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5☆s 講師ブログ

金融工学バブル

前回、アメリカのバブル崩壊は「金融工学バブル」の崩壊だと言いました。

90年代後半からアメリカの経済を引っ張ったのは、金融工学という新しい学問の登場でした。
ブラック=ショールズ式が、世界の金融取引に与えた衝撃はまさに革命的なものでした。

それまで、リターンをもたらす金融取引にはリスクがつきものであり、それは避けられないものとして考えられていました。
そして、そのリスクを引き受けられるのは、一部の資本家や資産家に限られていたのです。

しかし、そのリスクを証券化して細切れに分散することにより、多くの人々がちょっとずつリスクを分担するという仕組みが編み出されました。
ブラック=ショールズ式がもてはやされたのは、証券化する際の価格付けを、実に簡単に導き出せる数式だったからです。

この「リスクを証券化して分散する」という考え方は『デリバティブ』という名前で世界中に広がり、マイロン・ショールズらはノーベル賞まで授与されました。

今回のアメリカの住宅ローン問題についても、銀行はローンの支払いが滞るリスクを考えて証券化したものです。
リスクは細切れに分散化されて、証券の購入者がみんなで負担することになりました。
一方で、ローンの返済額は証券の利息として購入者の手元に渡ります。

素晴らしいしくみではありませんか。
もしローンの支払いが滞ったとしても、購入者はあらかじめそのリスクも含みで証券を購入したのですから文句は言えません。

では何が問題だったのでしょう。
それは、証券を作る側、販売する側のモラルが問題だったのです。

一般に投資銀行と呼ばれる外資系金融機関は、このような金融商品を数多く作り出し、世界中に販売することにより莫大な利益を上げていました。
このとき、販売する金融機関側は、金融商品の中身が相手にわからないようにとにかく複雑に作ったのです。

よって、証券化されたサブプライムローンもそれ単体で販売されたわけではなく、様々な金融商品にそっと忍び込ませて販売されたのです。

ですから、この問題が起こったとき、金融商品を購入した誰もが疑心暗鬼になりました。
自分が購入した証券に、サブプライムという”毒”が仕込まれていたのではないかと。

世界的なパニックはこのようにして引き起こされたのです。
住宅ローンの不良債権はGDPの1%だったとしても、金融商品を購入した人々の心の中では、その何倍、何十倍にもなって大きな不安を引き起こしたのでした。

日本でバブルが発生した原因について、吉冨勝氏は「銀行のビヘイビァである」と断じました。
アメリカの金融機関の販売姿勢がいかに不誠実だったかは、かつてのフランク・パートノイの「大破局」や、ピーター・トゥルーブらの「投資銀行残酷日記」に詳しく記されています。

今回のアメリカのバブル崩壊も、金融工学自体が問題なのではなく、それを扱う金融機関のビヘイビァが問題なのです。

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