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5☆s 講師ブログ

人の不幸は蜜の味

同期入社のA君があなたより先に課長に昇進しました。

A君が実力、人望ともに課長に昇格するに足る人物ならば納得もいきますが、
明らかにそうでない場合はあなたの心中は穏やかではありません。
「なんであいつが?」という妬みの感情が沸き起こります。
でも、「他の同期もまだ昇進していないから」と考え直し、なんとか仕事への意欲を奮い立たせます。

この妬みという感情を持つのは、人間だけではないそうです。

ネズミを狭い檻に閉じ込めて、ストレスホルモンの値を計測します。
自由を奪われているので結構高い数値が出ますが、これを基準値としていろいろ環境を変えてみます。

まず、その檻の前に自由に動き回れるネズミを放ち、檻の中のネズミのストレスホルモン値を図ります。

すると、基準値より高い値が出ます。
自由なネズミに対する妬みから、ストレスを感じているのでしょう。

次に同じ境遇、すなわち同じく檻に入れられたネズミを置きます。

なんと今度は、基準値より低くなったではありませんか。
同じ境遇のネズミがいることで気が楽になったと考えられます。

妬みという感情は、人間以外の動物にも存在していたのです。
どうやらこの感情は、刺激を与えて発奮を促したりする役目を担っているのかもしれません。

と同時に、同じ境遇の仲間がいると不安が和らぐというのも、
生存ということにとってきっと意味のあることなのでしょう。

ところで、ラッキーな昇進をしたA君が、その後不祥事に関与したという事実が発覚して失脚したとしたらどうでしょう。

「人の不幸は蜜の味」ではありませんが、あなたは少し溜飲を下げることになりますよね。

神経科学者の高橋英彦は、この「妬み」と「他人の不幸を喜ぶ」ということに関する脳の動きを解明しようとしました。

まず、最初の実験はこうです。

就活中の大学生に、次の「シナリオ1」を読んでもらいます。

そして、主人公になったつもりで、登場するライバル3人のうちどの人物に妬みを感じたかを判定してもらいます。

ちなみに主人公は同じく就活中の理系の4年生で、外資系の大企業に就職して都会生活を送りたいと考えています。

しかし、成績は中くらいでクラブ活動の野球部でも補欠とあまりパッとしません。
オンボロの学生寮に住んでいて彼女もいません。
そんな主人公の前に、同学年でこれまた就活中の学生が3人現れます。

①一郎・・・主人公と同じ理系。
就職希望先や価値観は主人公とよく似ていますが、成績は優秀で野球部ではエース。
お金持ちのお坊ちゃんでモテモテ男です。

②花子・・・文系。地方の企業に就職して田舎暮らしをしたいと思っています。
成績優秀かつソフトボール部ではエースです。
彼女も経済的に豊かで、男子からかなりモテます。

③並子・・・文系。成績は中くらいでソフトボール部でも補欠。
経済的にあまり余裕はなく、男子からの人気もイマイチ。

結果は、妬ましい順番のトップが一郎、そして二位が花子でした。

境遇は同じように段違いに恵まれていますが、
花子の場合は価値観が主人公と大きく違っていたことが二位になった理由のようです。

なお、並子にはほとんど妬みの感情が沸かない、いわゆる「無関心」となりました。

この結果は、まぁ予想通りと言えば予想通り。

高橋はこの時、fMRIで脳の中のどこの部位が活性化しているかを観察しました。

すると、一郎と花子のときは「前部帯状回」の上側の部分が活性化していたのです。

この「前部帯状回」の上部というのは、面白いことに体の痛みの処理にも関係しているところです。

ということは、妬みは心の痛みでもあったのです。

さてこの実験には、「シナリオ1」に続く第二段階として「シナリオ2」が用意されています。

今度は花子は登場せず、一郎と並子だけです。
この二人に不幸が降りかかります。

一郎に関して、追加で与えられた不幸情報は以下の通りです。

高級外車を所有しているが故障ばかりしている。
昨夜、高級フレンチレストランで食事したが、食中毒になってしまった。

一方、並子の不幸情報は、所有している中古の軽自動車は故障ばかりしている。

昨夜カップラーメンで夕食を済ませたがお腹をこわした、というものです。

すると被験者は、口を揃えてこう言いました。

「一郎の不幸には中程度の喜びを感じたが、並子には何も感じなかった」
これも予想通りですよね。

では、脳の中を見てみましょう。

一郎の不幸話の際、「線条体」という部位が活性化していました。
ここは、お金や食べ物などの「報酬」を得たときに活性化するところです。
つまり、人の不幸は脳にとっては「報酬」なのです。

と同時に、痛みを感じる部位である「前部帯状回」の上部の活動が低下しました。

痛みが和らいだと言うことです。
「人の不幸は蜜の味」という諺が、まさに脳科学で証明されたわけです。

「前部帯状回」も「線条体」も、ともに感情をつかさどる部位で脳の深い部分にあります。

深い部分というのは、人間として進化する前の、動物のときから機能していた部位ということです。

では、人間の脳が動物の脳と決定的に違うところはどこかというと、
脳の表面に近い大脳皮質が発達していることです。
ここは、様々な知識が保存されたり、理性的に物事を考える部位でもあります。

ですので、一郎の不幸話を聞いたとき心の中では『ざまあ見ろ!』と叫んでいても、

あからさまにガッツポーズをとったりしないのは、大脳皮質が働いて理性が感情を抑制しているからです。

なぜこのような能力が備わったのでしょうか。

私たち人間は、集団を形成することで生まれた複雑な人間関係の中で、
他者と共存しながら生きていかなければならないという宿命を負っています。

そのため、他者の存在を全く意識することなしに、

自分の感情を素直に表出できる場面というのは、それほど多くはないのです。
現代は、敗者に対する配慮がどんどん薄れていく傾向にありますが、
だからといって敗者の妬みという感情が
大手を振って堂々と表通りを歩くようになってほしくはありません。

ちなみにドイツでは、他人の不幸や失敗を嬉しく思うことは、「シャーデンフロイデ」と表現するそうです。
意味は、「恥知らずの喜び」。

「妬み」を感じるのは人間だけではありませんが、
生物学の研究によれば、「羞恥心」をもっている動物は人間だけだそうです。

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