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5☆s 講師ブログ

東洋人と西洋人(2)

アメリカ人やカナダ人に「属性」や「好み」を質問すると、他者との違いを過度に強調する答えが返ってくるそうです。
それだけ自己顕示欲が強いのでしょう。
「自己評価尺度」を聞くと、ほぼ全員が「自分は平均より上」と答えます。

一方、東アジア人ですが、正反対に自分を低く評価する傾向があります。
「謙虚」を重視する文化の影響と捉える説もありますが、回答の匿名性が保証されている実験でも同じ結果が得られていることから、この説は否定してもいいでしょう。

「個人目標」や「立身出世」については、西洋人は関心が高いのに比べ、東アジア人はそれほどでもありません。
ニスベットは、東アジア人は個人的な成功よりも集団目標や協調的な行動への関心が高く、調和的な社会関係を維持することを優先して考える傾向があると分析しています。
「出る杭は打たれる」という諺がありますが、これは個性に対する社会の偏見を表現した、アジア特有の諺なのだそうです。

オランダの国際ビジネススクールの教授チャールズ・ハムデン=ターナーらが、世界各国で開催している中間管理職を対象にしたセミナーのアンケート結果も、ニスベットの分析を裏づけるものです。
このセミナーは参加者総数が1万5千人という大規模なもの。

まずは「仕事」についての質問です。
「どちらのタイプの仕事が好きか?」

答えは以下の2つから選ばなければなりません。

①個人の独創性が奨励され、それを発揮できる仕事
②特定の個人に特権が与えられることなく、全員で一緒に働くことのできる仕事

①を選んだ人が多かったのは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、スウェーデンなどで約90%を占めています。
これは「チーム力」よりも「個人の力」を重視する考え方です。

ところが、日本やシンガポールでは①を選んだ人は50%にも達していません。
この結果も何となくわかりますよね。

ところで、このアンケート調査では興味深い新たな発見もありました。
ドイツ、イタリア、ベルギー、フランスなどの国が、両者のちょうど中間に位置する結果となったのです。

つまり、東アジアを一方の極に置き、もう一方の極にプロテスタントかつアングロ=サクソン文化の影響が強い国を置くと、ベルギーやドイツなど地中海諸国は両者のちょうど中間に位置していることになります。
一口に「西洋人」と言っても、中身は結構違うのですね。

十把一絡げに、「欧米」と呼ぶのは考えものかもしれません。

「企業」の捉え方に関する質問でも面白い結果が出ています。

①企業とは仕事を効率的にこなすためのシステムである。従業員はそのために雇われており、自分が行った仕事に応じた賃金の支払いを受ける。

②企業とは人々が集まって共に働く集団である。従業員は仲間や組織と社会関係を築いており、企業の仕事はそれらの社会関係に依存している。

①を選択したのはアメリカ人で約75%で、オーストラリア、イギリス、オランダ人では50%以上。
ところが、日本人とシンガポールでは1/3以下しかいませんでした。

この結果について、ニスベットはこう解釈しています。
「西洋人にとって企業とは、別々の機能を発揮する人が集まった原子論的なモジュールの社会である。一方、東アジアでは企業自体がひとつの有機体と考えられている」
以上を踏まえて、東アジア人の特徴はこんな風にまとめられています。

「東アジアでは自己にとっての目標というのは、他者より秀でることや個性的であることではなく、集団の目標を達成するために何らかの役割を果たすことにある」

なるほど。
だから東アジアでは、所属する集団に適応することが最優先課題になるのですね。
この話を聞いて思いついたことがあります。

ニスベットの言う西洋人の「別々の機能を発揮する人の集合体」という概念は、まさに今流行りの「ジョブ型人事制度」にピッタリ当てはまりますよね。
ということは、日本人の仕事観や企業観を西洋型に変えない限り、「ジョブ型人事制度」はうまく機能しないということになります。

ジョブ型人事制度を成功させるには、今までの「素人でもチームの一員として貢献できるところがある」という考え方ではなく、「各分野のプロ職人が集まるチーム」に変えていく必要があります。
口で言うのは簡単ですが、果たしてそんなことはできるのでしょうか。

そもそも「プロ職人」と言ったって、日本では「企業内専門職」を指します。
他の企業で通用するかどうかは誰にもわかりません。
グローバル化が叫ばれる中、その程度の能力で果たして機能するものでしょうか。
不安ですよね。

だから、いきなり西洋型の「ジョブ型人事制度」を導入しても、運営は難しいと思うのです。
「ジョブ・ディスクリプション」がキチンと書かれていればなんとかなるだろうというのは間違いです。

本家アメリカのジョブ・ディスクリプションだって、例えば営業職なら「営業及びそれに関連する業務」としか書かれていないそうです。
システムを変えたらうまくいくわけではないのです。

かつて日本企業は、挙って「成果主義」を導入して大失敗したことがあります。
「成果主義」こそ、プロテスタントかつアングロ=サクソン文化の典型ではありませんか。

同じ過ちを繰り返さないためにも、私たちが今しなければならないのは、チーム員の関係性に十分配慮した、東アジアとプロテスタントかつアングロ=サクソンのちょうど中間をいく、所謂「地中海諸国型」の人事制度を模索することではないでしょうか。

こんな風に書くと、「具体的にはどんな制度ですか?」という質問が飛んできそうです。
自分の頭で考えようとせず、他人に答えを求めるその姿勢こそ典型的な東アジア型ですよ。
まずはそのことを自覚するところから始めなければなりません。

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