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5☆s 講師ブログ

白票

不祥事が続く中、企業ガバナンスの切り札として一躍脚光を浴びたのが「社外取締役制度」。

しかし、東芝の例を見てもわかるように、この制度を導入したからといって、すぐに健全な企業経営が実現できる訳ではありません。

そもそも企業側から見れば、社内事情に疎い上に利益を上げる責任を負っていない人たちから、あれこれ経営に口出しされるのはあまり面白いことではありません。

ですので、都合の悪い情報は社外取締役には伏せておきたいという気持ちが沸いてくるのも無理からぬこと。

唯一、この社外取締役制度が機能したと思われる事例が、2016年のセブン&アイ・ホールディングスです。
当時の会長兼CEO鈴木敏文が、セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長兼COOを強引に退任させようとしたことがきっかけで事態は迷走します。

鈴木は井阪本人と、創業者でホールディングスの名誉会長である伊藤雅俊の了解を取り付けないまま、ホールディングスの指名・報酬委員会に井阪退任案を諮問します。

この委員会を構成する4人のうち、2人は社外取締役。

彼らは、好業績を維持してきた社長を退任させる理由が見つからないと、この案に“No”を突きつけます。
2対2では結論は出ません。

しかし鈴木は、委員会の合意なしに強引にこの人事案を取締役会に提出してしまいます。
取締役は全部で15人。

過半数の8人が賛成すると、この人事案は承認されてしまいます。
否が応にも世間の注目が集まりました。

無記名投票の結果は賛成7、反対6、そして白票2。

賛成票がわずかに過半数に届かなかったため、この人事案はかろうじて否決されたのでした。

社外のみならず、社内取締役からも反対者が出たという事実は、鈴木にとってよほどショックだったのでしょう。

その日の午後記者会見を開き、自ら辞任を発表してしまいます。

鈴木はセブン-イレブンをここまで成長させた最大の功労者ですし、井阪も非常に優れた経営者です。

この騒動の背景には、創業家の思惑など様々な事情が複雑に絡んでいることも想像に難くありません。
私にはこのお家騒動の真相は知る由もありませんし、どちらの側に「義」があったのかもわかりません。

しかし、これをもって企業ガバナンスが正常に機能したと、本当に言えるのでしょうか?

最初に疑問に思うのは、白票を投じた取締役がいたことです。
しかも、2人も。

白票とは一体どういう意味でしょう。

もしかしたら、後々のことを考えてどちらが勝っても良いように、あえて旗色を鮮明にしなかったのかもしれません。
だとすれば、この上なく姑息な自己保身策と言えましょう。

そもそも、判断しなければならない場面で白票を投じるという行為は、「私には判断する能力がありません」と宣言しているようなものです。

この時点ですでに取締役失格ではないでしょうか。

さらに、これが無記名投票だったことにも疑問を感じます。

無記名にする意味とは何でしょう。
どちら側についたかバレないようにする事で、本音の投票ができるように配慮したのでしょうか。
ここまでお膳立てしてもらわないと自分の意思を表明できないのだとしたら、取締役というのはなんとも情けない存在です。

社外取締役制度を導入しようがしまいが、企業ガバナンスの根幹は社内取締役にあります。

その高額な役員報酬の中には、自らの出世や属する派閥などとは関係なく、自分の正義を貫き通す「覚悟料」も含まれていることをしっかりと自覚すべきです。

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