株式会社ファイブスターズ アカデミー

まずはお気軽に
お問い合わせください。

03-6812-9618

5☆s 講師ブログ

ヒトの目を気にする

人目を気にするのは、程度の差こそあれ皆同じ。
でも、人の目があるのとないのとでは、私たちの行動はそんなに変わってしまうものでしょうか。

2005年に、心理学者のハーレイらはちょっと変わった論文を発表しました。
本物の目ではなく、目のような模様であったとしても、見られているという意識が人の行動を変えてしまうのかどうか調べたのです。
集められた参加者248名は、それぞれペアとなり「独裁者ゲーム」をやらされます。

ペアになった2人をA、Bとすると、まずAに10ドルが与えられます。
Aは、それをBと分け合うのですが、配分の割合はAが自由に決めることができます。
どんな割合でも、Bは拒否できません。
極端な話、Aが10ドル全てを一人占めしてもいいわけです。

しかも、取引はパソコンの画面上で行われるため、Bが誰なのかはわかりません。
もちろん、会うこともありません。
何だか、どれくらい金銭欲が強いのか試されているみたいですね。

この時Aのパソコン画面に、ヒトの目によく似た模様を呈示しておきます。
そして、模様を呈示した時と呈示しない時を比べて、金額に違いがあるのかを調べたのです。
結果は、模様がない時の平均が2.45ドルに対し、模様がある時は3.79ドル。
なんと、相手に渡す金額が55%も増えました。
人は、「人目」どころか「ヒトの目のような模様」でさえも気にするようです。

もし、模様ではなく「ヒトの目の写真」だったら、渡す金額はもっと増えていたかもしれません。
その翌年に発表されたメリッサ・ベイトソンらの実験は、その「ヒトの目の写真」を使いました。

実験の舞台となったのは、イギリスのとある大学の喫茶室。
大学の心理学部門に在籍する48名が、毎日のように利用する場所です。
喫茶室といっても、部屋の片隅にコーヒー、紅茶、ミルクの「お茶セット」が置いてあるだけのセルフサービス・スタイル。
飲み物は有料で、セットの後ろの壁の、ちょうど目の高さの辺りに値段を書いた紙が貼ってあります。
「コーヒー50ペンス、紅茶30ペンス、ミルク10ペンス」

1ペンスは日本円で約2円。
ということは、コーヒーが100円ほどということになります。

お茶セットの隣には料金箱が置かれていて、利用する都度その料金箱にお金を入れなければなりません。
でも、お茶セットは部屋の隅にあるため、他の利用者からは見えにくくなっています。
また、部屋には人がいない時もあります。
何が言いたいかというと、要するに不正が行われ易い環境にあるということです。

実際に計算が合わない事態が頻発したため、料金箱には「正直箱」という名前がつけられました。
さらに、運営側は半年に一度のペースで、料金を知らせるメールを各利用者に送っているのですが、それでも事態はなかなか改善しません。

ベイトソンらは料金表のすぐ上のところに、ヒトの両目の部分だけをクローズアップした、横長の写真を貼ってみました。
「ヒトの目の写真」があると、キチンとお金を払うようになるのではないかという仮説を立てたのです。
比較のために、花の写真も用意しました。

週替わりで目、花、目、花と10週に渡り交互に貼り替えます。
さて、結果はどうなったでしょう。

毎週、ほぼ同じ量のミルクが飲まれていましたが、正直箱に入っていた金額はかなり違っていました。
そこで、ミルクの1リットル当たりの売り上げをグラフにしてみたところ、グラフは週単位でジグザグに変動していることがわかります。
目の写真を貼った奇数週は金額が多く、花の写真の偶数週は少ない傾向が見られたのです。
目の写真を貼った1週目の売り上げは、花の写真の8週目に比べなんと7倍に達していました。
平均すると目の写真を貼った週の売り上げは、花を貼った週の2~3倍。
やっぱり「ヒトの目」があると、それがたとえ写真だったとしても、人は知らず知らずのうちに正直な行動をとるようになるのです。

ところが、話はここからちょっと奇妙な方向に展開していきます。
詳しく調べていくと、利用者の誰一人として、写真が毎週貼り替えられていることに気づいていませんでした。
つまり、利用者本人は、目の写真か花の写真か全く意識していなかったのに、潜在意識にはしっかり届いていたということになります。

最近街中で、歌舞伎役者の目の隈取り部分だけをクローズアップした、横長のステッカーをよく見かけますよね。

これらの実験結果を見る限り、このステッカーにはかなりの犯罪防止効果が期待できそうです。
もし、あなたの会社でコンプライアンス違反が後を絶たないようなら、壁や窓などのあちこちに、目のステッカーを貼るのもひとつの手です。
でも、ちょっとみっともないですかね。

そこで思い出してほしいのが、最初に紹介したハーレイの実験です。
目の模様がない時でも、10ドルのうちの1/4くらいは相手に譲っていました。
ベイトソンの実験でも、目ではなく花の写真を貼った週であっても、金額は少ないとはいえ料金は払われていました。
つまり、例え「ヒトの目」がなかったとしても、悪いことはできないものだという意識はちゃんと働いているのです。

そう言えば日本には昔から、「お天道様が見ている」という言葉がありましたよね。
きっと人には、正しいことをしようという潜在意識があるのでしょう。
大切なのは、その潜在意識をもっともっと喚起して、常に顕在化させるような仕掛けを作ることです。

初めての方へ研修を探す講師紹介よくある質問会社案内お知らせお問い合わせサイトのご利用について個人情報保護方針

© FiveStars Academy Co., Ltd. All right reserved.