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5☆s 講師ブログ

協力し合う生物(2)

スタンフォード大学のマシュー・ファインバーグらが行った「公共財ゲーム」とは次のようなものです。
集められた216人の大学生は、4人1組のグループとなります。

メンバーのA、B、C、Dの4人には、それぞれ5ドルずつが与えられます。
そして、そのうちいくらをグループのために投資するのか、その金額をそれぞれ各自の判断で決定してもらいます。
5ドル全部を投資してもいいし、全く投資しなくてもかまいません。
0~5ドルの間で自由に決めていいのです。

一方、投資に対するリターンは、各自の投資額を合計した金額の2倍と決められています。
それを4人が均等に分け合います。

この時ミソなのが、メンバーの中に投資していない人がいたとしても、その人にも均等にリターンが分配されるということです。
ゲームは6回繰り返されますが、その都度メンバーが入れ替わります。
たくさん投資した方が儲かりそうな気がしますが、これがそうでもないのです。

ちょっとシミュレーションしてみましょう。
A、B、C、Dの全員が1ドルずつ投資したと仮定します。
各自の持ち分は、一旦4ドルに減ります。

でも、グループの投資合計額が4ドルなので、リターンはその2倍の8ドル。
これを4人に分配するので、1人あたりのリターンは2ドル。
これにより各自の持ち分は4+2=6ドルとなり、結局全員が1ドルずつ儲かった計算になります。
おいしい話ですよね。

でも、もしこの時Dだけが投資しなかったらどうなるでしょう。
A、B、C3人が1ドルずつ投資するので、グループの投資合計額は3ドル。

リターンは倍の6ドル。
これを4人に分配するので各自へのリターンは6÷4=1.5ドル。
投資したA、B、Cの持ち分は、それぞれ4+1.5=5.5ドルとなります。
ところが投資をしなかったDだけは、5+1.5=6.5ドルと3人より1ドル多くなりました。

つまり、「ただ乗り」した人は、投資した人よりも多く儲けることができるのです。
このケースでは、D以外の3人は損こそしませんでしたが、ただ乗りする人が増えると、投資した人が損するケースも出てきます。
なので、メンバーを替えながらこのゲームを繰り返していくと、やがて全員がただ乗りをもくろんで誰も投資しなくなってしまいます。

そこで、新たなルールを作ってみました。
最初のルールは、メンバー替えの際に誰がズルをしたのかメモで知らせるというものです。
でも、これは効果がありませんでした。

次のルール変更はメモで知らせるだけでなく、4人の投票により誰か1人をメンバーから外すことができるというもの。
所謂「仲間外れ」を決めることができるのです。
すると、投資額はどんどん増えていきました。

このことから、ヒトの協力行動の背景には、力を合わせることで集団全体の利益が上がり、その結果個人も利益を得るという、「正の互酬性」の原理が働いていることがわかります。
人類の歴史の中では、おそらく「正の互酬性」を安定させるために、「負の互酬性」も成立していたのでしょう。

このゲームで注目すべきことは、「互酬性」を支えているルールが「仲間外れ」だという点です。
集団に属する個人は、本能的に「仲間外れ」を恐れるが故に協力し合うのです。

ところが、研究が進むにつれて協力行動というのはヒトだけでなく、ゾウやネズミにも見られることがわかってきました。
多くの動物は、協力し合う生き物だったのです。
ただ、生まれつき備わっていた能力だと決めつけるのは早計です。
おそらく、ゾウやネズミたちの中には、かつては協力しない種も存在していたのでしょう。

でも、厳しい生存競争を勝ち抜いていく過程で、最終的に協力する種が生き残ったのではないかと考えられます。
要するに、互酬性を重視して「仲間外れ」というルールを採用した種が、結果的に生存には有利だったということです。
確かに、仲間外れにされるのは辛いもの。

辛いということは、心の痛みを感じるということです。
この痛みに深く関係するのが「共感」という感情です。
実はこの共感は、ヒト以外の動物にも見られるのです。

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