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5☆s 講師ブログ

人格教育

前回に引き続き、海上自衛隊のお話です。
海上自衛隊では、どんなに有能な幹部候補生でも、人格に問題がある場合は絶対に出世させないそうです。
では、その人格教育とは、一体どのようにして行われているのでしょう。

防衛大学校では、第8期生と第9期生が作った「学生綱領」というものが、今でも受け継がれています。
そこには、防大生が身につけるべき資質は以下の3つであると書かれています。

「廉恥(れんち)」、「真勇(しんゆう)」、「礼節(れいせつ)」。

「廉恥」とは破廉恥の反対語で、恥ずかしい行動をとってはいけないとか、恥を恐れて卑怯な真似をしてはいけないという意味です。
「真勇」とは、文字通り真の勇気のことで、正しいと思ったことは臆せずに実行しなさいという意味です。
「礼節」はわかりますよね。
相手に対する、礼儀と節度を忘れるなという意味です。
例えば、自分のミスが上級生にバレないように隠蔽しようとした者がいれば、それは「廉恥」ではなく、いわゆる破廉恥で卑怯な行動となり、正直に報告する「真勇」がなかったというのは、上級生に対して「礼節」に欠ける行動と判断されるのです。

この3つを、会社に当てはめてみたらどうなるでしょう。
成立しているのは、最後の「礼節」だけのような気がします。
それも、あくまで表面上の話ですが・・・。

イエスマンに囲まれている上司に、「真勇」をもって意見具申すると、疎んじられて次の異動で飛ばされることもあります。
「廉恥」に至っては、もはや絶滅危惧種ではないでしょうか。
自分のミスがバレないようにするのは、今やサラリーマンにとっては処世術の一つと化しつつあります。
背景には、民間企業の人事考課が、自衛隊以上に厳格な「減点主義」であることが、大いに関係しているように思います。

それにしても、こんな精神論だけで、果たして人格教育が徹底できるのでしょうか。
ちょっと心配になりますよね。

民間企業では、人格や人間性が昇進の決め手になることは稀です。
昇進の決め手となるのは、人格や人間性ではなく「上司のヒキ」です。
中には、上司の顔色を窺う「ゴマ摺り人間」が、どんどん出世してしまう会社もあります。
海上自衛隊ではどうなのでしょうか。
実は、海上自衛隊では「ゴマ摺り人間」の昇進を防ぐため、人事システムにも工夫が凝らされています。

昇進の可否は、上官たちの意見だけで決定されるのではなく、同期生の意見も反映されるというのです。
それだけではありません。
1年先輩と2年先輩、さらには1年後輩と2年後輩の意見もデータとして反映されるそうです。

そう言えば、この夏の甲子園を制した大阪の履正社高校の野球部では、ベンチ入りメンバーを決めるに際して、部員全員による投票を行って参考にしているそうです。
その時、岡田龍生監督からの注意事項はたった一つ。
「ナンボ野球がうまくても、人間性ができていないヤツの名前は書かなくていい」

勝つことが至上命題の勝負の世界で、ここまで人間性を重視するというのはちょっと意外でした。
でも、よく考えてみると野球は団体競技。

個人プレーに走るひとりの優秀ブレイヤーによってチームがバラバラになるより、普通の実力のメンバーが一致団結してチームプレーに徹する方が有利です。
全員が一致団結できるかどうかの分かれ目が、人格とか人間性といった要素なのかもしれません。

部下の仕事の遂行能力というのは、上司でなくても評価することができます。
なぜなら、ほとんどの場合、成果を数値化することが可能だからです。

しかし、人格や人間性となると、どうしても評価者の主観に頼らざるを得ません。
この主観が最も曇りやすいのが、上司なのです。

部下の実績数字がよければ、どうしても人間性までよく見えてしまうものです。
「数字は人格だ」と、部下に発破をかける営業部長もいるくらいです。
でも実績数字と、人格や人間性は違います。

最近では、実績数字に惑わされないために、360度評価を導入する企業が増えてきましたが、海上自衛隊のように同期生や年の近い先輩・後輩による評価というのは聞いたことがありません。
でも、この方法ならば、その人の人間像をかなり客観的に浮き彫りにすることができますよね。
軍事組織が、なぜそこまで指揮官の人格や人間性を重視するのかというと、命を懸けるような危険な場面では、人望のない指揮官の下にいる部下は全員逃げ出してしまうからです。

「いや、我々は軍隊ではないから命を懸ける場面などないよ」と言うあなた!

あなたの会社でも、軍事用語を模した言葉を使っていませんか。
やれ、経営「戦略」だとか、営業「拠点」だとか・・・。
また、社員は自分のことを企業「戦士」だと思っているのではありませんか。
会社組織は、平和な時代における模擬軍事組織という一面もあるのですよ。

命を懸ける場面はないにしても、リーダーに人望が求められるのは、会社も軍事組織も全く同じ。
まずは、部下の能力だとか実績数字は一旦脇に置いておき、「廉恥」、「真勇」、「礼節」の3つの視点で部下を再評価してみませんか。
もし、どこか足りない部分があったとしたら、そこを伸ばしてあげてください。
それこそが「人格教育」に他ならないのですから。

あ、大事なことを言い忘れていました。
その前に、まずあなた自身の人格について再評価をしてみることですね。

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