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5☆s 講師ブログ

ビリー・ホリディ

映画のストーリーは、事実ではありませんでした。

高校生の頃に観た、ダイアナ・ロス主演の『ビリー・ホリデー物語』では、
彼女は南部への演奏ツアーの途中、バスから降りた林の中で
“それ”を目撃したことになっています。

でも本当は、ある若い高校教師の綴った一編の詩によって、
“それ”の存在を知ったのでした。

日本では、女性ジャズシンガーという職業は、そこそこ美人で、
英語のカラオケが多少上手に歌えるならば誰でもなれます。
しかし、アメリカではそうはいきません。

ビリー・ホリデーは、エラ・フィッツジェラルドやサラ・ボーンと並び称されるシンガーではありますが、
彼女たちのように圧倒的な歌唱力や声量の持ち主ではありません。
美声と言うにはほど遠く、ファンには申し訳ありませんが、
どちらかというとむしろダミ声に近いように私には聞こえます。

しかし、一度でも、その“魂の”としか形容しようがない歌声を聴いた者は、
不思議な魔力に憑りつかれ、うなされ、そして最後には耳の奥底で鳴り響き続けるという重い病に罹るのです。

44年の短くも凄惨な生涯は、貧困と麻薬とアルコール、そして耐え難い人種差別に彩られています。
そんな彼女の代表作と言えば、『ストレンジ・フルーツ(奇妙な果実)』に尽きます。
「南部の木には奇妙な果実がなる」で始まるその歌詞は、人種差別の悲惨さを象徴するものでした。

当時の白人たちは、法に拠ることなく、自分たちで自由気ままに黒人を裁くのが常でした。
時には法を犯していなくとも、虫の居所が悪いという、ただそれだけの理由で。
私刑(リンチ)によって殺された黒人は、首をロープで縛られ、見せしめとして木に高く吊るされました。

そうです。
『 ストレンジ・フルーツ』とは、木に吊るされた黒人の死体のことなのです。

この話は、決して過去の話ではありません。
2013年にも、この果実のことがニュースで報じられています。

しかし、これをもって、アメリカの人種差別がなくなっていない、
などと論じるのは大きな誤りです。

なぜなら、この出来事がニュースになること自体が
ビリー・ホリデーの時代には考えられなかったことだからです。

アメリカでは、警官による黒人の射殺や暴行事案が起こる度に世間が騒がしくなりますが、
このような歴史的背景に関する認識というわずかな知性さえ持ち合わせていれば、
いくら無責任なTVのコメンテーターだって、あれほどお気楽な論評はできないはずです。

虐げられた彼らにとって、夢のような出来事だったはずの黒人大統領の誕生。
しかし、6年間で変わったものは何一つなく、相変わらず失業と貧困が彼らを支配し続けただけでした。

たった一発の銃声により、一瞬で沸騰する怨念の記憶。
改めて、人種差別問題の根深さを思い知らされた気がします。

しかし、希望はあるはずです。
この『ストレンジ・フルーツ』の詩を書いた高校教師は、なんと黒人ではなく白人でした。
そう言えばニューヨークの抗議デモにも、多くの白人が参加していました。

良心というものは、肌の色に関係なく、誰の心にも存在するはずです。
それが小さな湧き水となって溢れ出し、やがて幾筋もの小川となって渦を巻き、
ついにはすべてが合流して大河の濁流となった時、
奇妙な果実だけでなく、その種までもがすっかり洗い流される日が来るのです。

そして、その時に私たちは、やっとあのダミ声の呪縛から解放されるような気がします。

一年間、このような駄文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

今年初めにテーマを一新するにあたり、心に決めたことがひとつだけあります。
それは、”毒”のあるブログにしようと言うことです。

少なくとも、安全圏の向こうから、「いいね!」などという寝ぼけた声がかかるような、

幼稚でヤワなブログには絶対にしないと決意しました。

来年はいい意味でも、もちろん悪い意味でも、より一層ピリッとした毒を含ませようと思います。

油断して漫然と読んでいると、いつの間にか足許を掬われてしまったり、
あるいは深く考えさせられて、ふさぎ込んでしまったり・・・
本人も気づかぬうちに、心の底にオリが溜まっていくような
そんな存在感を醸し出すブログを目指します。

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