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5☆s 講師ブログ

チンパンジー・マネージャー

2015年10月に『チンパンジー・マネージャー』というブログを書きましたが、今回はその姉妹編です。

チンパンジーはヒトに最も近い動物と言われ、「文化」、「道具利用」、「言語(シンボル操作)」、「政治」、さらには心理学の「心の理論」(2013年10月ブログで解説)などの分野で、他のどんな動物よりもヒトに近い能力を示します。

しかし、残念ながらそれらの能力はいずれも萌芽的段階に留まっていて、決してヒトのレベルに達する事はありません。

なぜなのでしょう?

チンパンジーが乗り越えることのできない壁とは、一体何なのでしょう?
それが分かれば、チンパンジーとヒトの違いもわかるはずです。

動物行動学者の長谷川寿一は、とても興味深い見解を示しています。

「何が欠けているかと言えば、それこそがソーシャル・ブレインだった」

ソーシャル・ブレインとは、文字通り「社会脳」のこと。

最近、最も注目されている脳機能の一つですが、辞書によるとその定義は以下のようになります。
「社会的な人間関係を築く上で必要な脳機能のこと」
何だか分かったような、分からないような話ですよね。

そこで、ちょっと遠回りにはなりますが、高次の脳機能の象徴である「知性」について解説しましょう。

ヒトの知性というのは単一のものではなく、様々な種類の知性によって構成されていると言われています。

この「多重知能説」を唱えるハワード・ガードナーによれば、「言語的知性」や「論理数学的知性」などの他に、「空間的知性」など全部でなんと8種類もあるそうです。

その中の「社会的知性」というものが、いわゆる「社会脳」と考えられます。

彼によれば、IQ(知能指数)とはそれら8種類のベクトルの総和と定義付けられますので、それぞれのバランスがとても重要だということがわかります。

会社の中を見渡すと、「頭はキレるが、周りがついてこない」というリーダーが散見されたりしますが、これなどは「論理数学的知性」が突出して高い一方で、「社会的知性」がきわめて低いケースと考えられます。

では、「社会的知性」を高めるにはどうしたらよいのでしょう。

残念ながら学術的な答えはまだ得られていません。
なんとなく「コミュニケーション能力を鍛えなければならないだろうな」ということぐらいはわかりますが、その辺は今後の研究に期待したいところです。

ただその件に関しても、長谷川は実に示唆的な発言をしていますので、再度ご登場願うこととしましょう。

「ソーシャル・ブレインに深く関わる『共感』と『教育』については、野生・飼育を問わずチンパンジーからの証拠はほとんどないと言ってよい」

なるほど、「共感」と「教育」ですか。

チンパンジーには「共感」と「教育」が欠けていたために社会脳が発達することができず、その結果ヒトのように高度な社会を作れなかったというわけです。

確かにヒト社会では、細部にわたる「教育」システムが構築されています。

幼児教育、義務教育、高等教育、そして会社に入れば社員教育。
高度な教育システムを構築することにより、ヒト社会を維持・発展するための決まり事を学んだり、また人類が獲得した様々な知見が一般化されて広く知らしめられたり、後世に継承されたりしてきたわけです。

では「共感」の方はどうでしょう。

「教育」ほどシステム化はされていませんよね。ところで、心理学者の福島宏器によると、「共感」は人間だけに見られるものではないそうです。

例えば、イルカが岸に打ち上げられた仲間から離れようとせず、その結果群れ全体が死んでしまうという現象です。

これは間違いなく「共感」です。
イルカだけではありません。

アカゲザルで行ったこんな実験があります。

まず一頭のサルに「多いエサ」か、「少ないエサ」のどちらかを選ばせます。
このとき「多いエサ」を選ぶと、隣のケージにいる仲間のサルに電気ショックが与えられる仕掛けになっています。

つまり、「多いエサ」を選ぶ度に、仲間が苦しむ姿を見せられることになります。

もちろん「少ないエサ」の時は何も起こりません。
これをしばらく続けたところ、驚くべき結果が得られました。

実験したサルのうち2/3は「少ないエサ」の方しか取らなくなりました。

これは、仲間の痛みを自分の痛みとして感じた、すなわち「共感」したということです。

では、残りの1/3のサルはどうなったかと言うと、エサを全く取らなくなったのです。

エサを取ることができない仲間の気持ちを思いやったのでしょうか。
もしそうだとすると、恐るべき共感力と言わざるを得ません。

しかし、ここで不思議に思うのは、アカゲザルより圧倒的に進化してヒトに近いはずのチンパンジーでは、このような結果が得られないことです。

一体なぜなのでしょうか?

ここからはあくまで私の仮説でしかないのですが、チンパンジーは「論理数学的知性」を発達させる代償として、「社会的知性」に関係する「共感」の能力を退化させてしまったのではないでしょうか。

「頭はキレるが、周りがついてこない」リーダーというのは、もしかしたらこのケースではないかと思うのです。

だとしたら、まさに“チンパンジー・リーダー”。
あなたの会社にもいそうですよね。

でも、安心してください。

解決策はありますよ。

ハワード・ガードナーは、8種類の知性の中のひとつに「感情的知性」というものを上げています。

その定義は「他者の感情を読み取って、自分の感情をコントロールする能力」です。

分かりやすく言うと「相手の感情を推測し、自分の感情をそれにシンクロさせる能力」ということになります。

これこそまさに「共感」ではありませんか!

どうやら「社会的知性」と「感情的知性」は、密接に関係しているようです。

そして偉大なるヒトは、「共感を教育する」こともしてきたのです。

幼児教育や義務教育における「情操教育」がそれです。

でも、高等教育以降となると、その機会はそれほど多くないように思います。

特に、社員教育となるとほぼ皆無ですよね。

あなたの職場の雰囲気がギスギスしているなと感じたら、今一度ヒトとしての基本に立ち返って社員教育における「共感」教育というものを考えてみませんか。

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