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5☆s 講師ブログ

日本の財政は破綻するのか?(1)

国の借金がついに1,220兆円を超えて、GDPの2倍に達しました。
新聞には、「財政破綻を避けるために、今すぐ財政再建に取り組むべきだ」という論評が踊ります。
そのために必要なのは、プライマリー・バランスの黒字化。

だから、たとえコロナ禍であろうとも、早急に歳出削減と増税に取り組む必要があるのだと。

本当でしょうか?
不安に駆られる気持ちはわかりますが、財政破綻が起きたら一体どんなことになるのでしょう。
また、財政破綻が起きる可能性は本当に高いのでしょうか。
今回は、経済学の観点から検討します。

まず、新聞の言う「国の借金」ですが、正確に言うと「中央政府の金融負債」です。
借金を背負っているのは、国民ではなく中央政府です。
なので、財政破綻によって起こる最悪の事態とは、政府が国債を発行して調達した借金を返せなくなることです。
これを「デフォルト(債務不履行)」と言います。
世界各国の信用を一瞬で失う訳ですから、絶対に避けなければなりません。

でも、国債の売買が行われるマーケットでは、デフォルトが起こる前から、危険を察知して国債の買い手がいなくなります。
当然ですよね。
「危ない」と噂される国債なんて、誰も買いたくありませんから。

買い手がいないと、国債の取引価格は暴落します。
例えば残存期間1年、すなわち1年後に元本の100万円が償還される約束の国債が、マーケットでは90万円とか80万円という安値で売られる事態が起こります。
しかし、90万円で買った国債が、デフォルトすることなく1年後に目出度く100万円が償還されると、利回りはなんと11.1%。
リスクを取った甲斐があったというものです。

元本にプラスして利息が払われる国債もありますが、これは「利付国債」と呼ばれます。
要するに、デフォルトする危険性が高い国債は取引価格が下がるので、その分高い利回りが見込めるということです。
マーケットでは国債は利回りで表示されますので、それを見ていればデフォルトする確率がある程度わかります。
では、日本国債の利回りはどうでしょう。
最近の10年ものの利付国債の利回りは、高くても0.1%、低い時は0.005%。
とんでもない低金利ですよね。
金利が極端に低いということは、取引価格が極端に高いことを意味しています。

変だと思いませんか?
新聞が騒ぎ立てている「財政破綻」が本当なら、これほど人気を集めて高値で取引されるはずがありませんよね。

でも、なぜこんな低利回りの国債を、金融機関は競って買おうとするのでしょう。
それは使い勝手がいいからです。
民間企業が金融機関からお金を借りる時は、土地などの担保が必要となります。
でも、金融機関にとっては、不動産を担保として差し出されると、その価値を査定するのがかなり面倒です。

そのため、金融機関同士で資金の貸し借りをする時には、物的担保ではなく国債を使うのが一般的なのです。
つまり、金融機関が利回りの低い国債を買うのは、資産運用というよりは担保として使い勝手がよいからです。
もし、デフォルトする可能性が高いなら、絶対に担保には使えませんよね。

世界を見渡すと、「国の借金」が日本よりずっと少ないのに、デフォルトを起こしてしまったケースは山ほどあります。
つまり、「国の借金」の額がデフォルトの決定的な要因ではないのです。

「新宿会計士」というペンネームの人気ブロガーが、『数字でみる強い日本経済』という著書の中で、過去にデフォルトを起こした国債に共通する特徴を分析しています。
それによれば、デフォルトを起こすには、以下の3つの条件を同時に満たすことが必要だそうです。

①国内投資家が買ってくれない
②海外投資家が買ってくれない
③自国中央銀行が買ってくれない

まず、①についてはどうでしょう。
日本の場合、家計が保有する金融資産の総額は1,900兆円を超えています。
その半分以上にあたる1,000兆円は「現金・預金」。
次に多いのが「保険・年金」等で、こちらは500兆円を超えています。

つまり、合わせて1,500兆円が、銀行や信金、保険会社、年金基金等の「機関投資家」に流れ込んでいるわけですが、機関投資家はただ預かっているだけではダメで、これを運用しなければなりません。

本来であれば企業に貸し付けたり、社債を購入する事で資金を運用するのですが、今は企業も「金余り」状態のため、資金を調達したい企業はそれほど多くありません。
そのため、預金取扱機関の貸出額は、たったの800兆円。

機関投資家としては、それでもまだお金が余っている状態なので国債を購入したいところですが、③の中央銀行である日銀が、巨額の金融緩和の一環として国債を買い占めているため、マーケットでは残った国債の奪い合いが起こっています。
そのおかげで、国債価格がつり上がっているという側面もあります。

日本国内の「金余り」はかなり深刻な状態で、機関投資家はやむを得ず海外に直接投資したり、海外の証券を買ったりしています。
その額なんと1,100兆円。

もちろん、逆に海外の投資家が日本企業に貸し付けたり、日本の株や債券に投資をするケースもありますが、差し引きしても360兆円が海外に流出しています。
今や日本は、押しも押されもしない世界最大の債権国、つまり「金貸し大国」なのです。

日本を「借金大国」だという人は、果たしてこの事実をご存知なのでしょうか?
でも、実はこの「金貸し大国」の方がきわめて問題なのです。

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