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5☆s 講師ブログ

昆虫ビジネス社会

ビジネスでは、「虫の目」と「鳥の目」の両方を持つことが大切だとよく言われます。

「虫の目」とは、直面する問題について、細部を観察し分析した上で解決策を探るという取組姿勢です。
一方、「鳥の目」は、目の前の問題だけを見るのでなく、全体像を俯瞰して眺めることで、
総合的な対策を考えることを言います。
「虫の目」をミクロとするなら、「鳥の目」はマクロと言えるでしょう。

最近では、さらに「魚の目」を加える人もいます。
魚は目に見えない水の流れを体で感じているそうで、
要するにトレンドを読む力を養いなさいということのようです。

果たしてこれを“目”と言ってしまっていいのかよくわかりませんが、
そこまで言うなら、視界不良な暗闇でも危険を察知する「コウモリの目」とか、
相手の熱意(温度)を感じ取る「ヘビの目」だってありそうなものです。
なんだか収拾がつかなくなりそうなので、言葉の遊びはこの辺にしましょう。

ただ、現代ビジネスにおいては、分業化と専門化が進められ、
各担当者が目の前の問題に専念する体制が整備されています。

その結果、多くの人は自分の担当という、視野の狭い「虫の目」しか持たなくても
結構仕事は回るようになってしまいました。
中には、さらにその上を行く「虫メガネ」の視野しか持たない人もいます。
ですので、実務担当者の「鳥の目」の方はほとんど退化してしまっています。

さらに最近は、四半期毎の実績を厳しく追及されるため、
事業部長クラスでさえ目の前の目標をクリアーする事に汲々としていて、
「鳥の目」を持つことが絶対条件となっているのは、もはや経営者くらいしかいないのが実情です。

人間というのは不思議なもので、「虫の目」の視点だけで仕事をしていると、
その立ち居振る舞いも次第に昆虫っぽくなるものです。
実は昆虫には、極めて興味深いある特徴があります。

さて、その特徴に関するクイズです。
今、空腹のスズメバチが無心でエサを食べています。
この時、何かの事情で自分の下腹部が邪魔になったら、一体どうするでしょう?

答えはなんと、「その下腹部を切り落としてしまう」でした。
ハチは、それがあとで困った事になるなどとは考えないのです。
なぜそんなことができるかというと、高度な脳を持っていないこともありますが、
そもそも昆虫は痛みを感じないからです。

驚くべきことに、痛みを感じるのは哺乳動物くらいなのだそうです。
哺乳動物の場合、神経細胞の約半分は痛覚と関係しています。

しかし、昆虫の場合は体が小さいため、より重要な光や音、温度などの感覚神経を優先させたら、
痛覚神経まで手が回らなくなってしまったのです。

ドイツの生物学者ビクター・マイヤーロホによれば、イヌは優れた嗅覚を、
コウモリやフクロウは優れた聴覚を、ヘビは優れた温度感覚を持っています。

そして、人間は間違いなく“痛覚”のチャンピオンなのだそうです。
痛みを感じることができるのは哺乳動物だけで、しかも痛みにもっとも敏感なのは人間なのです。

でも、「虫の目」しか持たない“昆虫のような”ビジネスパーソンは、痛みを感じない?
いやいや、そんなことはありません。
自分の痛みはちゃんと感じます。

でも、他人の痛みはどうでしょう?
目の前の目標を達成することに集中するあまり、あなたが何気なく口にした不用意な一言が、
知らず知らずのうちに周囲の人の心を傷つけてはいませんか。

いや、それだけではありません。
現代ビジネスはますます熾烈化し、勝ち組か負け組かを決める“白黒決着ゲーム”の様相を呈してきました。
多くの勝者は、戦いに勝利することしか頭になく、敗者の痛みに思いを馳せることなどできません。

私たちは、一体何のために戦っているのでしょう?
勝利するため?
では、その勝利で得られるものとは、一体何でしょう?

ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツは、
『スティグリッツ教授の経済教室』の中でこう述べています。

「経済理論が示唆しているのは、グローバリゼーションによって皆が勝者になるということではなく、
経済全体としては利得はプラスになり、したがって勝者は敗者の損失を補填してもなお
余りある利益を手にすることができるということだ」

残念ながら、人としての痛みを忘れた“昆虫ビジネス社会”の経済原則は“winner takes all ”。
そこには、勝者が敗者の損失を補填するなどという発想は皆無です。

もしも、他人の痛みに思いを馳せて、勝者が敗者に手をさしのべるような社会が実現できれば、
GDPの成長率が少しくらい低くたって、もっと幸福感に溢れた世の中になるのではないかと私は思うのです。

今わたしたちが持つべきものは、
他人の痛みを感じることができる「人の目」ではないでしょうか。

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