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5☆s 講師ブログ

寿命遺伝子

今回のネタ元は、寿命研究に関する分子遺伝学の第一人者、白澤卓二の著書です。
寿命や老化のスピードに影響を与える遺伝子はいくつか見つかっていますが、私たちの寿命が全て遺伝で決められているのかというと、そういうわけではありません。
一卵性双生児の遺伝子は全く同じですが、双子の寿命は同じではありませんよね。

白澤によれば、老化に関する遺伝的要因は25%に過ぎないそうです。
つまり、生まれたあとの環境や、本人の生活習慣によって左右される部分の方がはるかに大きいのです。
やれやれ、まずは一安心。
でも、25%とは言え、遺伝的要因も気にはなります。

遺伝子は、どのような形で寿命に関係するのでしょうか。
実は、遺伝子が直接的に寿命を左右しているのではなく、摂食や活性酸素に関係することで間接的に寿命に影響を及ぼしているのです。
まずは、Sir2
この遺伝子は、DNAが傷つくのを防ぐ役割をしていますが、この遺伝子を操作すると寿命の長さを変えることができるそうです。
Sir2の活性を高めたら、寿命は2倍になりました。

もちろん動物実験の話ですけどね。
正確に言うと、Sir2は寿命というよりも老化のプロセスをコントロールしているようです。

最近、メタボの人は、Sir2遺伝子のスイッチがオフになっていることが分かりました。
ということは、食事の量を減らせばSir2のスイッチがオンになり、老化のスピードを遅らせることができるかもしれません。
以前から、ネズミのエサの量を減らすと寿命が延びることがわかっていましたが、問題はどれくらい減らすかです。
白澤の研究によれば、腹七分目がちょうどいいそうです。

食事の摂取量が寿命と関係していることは、もはや疑いようのない事実です。
他にもカロリー制限に関係する遺伝子が、寿命とも関係していることがわかり、eat(イート)遺伝子と命名されています。
あまりにも直接的な名前で驚きますが、食事制限が簡単にできるなら、ダイエット本がこれほど売れるはずありませんよね。

ただ、覚えておかなければならないのは、そもそも人類の歴史は「飢餓」との戦いだったことです。
だから、人間の体というのは、飢餓に耐えられるように進化してきたのです。
ですので、「飽食の時代」というのは、人類が初めて経験する緊急事態です。
この急変に、私たちの体が適応できずに戸惑っている、というのが現状と言えましょう。

ところで、寿命遺伝子の研究でひっぱりダコの生物がいます。
それは、「エレガンス線虫」です。
名前の由来は、姿かたちが優雅だからというわけではありません。
線虫なのでくねくね進むのですが、その軌道が数学のサイン・カーブのようなきれいな曲線を描くため名付けられました。
このエレガンス線虫の寿命を研究することで、人間の寿命の秘密が解き明かされつつあります。
彼らの寿命に影響を及ぼしている遺伝子は3つありました。

1つ目は、daf-2遺伝子。
これは、「冬眠モード」と「通常モード」の切り替えに関係します。
ここに傷があると、冬眠モードに入りやすくなって長生きするのだそうです。
ということは、よく眠る人ほど長生きするということになるのでしょうか。

生化学者の田沼靖一は、daf-2遺伝子はインシュリン受容体と酷似していることから、おそらくカロリー摂取と関係しているのではないかと推測しています。
またもや食事量の問題になってしまいましたね。

他に、daf-2遺伝子はdaf-16遺伝子を抑制する働きがあるのですが、これが傷つくと抑制機能がマヒしてします。
するとどうなるかというと、SOD活性が異常に高まります。

「サプリメントおたく」の人はご存知かもしれませんが、SODとは「スーパー・オキシド・ディスムターゼ」のことで、活性酸素を取り除くという重要な仕事をしています。
つまり、SOD活性が高まって活性酸素が取り除かれると、その分寿命が延びるというわけです。
活性酸素は劇薬みたいなもので、バイ菌などを殺してくれる代わりに、増えすぎると正常な細胞までも攻撃するといった結構な悪さもします。

寿命に関係する2つ目の遺伝子age-1も、活性酸素と関わりがあります。
エレガンス線虫のage-1遺伝子に傷がつくと、寿命は1.5倍に延びるのですが、この時もSOD活性が高まることがわかっています。

面白いのが3番目のclk(クロック)‐1遺伝子。
これを変異させると線虫の生体リズムがゆっくりとなり、脱糞の間隔が広がり1.5倍の長さになるそうです。
ということは、のんびりな人生を送ると長生きするってことになりますかね。

このclk-1遺伝子に構造が酷似したものは、哺乳類でも見つかっています。
エレガンス線虫の変異体に、ヒトのクロック遺伝子を注入してみたら、リズムも寿命も元に戻ったという報告があります。
せっかちな生き方は代謝量が増えるため、活性酸素を多く発生させてしまう可能性があるのです。
以上をまとめると、寿命に関係する遺伝子が、摂食量と活性酸素の除去に関与していることは間違いありません。
ということは、普段から食事の量を減らして、活性酸素の発生を抑えるような生活を心がければ長生きできるはず。

でも、活性酸素の発生を抑える生活とは具体的にどのような生活でしょう。
活性酸素は激しい運動をしたときにも発生しますが、一番発生するのはストレスを感じた時です。
よく眠ったり、のんびりした生活習慣が長寿と関係あるのは、ストレスを少なくすることで活性酸素の発生を抑制しているのかもしれません。

そうは言っても、現代社会にあっては、ストレスを減らすことは食事量を減らすより難しい課題です。
だから、とりあえずは腹七分目とまではいかなくても、九分目あたりから始めましょうかね。

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