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5☆s 講師ブログ

老害ニュートン(1)

科学史におけるニュートンの功績と言えば、何と言っても「微分積分法」と「万有引力」の発見ですが、彼がこの研究を完成させたのは、なんと24歳の時。

ペストの大流行によりケンブリッジ大学が一時閉鎖されたため、やむなく故郷の田舎町ウールスソープに戻っていたわずか2年余りのうちに、彼はこの世紀の大発見をすべて完了してしまいます。

1666年のことでした。

ところが、なぜかニュートンはこの発見を論文として発表することはしませんでした。

これが後の大混乱の原因となります。

世紀の大発見を発表しないなんて、「落体の法則」の時のガリレオと同じですよね。

そもそも「万有引力の法則」というのは、ほとんどガリレオとケプラーが発見した法則から導き出せるものでした。
ですので、もし彼らが運命のいたずらに翻弄されなければ、二人のうちのどちらかが先に万有引力を発見しただろうという研究者もいるほどです。

事実、ニュートンは、「私は巨人たちの肩の上に乗って、ほんの少し先を見通せただけなのです」と言っています。

これは、ニュートンの謙虚さを表すエピソードとして語り継がれてきましたが、近年の研究では「肩に乗る」という文句は当時の流行語大賞みたいなもので、単なる軽口の類いだったのではないかとも言われています。

確かにニュートンの足跡を見る限り「謙虚」とは無縁のように思えるのですが、そのことはもう少し後でお話ししましょう。

そもそも、「万有引力の法則」が世に出るようになったのは、1684年に英国王立協会で3人の有名な科学者が議論を戦わせたことがきっかけでした。

議題は、「天体が横方向から距離の2乗に逆比例する引力を受けたら、一体どんな軌道を描くか」ということでした。

「引力の逆2乗」とは、2015年4月のブログ『万有引力』でも触れましたが、後にニュートンが発表する「引力は、二つの物体間の距離の2乗に反比例する」という法則のことです。

結論が得られず、もやもやした気持ちのまま帰ったそのうちの一人がニュートンの元を訪ねます。

ニュートンは即座に「それは楕円です」と答えました。
驚いて詳しく話を聞いてみると、なんと18年も前にこの法則を発見しているというではありませんか。
その科学者は、研究を世に出すよう熱心に勧めます。

その結果出版されたのが、あの有名な『プリンキピア(自然哲学の数学的原理)』なのです。

ついでに言えば、当時の王立協会は財政難に喘いでいたため、出版費用はその科学者が全額負担してくれました。

その科学者こそ、今も「ハレー彗星」に名を残すエドモンド・ハレーです。

この彗星の楕円軌道の周期を計算し、1687年から数えて76年後にまた現れると予想した彼の予言が見事に的中したことで、後世に残る名声を手に入れます。

ところで、ハレーとの運命的な出会いを果たすまで、ニュートンは一体何をしていたのでしょう?

実はニュートンは、惑星軌道を研究する天体物理学者としてではなく、光学の研究者として知られていました。
光の研究に没頭していたのです。

当時の光学研究における最大のテーマは、光は「粒」なのか、あるいは「波」なのかという問題でした。

ニュートンは「粒子説」の立場を取り、『光と色の新理論』という論文を王立協会に提出します。

しかし、この論文には致命的な間違いがありました。

彼が「粒子説」の決定的証拠だとして示した事象は、「波動説」をもってしても説明可能な結果だったのです。
この誤りを厳しく指摘したのは「波動説」派の筆頭で、今も弾性体の「フックの法則」に名を残すロバート・フックでした。
フックは「17世紀のレオナルド・ダ・ビンチ」と称される天才で、当時は王立協会の主のように振る舞うほどの権力者でした。

この重鎮中の重鎮にコテンパンにやっつけられた怨みが、ニュートンの心に深く刻み込まれます。

これが、その後長きにわたり二人の間で繰り広げられる、醜い憎悪の応酬の原因となりました。

ちなみに、この論争に決着をつけたのはアインシュタインです。

光は「粒」と「波」の両方の性格を持つことを証明した研究こそ、アインシュタインがノーベル物理学賞を授賞した理由です。

そうです。

ノーベル賞は「相対性理論」に与えられたのではないのです。
なぜかと言うと、その頃「相対性理論」の内容を理解できる科学者などほとんどいなかったからです。
そのためもし万一のことを考えて、無難な光の研究の方に賞が与えられたのです。

さて、話を元に戻しましょう。

ニュートンとフックの遺恨試合は、これで終わったわけではありません。
ついに第2ラウンドを迎えることと相成ります。       

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