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5☆s 講師ブログ

日本の財政は破綻するのか?(2)

日本が世界最大の債権国、つまり「金貸し大国」であるということは、日本から海外に資金が流出していることを意味します。
流出先のトップはアメリカ(200兆円)ですが、2位はケイマン諸島(66兆円)。

おそらく、日本の金融機関がケイマン諸島を経由して、様々な「デリバティブ商品」に投資しているのでしょう。
大丈夫なのでしょうか。
他人事ながら気になります。

日本が債権国であることは、決して好ましいことではありませんが、そのことについては後で話すとして、もう一度デフォルトを起こす国債の3つの条件の話に戻りましょう。
3つの条件は以下のものでした。

①国内投資家が買ってくれない
②海外投資家が買ってくれない
③自国中央銀行が買ってくれない

今、①と③はクリアできましたよね。
残りは②の海外投資家だけです。
日本国債の場合、ほとんどが国内で消化されてしまうため、海外の投資家は買いたくてもなかなか買えない状態です。

そのため、海外投資家が保有している分は8%ほどしかありません。
つまり、外国から借金している額は非常に少ないのです。

時々、国の借金を「家計の借金」に例える人がいますが、それは典型的な経済学のド素人が犯す過ちです。
どうしてもそのたとえを使いたいのなら、よその家から借金しているわけではなく、家庭内で借金が発生していると考えてください。

つまり、夫が妻から借金している状態です。
その状態で夫が妻に借金を返せなくなったとしたら、果たしてその家計は自己破産の申請をするでしょうか。
「家計の借金」というたとえ話が、いかに不適切かお分かりいただけましたか。

ところで、②の海外投資家が国債を購入する際の判断基準は、「価格」すなわち「利回り」だけではありません。
その通貨が、国際的な金融市場で取引されているかどうかということが重要になります。
これを「通貨の信任性」と言います。

一部の新興国のように、国際的にほとんど取引されていない通貨は「ソフト・カレンシー」と呼ばれ、その国の国債が買われることはありません。
日本の「円」は、米ドルやユーロに次ぐ、バリバリの「ハード・カレンシー」です。
他に英ポンド、スイスフラン、カナダドルなどが「ハード・カレンシー」ですが、国際的に信任されているからこそ「円建て」で国債が発行できるのです。
でも、いくら「円」の信任性が高いと言っても、投資対象にするにはあまりに利回りが低すぎますよね。

なぜ、こんな低利回りの日本国債を、海外投資家はわざわざ買おうとするのでしょう。
それは、「投機対象」としてではなく、「安全資産」として魅力を感じているからです。
国内の金融機関が国債を買い入れる理由も、担保として使いたいからでした。
これも、価値が下落しない「安全資産」でなければ成立しない話です。

いかがですか?

日本国債のデフォルト確率がいかに低いか、お分かりいただけましたか。

もっとも、金融論の世界では、国債の「破綻確率」は簡単に計算できます。
「CDS」(クレジット・デフォルト・スワップ)のレートを見ればわかるのです。

CDSとは債権等の発行体の信用リスクを対象とするデリバティブの一種で、デフォルトに備えた「保険」と考えると理解が早いでしょう。
直近の日本国債の5年CDSは、0.00188%。
金融工学の理論で計算すると、日本国債が5年以内に破綻する確率は1%未満です。
財政破綻よりも、大地震の方を心配すべきではないでしょうか。

日本の財政破綻を盛んに喧伝して、国民の不安を煽り続けている新聞記者は、もっと真剣に経済学を勉強してから記事を書くべきです。
経済学のリテラシーが低いから、財務省の役人にいいように利用されるのです。

財務省では、国の予算が決まると、課長や課長補佐が手分けして新聞各社にレクチャーを行います。
そして翌日は、どこの新聞がどれくらい言うことを聞いたかについての品評会が開かれます。

現代の言論統制は、支配する側の権力によって行われるのではありません。
支配される側の無知によってもたらされるのです。

2021年8月に、国の借金が1,220兆円に上り、国民一人当たりに換算すると992万円に達したという共同通信の記事がヤフーニュースにアップされました。
驚くべきことに、この記事のコメント欄に、圧倒的多数の読者が「国民の借金」として換算することは誤りだと投稿しました。

その後、元ロイター通信記者による同様の記事がアップされた時も、コメント欄でフクロ叩きにされていました。
ヤフーニュースは、記事よりもユーザーコメントの方を先に読むべきです。
今や、記者のリテラシーレベルが、読者によって採点される時代が来ているのです。

これからの新聞記事は、全て「署名記事」にするべきではないでしょうか。
そうすれば、何という名前の記者が、どれだけの経済知識を基に、どのような記事を書いたかという履歴が永久に残ります。
名前を伏せた状態で記事を書くというのは、怪しいSNSと同じレベルです。
自分が書いた記事に責任が持てるのなら、堂々と名前が出せるはずです。
それがジャーナリストの矜持ではないでしょうか。

さて、日本が財政破綻する危険がほとんどないことがわかって一安心と言いたいところですが、では今のままでいいのかと言うと決してそうではありません。

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