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5☆s 講師ブログ

孫のかわいさ順位  

孫は、息子の子どもでも娘の子どもでも、またその孫が男の子でも女の子でも、みんな「かわいい」。
実は、それは大きな間違いです。

知らず知らずのうちに依怙贔屓しているのです。

断っておきますが、これは個人の感想ではありませんよ。
れっきとした遺伝子に関する研究論文です。
ちなみに依怙贔屓するのは、祖父ではなく祖母の方です。

なぜ祖母に関する研究かというと、一時期「おばあさん仮説」が流行ったときに発表された論文だからです。
「おばあさん仮説」とは、祖母がなぜ生きているかということを解き明かした画期的な説です。

一般に、動物界では子どもが一人前に育って、自分がもう子どもを産めない年齢になると、親が生きている意味はありません。
動物にとってこの世に生を受けた最大の理由は、自分の遺伝子を後世に残すことですので、その目的が達成されればほとんどの動物の親は死んでしまいます。
逆に親が長生きしていると、子どものエサが不足する事態を招きかねず、子どもの生存にとってはマイナスに作用することがあるからです。

要するに、自然界では子どもが一人前になり、自分が繁殖期を過ぎてもう子どもを産めない状態になったなら、親はさっさと死んだ方が子孫繁栄に貢献できるということです。

ところが、人間だけは例外です。
子どもが一人前になり、生殖年齢をとうに過ぎたのに、なぜかずっと生きています。
これは、生物学的に説明がつきません。
そこで登場したのが「おばあさん仮説」なのです。

動物の究極の目的は、自分の遺伝子を後世に残すことだと言いましたが、自分の子どもを育てることだけでなく孫の世話をすることも、自分の遺伝子を後世に残す行為のひとつであると解釈したのがこの仮説なのです。

祖母が長生きすることには、ちゃんと意味があったのですね。
めでたし、めでたし。

えっ?
祖母の存在理由はわかったけど、祖父の存在理由はないのかって?
ないです。
だって、せいぜい孫の遊び相手になるくらいで、いちいち面倒見たりしないでしょ。
つまり、祖父がなぜ長生きするのかは、生物学的に説明がつかない謎なのです。
まぁ、これから「イクジイ(育爺)」が一般的になったりすれば、「おじいさん仮説」が発表されるかもしれませんけどね。

さて、祖母の存在理由がわかったところで、本日のテーマである「祖母の依怙贔屓」論文について解説してくれるのは竹内久美子。
著書『ウソばっかり!』の中で、2009年のケンブリッジ大学のモリー・フォックスらの研究を紹介しています。
でも、依怙贔屓の話をする前に、染色体の基礎知識をおさらいしておく必要があります。

ヒトは、23組の染色体を持っていますが、そのうち22対は「常染色体」です。
対になってる染色体は、どちらもXの形をしているのでXXと書き表します。
次に23番目ですが、これは「常染色体」ではなく、性別を決定する「性染色体」です。
これがXXなら女性、XYなら男性になります。

23組それぞれに遺伝子が存在しているのですが、均等に配分されている訳ではなく、「性染色体」のXには全体の8%もの遺伝子が存在しています。
かなりたくさんの遺伝情報を持っている、非常に重要な染色体であることがわかりますよね。

実はこのことが、女性の方が寿命が長い理由ではないかと考えられているのです。
なぜなら、女性の「性染色体」はXXですので、どちらかのXに異常が発生しても、もう片方のXが正常ならばそれをカバーすることができますが、男性はXYですからXに異常が発生した時点で病気を発症してしまうからです。
ちなみにY染色体は大した遺伝情報を持っておらず、悲しい話ですがかなりポンコツな染色体だそうです。

さて、これを踏まえて、祖母の「性染色体」XXが孫にどのくらい影響を与えるのか、その確率の大きさを調べるのですが、祖母といっても2人いますよね。
「父方の祖母」と、「母方の祖母」です。
この違いまで調べます。

その時ちょっとややこしいのが、女性の生殖細胞ができるときに交差が起こることです。
交差とは、X染色体同士が交わる現象で、これにより性染色体の中身が一部交換されてしまいます。
詳しく説明するとかなり複雑になるため、結論だけ言いますね。

祖母の「性染色体」が遺伝する確率の計算をすると、「母方の祖母」の場合は、孫が男の子だろうが女の子だろうが、「性染色体」に遺伝子が残る確率は同じです。
だから、「母方の祖母」にとっては、孫が男の子でも女の子でも、かわいさは全く同じ。
孫娘も孫息子も平等にかわいがるということになります。

一方、問題なのが「父方の祖母」です。
孫娘ならば遺伝子の残る確率は高いのですが、孫息子には全く残っていません。
だから、「父方の祖母」の場合は、孫娘なら溺愛するのに孫息子には冷たいという仮説が導かれます。
本当でしょうか。

モリー・フォックスらはこれを実際のデータで検証してみたのです。
具体的には、祖母の存在によって孫の生存率が高まるかどうかを調べました。
彼らが調べたのは、7つの記録です。
7つの記録とは、例えば江戸・明治期(1671年~1871年)の長野県など、世界各地の特定地域における、特定期間のデータです。
江戸時代とはずいぶん古い気もしますが、人があまり移動していないことを考慮してのことです。

結論は以下の2つでした。
①「母方祖母」がいると、「父方祖母」がいる場合よりも、孫娘も孫息子も生存率はアップする。
②「父方祖母」がいると、孫娘の生存率が孫息子の生存率よりアップする。

どうです、仮説通りでしょ。
やっぱり、「母方祖母」は平等主義者で、「父方祖母」は孫息子に冷たいのです。
こんなことを聞いてしまうと、これから孫との接し方が違ってくるかもしれませんね。

ま、私の場合は孫がいないので、別にどうでもいい話ですけど・・・。
いや、たとえ孫ができても、生存理由がない祖父になるだけなので本当にどうでもいい話です。

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