株式会社ファイブスターズ アカデミー

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5☆s 講師ブログ

自分の「売り」(1)

小出宗昭は静岡銀行の行員でした。
そして、サラリーマンなら誰でも持っている、それなりの出世欲もありました。

営業成績はいつも一番を目指していましたが、仕事がデキる人とは最短の時間で目標を達成できる人間だと考え、残業や休日出勤は一切せず、いかに効率よく成果を挙げられるかに取り組んでいました。
一言で言うと、与えられた仕事をクールにこなす「エリート・サラリーマン」を目指していたわけです。

ところが41歳の時、地元企業の事業支援を行う「SOHOしずおか 」への出向を命じられます。
驚いたことに、そこには仕事のマニュアルどころか、成果目標さえ存在していませんでした。
県の担当者から、「小出さんの好きにやってください。楽しいにぎやかな施設になるといいですね」と笑顔で言われたきり。

小出の年齢からいって、次のステップは管理職です。
だから、なんとしても2年間で成果を挙げて、管理職に昇格して銀行に戻らなければなりません。
そのため、朝から晩までアイデアを練って企画を作り、それを実行して成果に結びつけることを繰り返しました。
もちろん土日などありません。

大変な日々でしたが、それは施設に入居している起業家たちも同じこと。
ただ、違うのは収入です。
彼らの収入は銀行員である小出の1/3くらいしかありません。
それでも、なぜか皆イキイキして輝いて見えました。

他にも驚かされたことがあります。
挨拶を兼ねて外回りした時のこと。
以前なら「静銀さん」と好意的に迎え入れてくれたのに、バッジを外した途端にいきなり門前払いをくらいます。

今まで自分がやってきたビジネスは、「銀行」という看板があってこそのものだと改めて思い知らされました。
以来、小出は「小さきものをバカをするな!」が口癖になりました。
今でも支援相手と話す時は「相手に対するリスペクト」を絶対に忘れません。

そんなある日のことです。
女性を対象に開催していた「SOHOランチ 」というイベントに、ひとりの「公認スポーツ栄養士」が参加しました。
珍しい資格なのでいろいろと話をするうち、ビタミンB1を含んだ強化米などを使った「スポーツ弁当」というアスリート向け弁当を開発することで意気投合します。

この取り組みをメディアが挙って取り上げた結果、静岡国体開催中の10日間で3万食を完売する大ヒット。
これを機に、弁当業界では栄養表示をすることが当たり前になったといいます。
弁当業界の常識を変えてしまったのですから本当にすごい話です。
こうなると今度は、仕事が面白くてたまらなくなります。

出向中の成果は人事評価の対象にならない、という周囲の声も耳に入りません。
そもそも静岡銀行の経営理念は、「地域とともに夢と豊かさを広げます」というもの。
小出は入行して20年近く経って、ようやくこの理念が腹落ちしたのでした。

立派な経営理念を掲げる会社はたくさんありますが、その真意を理解している従業員は一体何人いるでしょう。
社長でさえ毎日の売上や利益に翻弄され、経営理念どころではなくなっている会社はたくさんあります。
マニュアル仕事に慣れきったサラリーマンにとって、自分の頭でやり方を考えて、自分の意思でそれを実行していくことはとても厳しいことではあります。
しかし、同時にとても楽しいことでもあります。

これこそが「仕事」です。

小出は言います。
与えられた課題をこなすのは、「仕事」ではなく「作業」であると。

2005年には「ジャパン・ベンチャーアワード」という、中小企業庁主催のベンチャー支援を評価する部門で経済産業大臣表彰を受賞。
この頃には、管理職に昇格して銀行に戻ることよりも、創業支援の圧倒的な成功モデルを作りたいという情熱の方が強くなっていました。

それから3年後、小出は銀行を退職し、自ら起業する道を選びます。
故郷の富士市からの強い要望で、富士市産業支援センター(通称「f-Biz」)の委託を受け、企業支援のプロとして働き始めたのです。
その後f-Biz(エフビズ)が数多くの成功例を生み出したことで、全国に次々とf-Bizをモデルにした公的な中小企業支援施設が設立されます。

その数なんと20ヵ所以上。
施設のトップを公募すると、バリバリの大手外資系の現役コンサルタントが応募してくるそうです。
理由を聞くと、給料は高いが働いていても虚しさを感じるとのこと。

高額のコンサル・フィーを稼いでも、それが必ず「やりがい」に繋がるわけではありません。
最近はコロナ禍の影響で、金融機関にも企業支援の考え方が浸透しつつあります。
東京のある信用金庫は、融資や預金といった業績関係の数値目標を全て撤廃し、融資先の売上アップだけに特化した支援活動を無料で展開し始めました。
もちろん、お手本とするのは「小出メソッド」。

個人商店主が苦手とするSNSでのPRをサポートしたり、時にはビラ配りに汗を流します。
こうなると、もう金融機関というよりコンサルタントか商社ですよね。
金融ビジネスがここまで変化しているとは思いませんでした。

今や中小企業の救世主となった小出ですが、f-Bizで働き始めた頃に相談に訪れる経営者にある共通点があることに気づきます。

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