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5☆s 講師ブログ

決断しない上司

2013年の日本法規情報という会社のアンケート調査によれば、
上司への不満の1位は「人間的に尊敬できない」で、44%を占めたそうです。

次いで「ミスを人のせいにするなど責任転嫁する」の21%、
さらに「上司が仕事を押し付ける」が「上司がパワハラをする」と同率の14%で続き、

「仕事が出来ない」も5%ありました。

第1位の「人間的に尊敬できない」に関しては、具体的にどういう場面でそう感じたのか想像がつきません。

まさか社会的不適合者ということではないでしょう。
少なくとも、通常の社会生活を営んでいるわけですから。

私自身の経験で思い当たることがあるとすれば、あまりの多忙感や数字のプレッシャーから余裕をなくしてしまい、

部下の心情面に配慮した思いやりのある声がけができなかったことです。
おそらく部下はその時、私のことを「人間的に尊敬できない」どころか、「冷血動物」と思ったことでしょう。

しかし、見苦しい言い訳を少しだけ許してもらえるならば、上司と部下では「責任」の重さがまったく違うのです。

厳しいプレッシャーのかかる場面でも、思いやりに溢れた言動がとれる上司というのは、
はっきり言って「人物」です。

あるエネルギー関連の有名企業は、人間性を磨くために
管理職に宗教的な修行研修を受けさせていますが、これは例外中の例外。

そもそも責任遂行能力の開発に留まらず、部下に対する思いやりという人間性の開発についてまで、

企業教育のテーマとして取り組むことが正解なのかという疑問も湧きます。

それよりも私が気になったのは、第2位の「ミスを人のせいにするなど責任転嫁する」です。

責任を部下に転嫁するのはもってのほかですが、上司や他部門のせいにする人はたしかにいます。

やはりこれも、「責任」に関係した話。

どうやら「責任」という言葉に重要な意味がありそうです。

ところが、私が最近よく耳にするのは責任転嫁よりもっと前の段階、
つまり責任を取りたくないので決断しないという上司が増えているという話です。

試しにグーグルで「決断しない上司」と検索したら、50万件以上ヒットしました。

これはもはや社会現象なのでしょうか。

なぜ上司は決断しないのでしょう?

心あるマネージャーであれば、部下の積極的な提案はできるだけ拾ってあげようと思っています。

これは本当です。

一方で、その提案を実行したときのリスクも気になります。

そこでマネージャーは万一の場合を考えて、保険をかけようと上司である部長に相談します。

しかし、部長からGOサインが出ることはきわめて稀です。

なぜなら、部長もまたそのリスクを引き受けるのが怖いからです。

多くの場合、部長の椅子というものは、リスクを回避し続けた結果として手に入れるものです。

ですので、それを失う可能性が潜んでいる案件は、
避けて通るのが賢明と考えるのはいたしかたないことです。

いい悪いは別にして、このようなスタンスを貫いた結果として、
ようやく手に入れたのが部長の椅子なのですから。
部長を責めてはいけません。

そんなわけで部下の提案は、大した反対論がなかったにも関わらず、
後ろ盾が得られないため保留扱いとなります。

もし、その上司が「失敗したらクビになるかもしれないが、その時はしょうがない」と腹をくくるような経験を、

過去にたった一度でもしたことがある人ならば、ちょっと違った展開になったかもしれません。

しかしそのような“貴重な存在”の管理職が、
こんな風土の会社には長く勤務しないということもまた事実です。

そこで、リスクをより多くの人に分散させてしまおうと最近流行しているのが、保険としてのCCメールです。

CCメールの言わんとするところはこういうことです。

「もしも後で問題になった時に備えて、このような動きがあることを事前にお知らせしときますね。

今すぐ反論しない限りは、黙認したものと見做しますからね。
もし後で問題になったとしても、間違っても『俺は聞いてないゾ!』などとふざけたことを言ってはいけませんよ」

かくして、管理職のメールアドレスには、日々大量のCCメールが舞い込むことになります。

「決断しない上司」というのは、上司の能力の問題ではないのです。

職場の風土の問題なのです。

某大手食品会社には、行動規範にあたる「十則」なるものが存在します。

その10番目は驚くべきことに、「決断なき上司は無能と思え。社長へ直訴せよ」です。

でも履き違えてはいけません。

これは、管理職が積極的にリスクを取る風土がある会社だからこそできることです。
おそらく、「決断」というキーワードが、その会社のDNAの中に育まれているのでしょう。

もしあなたが、上司を飛び越えて社長に直訴したら一体どうなるか、想像してみてください。

決断に関してはどれほど無能な上司でも、部下に罰を与えることについてはきわめて有能です。

それだけでなく、管理職がリスクをとる風土のない会社において、
闇雲にこのような方法を選択することは、問題が多いと言わざるを得ません。

指示命令系統を飛び越えた直訴が横行するようになると、指示命令系統そのものが崩壊してしまいます。

つまり、組織としての体を成さなくなるのです。

では、どうしたらよいのでしょうか。

カギになるのは、人事部の考え方だと思います。

たとえチャレンジに失敗したとしても、マイナス評価はしないということを鮮明に打ち出すのです。
そして、もし成功した時には、発案者はもちろんのこと、それをサポートした上司も高く評価してあげるのです。

えっ?

それじゃあ、無茶なチャレンジが横行するかもしれないって?

大丈夫です。

それは絶対ありません。

サラリーマンはそれほどバカではありません。

学生のノリで仕事をしているわけではないので、節度はちゃんとわきまえています。

決断しない上司の方々、よかったですね。

会社の風土の問題でした。
あなたの責任ではありませんでした。
あなたは免罪符を得たわけです。

でもよく考えてください。

現代ではリスクを回避するスタンスをとり続けていると、
今度は会社そのものが消滅してしまうというリスクが高まります。

会社が消滅してしまうと、後生大切に守り続けた管理職の椅子も意味を失います。

ですので、人生のリスク対策として、再就職の備えも同時にやっておいてくださいね。

チャレンジする風土のない会社に覇気は生まれません。
覇気のない会社の前途は多難です。

一方、覇気のある会社というのは、例外なくある程度のリスクを冒しています。

チャレンジする風土を作り出す責任は、なにもトップだけにあるのではありませんよ。

まずはあなたから、風土作りのための小さな一歩を踏み出してみませんか。

誰かが勇気をもって踏み出せば、必ず続く者が現れます。
その連鎖がやがて風土となるのです。

『トヨタの口ぐせ』という本には、トヨタの社内で頻繁に交わされる31の言葉が記されています。
その中に、「リーダーはやらせる勇気、メンバーはやる勇気」というのがあります。

ビジネスの世界は、多かれ少なかれ勇気が要るものです。
勇気を必要としない定型的な事務作業は、
今ではほとんどコンピューターに取って代わられてしまいました。
コンピューターにはできない仕事のひとつに、「勇気をもってリスクをとる」というのがあります。

もちろんトヨタでも、一切保険をかけずにリスクをとれと言っているのではありません。
ただトヨタが言うところの保険とは、失敗したときの責任回避策のことではなく、
いち早くリカバリーするための事前準備や根回しのことだそうです。

どうです、やってみませんか?

大したことではありません。
まずは、今日持ち込まれた案件について、できる範囲でいいから小さなリスクをとってみませんか。

エサの魚を捕まえるために、捕食者が待ち構えているかも知れない海に、
勇気をもって真っ先に飛び込むペンギンを“ファースト・ペンギン”と言います。

私は、ファースト・ペンギンになれと言っているのではありません。

せめて、片足を海に突っ込むくらいの勇気を持てと言っているだけです。

それでも怖いと言うなら、後は餓死するのを待つしか手はないのですから。

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