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5☆s 講師ブログ

サボっても降格しない

家電メーカーのシャープが経営難に陥り、台湾の企業に買収されました。

しかし、これから軌道に乗るまでには、乗り越えなければならない壁がまだいくつもあるように思います。
シャープの失敗を見ていると、成功体験が却ってマイナスに作用する怖さを思い知らされます。

2011年7月の地上デジタル放送への切替に伴い、ほとんどの家庭がテレビを買い替えざるを得なくなりました。

どのメーカーのテレビも飛ぶように売れたのは、当たり前と言えば当たり前です。

中でもシャープは「世界の亀山モデル」を売りに、高画質の『アクオス』で一気に業績を伸ばしました。
シャープでは、この大ヒット商品を開発した人物が功績を認められ社長に就任します。

ところが、この成功体験がそのまま敗北のルートへと繋がっていくのです。

まさにシャープは、成功したからこそ失敗したのです。

大ヒットがなかった他のメーカーの多くは、地デジ移行後のテレビ事業の赤字転落を受け、
縮小か撤退に向けて迅速に舵を切ります。

たいして成功しなかったからこそ、見切りをつけるのは比較的容易でした。

しかし、成功してしまった者はなかなか夢から醒めません。

シャープはなんと、新たなテレビ工場の建設をぶち上げたのです。

社内で、誰か止める人はいなかったのでしょうか。

「テレビ事業は今後も収益の柱になる」と、役員全員が本気で思っていたのでしょうか。

そうとは到底思えません。

でも、もしかしたらこれも、日本特有の「空気」の仕業なのかもしれません。

一方、従業員の中には、「今後テレビは売れなくなるだろう」と予想した人は多かったと思います。

なぜなら、家電メーカー以外の私たちは、みんなそう思っていたからです。

企業の失敗事例から学ぶ教訓はたくさんありますが、
そのひとつは多くの従業員が常識を持っていたとしても、経営陣がその常識を持っているとは限らないということです。

いや、経営陣も本当は常識を持っているのです。

しかし、経営陣に必要なのは常識ではなく、猫の首に鈴をつける勇気の方です。
思えば東芝もそうでした。

ただ、他人を批判することは簡単です。

もし、自分がその立場だったらどうしたでしょう?

時の経営者の出身部門について、ズバリ「将来性がない」と具申する事ができたでしょうか?

確かに難しい問題です。

ところが、これはきわめて日本的な事象らしいのです。

アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)は、現CEOのジェフリー・イメルトや、
あのジャック・ウェルチの出身母体であるプラスチック部門をいとも簡単に売却してしまいました。

なんとドライな!

アメリカの経営者にとっての至上命題は、会社を存続させそして発展させることです。

経営者の情緒的な感傷を慮ることではありません。

この徹底した経済合理性こそが外資の本質です。

外資は「空気」の存在を許さないのです。

しかもGEでは、「上司は選べる」のだそうです。

どういうことでしょう?

GEでは、イントラネットの掲示板に様々な部署の人材募集の案内があり、上司の許可なく応募できるのです。

ですので、部下がある日突然
「○○部門の面接に合格しましたので、○カ月後にはそちらに行きます」
というような事態が結構頻繁に起こるそうです。

上司が
「君に抜けられたら、今年度の予算が達成できない」
などと泣いてわめこうがお構いなしです。

だから、上司は常に部下に関心を持ち、部下のキャリア・ビジョンについて日頃からよく話し合って、
その実現と育成に努力しなければならないのです。

このような下地があってはじめて、「キャリア研修」が有効に機能するのです。

ところが日本では、地ならしという基礎工事を一切せずに、いきなり上物だけ建ててしまったために、
歪な「キャリア研修」が出来上がってしまいました。

下地のないところに、『キャリア・アンカー』などという概念を持ち込んでも意味をなすはずがありません。

そもそもGEでは、キャリア形成の大前提として「育成」が徹底されています。

各国にある子会社の社長クラスでさえ、数週間に及ぶ研修に頻繁に呼び出されます。

そこで朝から晩まで議論するのは、部下の育成についてです。

なぜ、こんなにも膨大な時間をかけて、人材育成について考えるのでしょうか?
それは、「社長の仕事の7割は人材育成である」という哲学が浸透しているからです。

あなたの会社ではどうですか?

人材育成は、社長の仕事の何割を占めていますか?
管理職の仕事の何割を占めていますか?

「そうは言っても、会議や決裁などの日常業務で忙しい」という反論が聞こえてきそうです。

たしかに、会社で過ごす時間の大半が、これらの業務に割かれていることも事実です。

私も管理職の頃はそうでした。

でも、当時を振り返ってつくづく反省するのは、それが本当に最優先にやるべき仕事だったのかということです。

シャープの管理職だって、会議や決裁に忙しかったはずです。

それをサボっていた人は、一人もいないはずです。
でも、危機は回避できませんでした。

なぜでしょう?

会議や決裁というのは、管理職にとってはマストの仕事です。

やらなければ管理職から降格させられてしまいます。
ということは、会議や決裁の仕事は降格させられないために、つまり我が身の保身のためにやっているとも言えます。

一方、部下育成をサボったために降格させられたという話は聞いたことがありません。

部下を育成することは、マストではないのです。

部下が育たなくて困るのは、現任の管理職ではありません。

何年後か、あるいは何十年後かの会社です。

ですので、部下と共にキャリアについて話し合うということは、
部下の将来を考えることであると同時に、会社の将来について思いを巡らすことでもあります。

人材育成というのは、会社の将来と無関係ではないのです。

30分でも、15分でもいいから、部下と将来のことについて話し合ってみませんか。

あなたの会社を背負って立つべき人材が、いざそのときになったら背負うべき会社がなかった、
などという悲劇を起こさないためにも。

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