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5☆s 講師ブログ

臨終の言葉

胃がん患者は、末期になると体がやせ細るそうです。
日々細くなっていく自分の手足を見ていると、どうしても心までやせ細ってしまう人が多いといいます。
しかし、稀にではありますが例外もあります。

ホスピス医の柏木哲夫には、ひとつ気がかりなことがありました。
54歳の、肝臓がんの女性患者のことです。
黄疸が出てから急に衰弱が進んだため、自分自身の体の変化を受け止めかねているのではないかと懸念していたのです。
ところが、ある日の回診で「いかがですか?」と声をかけると、予想もしない言葉が返ってきます。

「先生、お世話になっています。おかげさまで順調に弱っております」

悪戯っぽい微笑みを浮かべながら、そう答える女性。
死に向う自分の病状を「ありのまま」に受け止め、生死を超えた「何か」、あるいは「どこか」を見据えて、人生と穏やかに向き合う姿。
これが、「達観」というものなのでしょうか。
どうすれば、このような心境に達することができるのでしょう。

最近のビジネス界は、「勝ち組」と「負け組」に分類するのが流行りです。
その影響なのか、人生までも勝ち組と負け組に分類しようとする人がいます。
しかし、人生には勝者も敗者もないはず。
人生は、年収や地位といったモノサシで計れるほど単純なものではないからです。

柏木は、こう考えます。
人間はすべて、ある領域では勝者であり、ある領域では敗者であると。
彼の言う「勝者の領域」とは、「ありのまま」の自分になれる時間のことです。

ところが、私たちは仕事の場面となると、「ありのまま」ではいられないことが多々あります。
状況に応じて、様々な役割を演じなければならないからです。
本当は争い事が嫌いな性格でも、競合他社に勝つためには、最善を尽くして戦わなければならない時もあります。
「ありのまま」では、仕事に支障をきたす恐れがあるのです。

これは、仕事だからやむを得ません。
でも、勝者になるための演技を長く続けていると、その鎧甲はやがてプライベートの領域まで侵入し始めます。
もしそうなってしまったら、プライベートはもはや「敗者の領域」です。

現役時代は、それでもまだよいのです。
職場という演技のための舞台がありますから。
問題はリタイア後です。
プライベートが、演技の舞台となってしまうことで生まれる様々な悲劇については、ここで改めて触れる必要はないでしょう。

でも、毎日ビジネスという戦場に出かけなければならない私たちは、一体どうしたらいいのでしょう。
「ありのまま」に振る舞うことは、ビジネスパーソンにとって不可能なことなのでしょうか。

ホスピス医として2,500人を看取った柏木は、『家族の実力』という本の中で、とても興味深いことを述べています。
最期の時を迎えた者が、遺される者と交わす「臨終の言葉」です。
両者がとてもよい関係にある場合、それは決まって3つの言葉に集約されるそうです。

ひとつは「ありがとう」という「感謝」。
次に、「ごくろうさま」という「ねぎらい」。
最後は「ごめんね」という「謝罪」の言葉。

良好な人間関係というのは、最終的にこの3つの言葉に集約されるのかもしれませんね。
ここまで書き進めてきて、私はある事実に気づきました。
それは、メンタル不全者が出るほどギスギスした職場では、この3つの言葉はほとんど聞かれることがないということです。

逆の見方をすれば、この3つの言葉を意識して使っていくことで、良好な人間関係を築くことができるかもしれません。
ビジネスでもプライベートでも、「ありのまま」の自分を取り戻すことができれば、「勝者の領域」を増やすことができるのではないでしょうか。

8歳で母を、10歳で父を亡くしたイギリスの小説家、サマセット・モームはこんなことを言っています。
「世の中には様々な統計がある。その統計の中にはまやかしの統計もある。
しかし、世の中に絶対間違いのない統計がある。
それは人の死亡率が100%という統計である」

人は誰でもいつか必ず死にます。
どんなに沢山お金を稼いでも、あの世にまで持って行くことはできません。
どんなに偉い地位に出世しても、あの世まで持って行くことはできません。

「臨終の言葉」という終着点から現在位置を逆算し、自分の生き方を見直してみることも意味のあることではないでしょうか。
きっと、人生を豊かにすることに役立つと思うのです。

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