例は他にもあります。
それは地熱です。
火山の地熱は35TW程度の熱量を持つと言われ、熱の逃げ場がない地球の中心部分では、金属でさえドロドロの液体状に溶けています。

地熱の発生源はいくつかありますが、半分程度は放射性同位体の崩壊熱だそうです。
実は、私たちが温泉を楽しむことができるのは、放射線のエネルギーのおかげなのです。

しかも、ラドン温泉やラジウム温泉は、放射性物質が含まれていることを「売り」にして集客しています。
ラジウムはウランがラドンに至るα崩壊の途中段階の放射性同位体ですが、微量の放射線は私たちの免疫能を刺激し、人体に元々備わっている自然治癒力を活性化してくれています。

鳥取県の三朝温泉の湯には、1リットル当たり9千ベクレルのラドンが溶け込んでいるそうです。

私たちが「いい湯だな」と深呼吸した瞬間に、結構な量の蒸発したラドンを吸い込んでいるのです。

普段私たちが呼吸している空気の中にも、放射性同位体はたくさん含まれています。
宇宙線として飛んでくる放射線の大部分は大気が防いでくれていますが、全てカットできているわけではありません。
ですので、地上にも結構な量の放射線が降り注いでいます。

地面からも放射線は出ています。

日本は火山の多い国ですが、火成岩の一種である花崗岩にはカリウム、ウラン、トリウムなどの放射性同位体が比較的多く含まれています。

そのため、花崗岩が地表近くにある地域では、地面からの放射線を強く受けることになります。
花崗岩の一種である御影石は、神戸など関西が主な産地ですので、関西地方に住む人は関東の人より多くの放射線を浴びていることになります。

さらに、私たちが普段食べている食べ物の中にも、放射線同位体が含まれています。
世界と比較して日本人の放射線摂取量が多いのは、海藻などの海産物を多く食べているからだそうです。

食品に関しては、逆に放射線を利用しているケースもあります。
例えば、ジャガイモの発芽を止めるために、γ線照射の処理を行っているところもあります。

特に香辛料に関しては、殺菌・殺虫を目的に世界中でγ線照射が行われています。
激辛好きの人は、この事実を知っているのでしょうか?
放射線は、すでに私たちの生活の中に深く入り込んでいるのです。

ところで多田は、今回のALPS処理水放出を非難している国に対して、強い憤りを感じると言います。

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