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5☆s 講師ブログ

なぜ無気力にならない?

後にアメリカ心理学会の会長を務めたマーティン・セリグマンが、まだ若手の研究者だった頃、
手がけていた実験について予想もしなかった反論を受けました。

その時の研究のテーマは、「人はどんな時、無気力になるか」でした。
しかし、人体実験に踏み切るだけの勇気がなかったので、実験対象はもっぱら犬でした。

まず、音や電気ショックなどの不快な刺激を与えます。
その刺激は、犬がどんなことを試みようと止むことはなく、その代わり何もしなくても唐突に止んだりします。

つまり、自分ではコントロールできない不快刺激というわけです。

一度この条件づけをされた犬は無気力になってしまい、
次に自分で刺激をコントロールできる仕掛けに入れられても、一切抵抗をしなくなります。
「抵抗は無駄である」と学習するわけです。

このテーマに興味を示したのが、オレゴン州立大学の日系人大学院生ドナルド・ヒロトでした。

ヒロトは人間にこの実験をやってみました。

まず最初に、被験者を部屋に案内します。

そして大きな音を流します。

部屋にはパネルがあります。
そこで被験者は、パネルのボタンを押せば音を止められるのではないかと考えます。
しかし、何通りもの組み合わせに挑んだ後で、それが全く無駄な抵抗であることを悟ります。

次に、彼らを第二の部屋に案内します。

ここでは、一方の側に手を置くとシューという不快な音がします。
でも、その手をもう一方の側に移すと音は止まるという、実に単純な仕掛けが用意されています。

ところが、一旦抵抗が無駄であることを学習してしまった人たちの大半は、
第二の部屋ではもう何の試みもしようとしないのです。

まさに犬と同じ結果が得られたのでした。

では、抵抗が無駄であることを学習しなかった場合はどうなるのでしょう。

これを調べるため、最初の部屋でボタンの押し方次第でちゃんと音が止まる仕掛けを用意しました。
さらには、最初の部屋では音を鳴らさないという設定も用意しました。
すると、これらの設定の被験者たちのほとんどは、
第二の部屋ではちゃんと手を移動させて音を止めることができたのです。

この結果を伝えるヒロトからの興奮した電話を受けたセリグマンは、
無気力は学習によって生まれるものだという確信をますます強めました。

そして、ついにその時は訪れます。

1975年4月、オックス・フォード大学に乗り込んだセリグマンは、
ノーベル賞受賞者をはじめ錚々たるメンバーが居並ぶ中で、
この『無力の学習理論』をスピーチすることになりました。

会場の雰囲気は非常によく、セリグマンはかなりの手応えを感じますが、やがてあることに気づきます。

前列中央にひとりだけ、異質な雰囲気を醸し出している男が座っているのです。

周囲を威嚇するように見回し、彼のジョークにも一切笑わないばかりか、
いくつかの重要な点には首を振って、はっきり「ノー」の意思表示をしているではありませんか。

スピーチは温かい拍手とともに終了し、
残されたセレモニーは、“討論者”に指名されている教授から儀礼的な言葉を送られるだけとなります。

ところが、あろうことか討論者として立ち上がったのは、
その“ミスター・ノー”ことジョン・ティーズデールだったのです。

彼は厳しい口調でこう言い放ちます。

「講演者の理論は全く適正を欠くものです。
セリグマン氏は、研究対象となった人間のうち
1/3は無力状態にならなかったという事実をうやむやにしています」

確かに彼の言うとおりでした。

抵抗しても無駄だということは百も承知のはずなのに、
1/3にあたる人たちが飽くなきチャレンジをしていたことは事実でした。
しかもこの1/3という比率は、なぜか犬の実験でも同じでした。

さらには、その逆の事実も指摘されました。

最初の部屋で音を鳴らされなかった人たち、すなわち抵抗が無駄だということを学習していない人たちでも、
その1/10にあたる人は次の部屋で何の抵抗もしなかったのです。

つまり、この人たちはハナから無気力だったと考えられます。
そして、この1/10という比率もまた、犬の実験と同じでした。

セリグマンは狼狽のあまり呆然と立ち尽くします。

が、やがてこの問題点に気づかなかったことを恥じると同時に、新たな疑問が沸き起こりました。

世の中にはなぜ、3割のオプティミストと、1割のペシミストがいるのだろうか?

そして、オプティミストはなぜ、絶対に無気力状態に陥らないのだろうか?

一方その頃、産業心理学の分野ではちょっと困ったことが起きていました。

仮説に合致するような、好ましいフィールド調査の結果がなかなか得られないのです。

仮説はこうです。

「ビジネスの世界では、大きな壁を乗り越えて成功を掴んだ者が幸福感を得る。
そして、壁が高ければ高いほど、成功したときの幸福感は大きい」

ところが、実際にいくらヒアリングを重ねてもそういう結果が得られないのです。
出てくる答えは、
「もともと自分が幸福だと感じている人は成功確率が高い。だから成功してより幸せになる」
というものばかりでした。

その後この、いつでもポジティブな考え方を持つオプティミストに関する研究は大きな潮流となり、
『ポジティブ心理学』という分野として結実します。

2005年には、ソーニャ・リュボミルスキーらの驚くべき報告が発表されました。

そもそも自分が幸福であると感じている従業員は、そうでない人に比べて生産性が31%も高く、
営業などの売り上げでは37%も高い。
そして創造性に関してはなんと3倍も高いというのです。

考えてみると、思い当たる節があります。

もともと自分を不幸だと感じている人は、ちょっと壁にぶち当たっただけですぐに諦めます。

でも、自分を幸福だと感じている人は、一生懸命打開策を模索します。

だから成功する確率が高くなり、生産性や売り上げが上がるのです。

ところで、この幸福感というのはどこからくるのでしょう。

ポジティブ心理学派のクリストファー・ピーターソンの著書に、興味深い表が掲載されています。

「幸福感」や「人生の満足度」と相関関係のある属性や傾向についてです。

それは実に意外なものです。
相関性が全く認められないか、あるいは認められても非常に低い項目は、
「年齢、性別、収入、地位」でした。

年齢や性別に関しては理解できますが、収入や地位はちょっと意外な感じがしますよね。

人より出世しても、人より給料が多くても、大した幸福感には繋がらないというのは非常に示唆的な話です。

でも、収入がゼロではダメなのです。

というのは、相関性の高い項目の中に「雇用の有無」があるのです。
やはり、失業してしまっては幸福感は得られないのです。

では、高い相関性が認められた他の項目を見てみましょう。

「楽観性、自尊感情、感謝」などです。

楽観性はそのまんまですよね。

自尊感情というのは、『セルフ・エスティーム』と言って自分自身を価値ある人間だと感じることだそうです。
これは『自己肯定感』とも訳され、要するに自分が好きで自分を大切にしようとする気持ちのことを言います。

ところが最近の若い人たちは、なぜかこの自尊感情が乏しいように感じます。

そのため上司から厳しい叱責を受けたりすると、すぐに自信を喪失してメンタル不全に陥ったりするのです。

私が、特に声を大にして言いたい項目は「感謝」です。

問題が発生すると、必ず誰か他人のせいにしてその人を恨んだりする人がいますが、
そういう人は自分を幸福だと感じることは少ないということです。

問題発生は、学びのチャンスかもしれません。

成長のチャンスかも知れません。

ですので極端な言い方をすると、「問題を与えてくれたことに感謝する」くらいの気持ちを持ちたいものです。

そういう姿勢こそが、結果的に問題解決に繋がっていくように思います。
確かにオプティミストほど、他者への感謝を口にしますよね。

とは言うものの、
「あなたの人生は幸せですか?」
「あなたは人生に満足していますか?」
といきなり問われて、即答するのは難しいかも知れません。

でも私は、「幸せ」と即答できます。

実は一昨年、妻が非常に難易度の高い心臓の手術を受けました。
大変心配しましたが、熟練した外科医のおかげで無事成功しました。

退院した翌日、一緒に朝ご飯を食べていたときのことです。

突然私は、かつて経験したことのないほどの、とてつもなく大きな幸福感に包まれたのです。
初めての経験でした。

ごくありふれた普通の日常を、ごく普通に迎えられることがこんなにも幸せなことだったとは!

幸福とは宝くじが当たることではなく、「ごく普通に暮らすこと」だったのです。

1964年の東京オリンピックの年に、坂本九が歌って大ヒットした『幸せなら手をたたこう』。
もともとはスペイン民謡ですが、早稲田大学名誉教授の木村利人が学生の頃、
ボランティアで訪れていたフィリピンでこの歌を耳にして日本語訳をつけたそうです。

ところがこの歌、英語の詞では
“if you’re happy and you know it clap your hands”
となっています。

直訳すると
「あなたが幸せで、それをあなたが知っているなら、手をたたこう」
なのです。

もしかしたらこの歌は、幸せになることよりも、
今が幸せであることに気づくことのほうが難しいということを、私たちに教えてくれているのかも知れません。

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