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5☆s 講師ブログ

「叱る」より「ほめる」

私が若手社員だった頃を振り返ると、上司からほめられた記憶がありません。
とにかく叱られてばかりいました。
当時は、「叱る」ことこそが指導であり、教育そのものだったのです。
でも、そもそも学習に関していうと、「ほめる」ことと「叱る」ことの、どちらがより効果的なのでしょうか。
専門的な研究では、とっくの昔に答えが出ています。

心理学では「ほめる」ことを「強化」、「叱る」ことを「弱化」と言います。
例えばネズミの迷路実験で、二股の分かれ道で常に右側の通路を選ぶようにネズミに学習させる場面を考えてみましょう。
まずは「強化」、つまり「ほめる」方です。
右側を選ぶと、そこには報酬としてチョコレートが置いてあります。
「えっ?チーズじゃないの?」と思ってしまいますが、ネズミはチーズよりもチョコレートを好むそうです。
次に「弱化」ですが、左側を選ぶと電気ショックという罰が待ち構えています。
さあ、いよいよ実験開始ですが、以下の3つのケースで比較してみました。

A「強化」のみ
B「弱化」のみ
C「強化」と「弱化」の組み合わせ

結果は、だいたい想像つきますよね。
そうです、Aの「強化」のみが最も効果的でした。
つまり、報酬だけが用意されていて罰は一切ない、という方が覚えは早いのです。

さて、問題は第2位です。
第2位は、Cの「強化」と「弱化」の組み合わせでした。

ということは、「弱化」のみ、すなわち叱られてばかりで少しもほめられない、という教育は最悪ということになります。
まぁ、ここまではよく聞く話。

そこらへんのビジネス書にも載っている内容ですよね。

でも2014年に、ハーバード大学のワムスレイ博士らが発表した報告は実に興味深いもの。
この迷路実験を、人間にやってみたというのです。
65人の大学生に、テレビゲームで立体迷路を練習させます。
そして翌日、正解の経路をどのくらい覚えているかをテストしたのです。
この時、被験者は3つのグループに分けられました。

A成功したら報酬金がもらえる
B初めに一定額が与えられるが、失敗するつど減額されていく
C報酬金なし

さあ、グループの成績はどういう順になったでしょうか?
これも、第1位はあなたの予想通りAです。
ここまでは普通。問題は第2位です。
BとCのどちらだと思いますか?
ちょっと比較検討してみましょうね。

Bは先ほどの、「強化」と「弱化」の組み合わせですが、失敗するつど減額されていくとは言っても、最終的に手元にはいくらか残りますよね。
一方、Cは最初からゼロが確定しています。
そう考えるとBの方が相対的に有利な条件のように思えますが、結果はなんとCの「初めから報酬金なし」の方が第2位でした。
どうやら減額されることが「弱化」、つまり罰として働いたようです。
ということは、「報酬と罰を組み合わるくらいなら、最初から報酬などない方がいい」ということになります。

やる気を引き出すためには、ペナルティーは設けない方がいいということが、ここでも証明されたわけです。
部下育成の場面でも役立ちそうな話ですよね。

この実験を紹介した神経科学者の池谷裕二は、さらに英語教育の問題点にも言及しています。
日本の英語教育は、英会話でのコミュニケーションの楽しさを学ぶ「加点法」でなく、テストによる「減点法」であるために、学習者にとって最も重要な自発性が損なわれてしまっているのだと。
なるほど。
街で外国人に道を尋ねられても、身振り手振りでしか答えられない私としては、激しく同意する見解です。

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