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5☆s 講師ブログ

脱税の世界史(1)

学生時代、世界史は大嫌いな科目のひとつでした。
ひたすら年号を暗記する行為は、苦痛以外の何者でもありませんでした。
西暦何年に何が起こったかを一生懸命覚えたところで、それが私の人生にとって一体何の役に立つというのでしょう。

そんな世界史嫌いの私が、あっという間に引き込まれたのが元国税調査官、大村大二郎の『脱税の世界史』。
税金というキーワードで歴史を読み解くという、実に面白い本です。

例えば、中世ヨーロッパの国王などは絶対王政を敷くくらいですから、さぞや財政力があったのだろうと思いきや、その経済力は非常に脆弱なものだったそうです。
この時代に税金を取り立てていたのは、意外なことに国王ではなく教会でした。

カトリックのキリスト教徒は、全員「教会税」なるものを払わなければなりませんでした。
教会税を納めた後で、国王が税金を取り立てるという順番だったため、国王としても高額な税金を課すことはできません。
やむを得ず、主たる税収は直轄領に頼ることになりますが、中世ヨーロッパでは教会や貴族、諸侯なども自分の領地を持っていたため、国王の直轄領といっても決して広いものではありませんでした。
戦争で財政が苦しくなると、直轄領を売り払ってしまうこともあったようです。
そういう意味では、国を事実上支配していたのは、国王ではなく教会だったとも言えます。

教会税の代表的なものは「1/10税」で、収入の1/10を税金として納めるというものでした。
今で言うと、税率10%の所得税ということになりますかね。
累進課税という考え方が生まれるずっと前のことなので、金持ちなら余裕で払えますが貧しい人々にとってはかなり負担の重い税金です。

この税制の起源は『旧約聖書』にありました。
『旧約聖書』はもともとユダヤ教の聖典ですが、同時にキリスト教やイスラム教の聖典でもあります。
そこには、古代ユダヤ人が収穫の1/10を教会に献納していたことが記されています。
この1/10税が義務として明文化されたのは、585年のフランク王国の教会会議。

しかも、それだけではありませんでした。
税金を納付しない時の罰則まで決められてしまったのです。
それは、教会への立ち入り禁止や破門、さらには家屋の接収といったかなり厳しいものでした。

一方、そうして集められた税金の使い道はというと、次の4つに分けられます。
①現地教会の運営費
②建物の費用
③慈善事業の費用
④司教の収入

要するに、司教に手当てを渡してしまえば、残りは全て教会が一人占めできるということです。
そこに大きなビジネスチャンスが生まれました。
教会のない地域に教会を建てれば、税金の徴収権を手に入れることができるからです。
貴族など地元の有力者が競って教会を建設したため、果ては縄張り争いまで勃発する始末。

でも、お金持ちにとって教会を建てることは簡単なことですが、税金を徴収するのはかなり面倒な仕事ではあります。
そこで彼らは、1/10税を徴収する権利を、債権のように「徴税権」として売り出します。
何とも優れたビジネス感覚ですよね。
この債権は結構人気があったようで、シェークスピアも老後のために購入していたそうです。

やがて全ての地域に教会が建てられてしまうと、彼らの目はヨーロッパ以外の地に向けられることになります。
もちろん、ローマ・カトリック教会としては「教会税が目当て」とは口が裂けても言えないので、「キリスト教の布教」を大義名分にして未開の地への進出を後押ししました。

15世紀になると大航海時代が始まります。
ヨーロッパ人がアジアに進出した主たる目的は、香辛料を手に入れることとされていますが、実は「キリスト教の布教」という隠れ蓑の元で、教会税を搾取するという狙いもあったのです。
だからこそ、スペインとポルトガルは世界中に植民地を建設したわけです。
特に新大陸を巡っては、両国間での諍いも度々起きていました。

そこで1494年、「アメリカ大陸は、スペインとポルトガルの二国で半分ずつ分ける」という『トルデシャリス条約』が結ばれます。
西経46度37分を境にして東側はポルトガル、西側はスペインに属するというとんでもない条約をローマ教皇が認めた背景には、未開の地に教会を建てれば信者が増えるし、それより何より税金という名の上納金が増えるという思惑がありました。
スペインとポルトガルによる植民地搾取の背中を押していたのは、まさにローマ教皇の強欲に他ならなかったのです。

スペインはこれを拡大解釈し、現地人のインディオをキリスト教に改宗させれば、現地の徴税権を与えるという決まり事まで作ってしまいます。
こうなると、収奪と殺戮に歯止めをかけるのはもはや不可能。
鉱山開発に動員されたインディオは奴隷労働を強いられた上、採掘された金銀は全てスペインに運ばれました。
わずか200年の間に、インディオの人口の90%が消滅したと言われています。

原住民を使い捨ての奴隷にしてボロ儲けした悪党どもも問題ですが、その悪党の上前を發ねるために、「キリスト教の布教」という大義名分を与えた方も問題です。
宗教とは、人間の欲望を戒めるものだと思っていましたが、どうやらそれとは真逆の存在のようです。

実は、このローマ・カトリック教会の教会税を巡っては、大航海時代以前にも一悶着ありました。
なんと、教皇が誘拐されるという大事件が起こっていたのです。

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